をとなの映画桟敷席         ~ほぼ毎日が映画館

映画取材から編集裏話まで、るかのここだけの話を忘れた頃にアップします

神田松鯉師匠の講談に名人芸を知る

2022年11月04日 | 落語・講談・演芸
某寄席(演芸)

いろいろ寄席の形はあれど、定席以外にも、地域や企業、個人が主催して行われるものがある。
毎年恒例の●●●●寄席もその一つ。
落語、講談、漫才、漫談、マジック、音曲など、通常の寄席をコンパクトに楽しませてくれる。
これが年に一度の楽しみの一つ、といえるのも、おおっという演者の本物の芸が身近に聞ける見られるからだ。
ここのところはコロナ禍で、少人数、人数制限アリで、当時トリを取った小游三師匠に「私だったら来ませんねえ」と言われる状況でした。
でも、今回は少し改善して100名までとなったようです。

さて、今年のトリは講談の神田松鯉師匠。最近では伯山の師匠として知られるが、傘寿を迎え、その記念で9月には歌舞伎座で伯山と講談を披露するなど、まだまだ現役。
この寄席もトリが落語ではなく講談というのも、やはり講談ブームなんでしょうかね。

トリの話をする前に、まずは最初から。
前座は神田鯉花さん。最近は他の寄席でも前座が女性落語家というのが珍しくなくなりましたね。
この方は、講談師。演目は「狼退治」で、犬の鳴き声と狼の鳴き声を使い分けて拍手をもらっていました。
女性講談師にしても落語家にしても、たまーにキンキン声の人がいて聞きづらい。自分が発している声と聴かれている声にギャップがあることもあるので、録音してみるといいですな。

お次は、二つ目の春風亭かけ橋さん。
コロナ禍真っ盛りでガラガラだった2年前もこの高座に上がったそうですが、ちょっと演目を覚えていません。
まずは枕が出身地の横浜ネタで、かけ橋の名前の由来を説明。
続けて横浜国立大学出身…ではないんですと笑いを取りに。「ほお、さい(せい)ですか」、と答えたいところ。
そして演目「黄金の大黒」へ。
まだ、ストーリーを語っているという感じでした。

そして仲入り前は落語の大御所・三笑亭夢太郎師匠。
まず、枕で三遊亭圓楽(楽太郎)師匠との思い出を、艶笑騒動をネタにおもしろおかしく話してくれました。
当方も昨年、圓楽(楽太郎)師匠が最初の闘病復帰直後、職場のイベントで講演されるのを聞きましたが、ずっと立って動きながら講演されたので、復活されるとばかり思っていました。それが、再度倒れられて車いすに座られて。でも国立演芸場で話されたので、まさかすぐお亡くなりになるとはと衝撃を受けたことが思い出されました。

本編は「死神」。落語としてだけでなく、よくショートショート的な小説のオチでもよく聞いたようなことがある話ですが、話し方がやはり違うのですね。声色や呼吸というか。一人で話すのですが、対話や複数人での会話しているのが違和感なく聞こえてきて、強弱や声色で、その人物や異形のものがリアルに頭に浮かんでくるというか。
布団の四隅を持って180度方向を変えるなんていう情景を、下手な人だと単なる解説・説明になってしまいます。
やっぱり聞き手の頭に情景が素直に浮かぶというのが、また、さらに笑わせるというのが、名人ならではと思います。

大爆笑の後、少々ここで休み時間。
ちなみに、お囃子も生演奏で、森本規子社中が奏でます。

中入り後は漫才。この枠が毎年、ふり幅がある。例えば、ねずっちの年は熱演で大爆笑、ザ・ニュースペーパーのうち2人が出た年は、時事ネタ以外の体を使った芸が意外なことに面白く、大爆笑で涙が出るほどだった。半面、ナイツは前半ファミリー向きでないネタで、後半に野球ネタになってホッとしたという記憶がある。
知名度があっても、場にそぐわないとなかなか厳しいのである。
今回は宮田陽・昇が登場。
陽が金髪で赤と青の縞柄の派手ないでたちで奇抜なことを言い、昇が受けるという形。
でも、陽さんはプロフィールを見ると結構年配と分かり、苦節ウン年、受賞歴も並び、花開いたというところか。
内容は、地名ネタや出身地ネタでボケて笑わせる。大汗をかいての熱演。

さて、最後のトリはいよいよ神田松鯉師匠だ。
枕で述べたが、80を越えというからすごい。その中で、役者などいろいろな仕事を経て、講談師になられたそう。でも天職ですね。
さて、歌舞伎がお好きということで、歌舞伎にちなんだお話をと始まった。
やっぱり声の張り、深さが違う。
おまけに、中村歌右衛門、中村勘三郎など、もちろん今の時代ではないけれどお馴染みの役者の名が出てきて、こちらも歌舞伎好きなので大変楽しめた。江戸っ子ならではの、義理人情の話で、歌舞伎見物の江戸っ子たちも巻き込んで、為政者の横暴に対しギャフンと言わせる話のつくりも粋で聞き入ってしまった。
最後に師匠が「男の花道」と、きちんと題を言ってくれたので忘れることはないでしょう。
ホント、どんないい人が出ていても、なかなかこのレベルの話芸は聞くことができません。至高の芸だったと思います。
帰り道中、感動に包まれて帰りました。
ありがとう!





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講談まつりに行ってきた

2022年08月08日 | 落語・講談・演芸
講談まつり
(国立演芸場、8月8日18時開演)

本日は「講談まつり」を見に行ってきました。
寄席の中で講談を聞くことはあっても、全編講談づくしは初めて。
しかもお盆ちかいからか、すべて怪談とのこと。こわごわ行ってきました。

席はほぼ満席。コロナ禍でこれもまた怖いが、皆マナーを守っているからと思いつつ開演を待つ。
若手から中堅、そして大御所へという順番。

まず前座の一龍齋貞奈が「化け猫騒動」で明るく語るが、大事な山場でトチッてしまい残念。
次は、神田山緑が「耳なし芳一」。有名な話だし、声量もあり分かりやすかった。
そして、田辺銀冶が「牡丹灯籠」。ちょうどNHKのTVで「にっぽんの芸能」で歌舞伎や杉村春子が演じたのなどをやっていたが、幽霊は低い声の方が怖いんだな~と思ったのだが。

御休み時間も挟み、あとは大御所2名。
狭いロビーには、演芸関係の展示のほか、きちんとお祓いのお札が祀られていました。

御一人目は宝井琴星師匠の「間違えらえた魂」、怖いというよりちょっとおかしみを醸し出す話方で、やはりこれまでの若手・中堅の方の、はっきり聞きやすいが味がほしいというそれとは一線を画す語り口でした。

お二人目はトリの一龍齋貞花師匠の出番。
照明・演出ありで、語り口も期待していたものでした。三味線を教える女師匠と若い愛人との愛憎譚で、これも「にっぽんの芸能」でちょうど観たばかりだったので、予習済み。TVは歌舞伎の舞台で先代の芝翫が主人公。とても怖い話でした。
講談もとても怖く、トリにふさわしいのですが、怖いシーンで幽霊をお弟子の女性が演じてしまい、変にはっきりした高い声でそぐわないのが残念でした。むしろ大御所本人がそのまま演じてしまうほうがよかったかも。
お弟子の女性は、2回程度の出番とはいえ、歌舞伎などの他の伝統芸能ではどう演じられているか、研究した方がよかったように思います。

全体的には、上手な人の講談は頭にスッと入ってきて、迫力があるな、機会があればまた聞いてみたいと思いました。
怪談については、怖い作品をこれでもかと聞かせるのではなく、ほどほどにという感じでした。
手拭いを投げたりというのがなく、残念でした。

そういえば昔ですが、落語家の桂歌丸師匠の語り口が静かだけど怖かった思い出があります。やはりこの演芸場でしたね。
五街道さんのも聞いたことがありますが、これは凄みがありました。
歌舞伎では、当時の勘九郎(のちの勘三郎)さんがすごかったし怖かったですね。歌舞伎座の電気が途中2回消えて、客席がキャーッとなるのですが、その日は3回目があって、あとで通の人がその演出はあり得ないと…。キャーッとなりました。
講談といえば一龍齋さんが有名でしたが、生で見たことはなかったかも。

なかなか講談良かったです。
今度は勇ましいものでも講談を聞いてみたいなと思った帰り道でした。



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