をとなの映画桟敷席         ~ほぼ毎日が映画館

映画取材から編集裏話まで、るかのここだけの話を忘れた頃にアップします

ボーは恐れている

2024年02月23日 | 映画
映画「ボーは恐れている」

ホアキン・フェニックス主演のこの作品。
他には真似できない、オリジナリティーのある作品だった。

冒頭は、ボーという冴えない中年男性の目から見た、部屋の外の怖い状況や群衆を映し出す。これは本当か、彼の頭の中だけの想像か。
そんな中、母親の誕生日祝いに出かけなくてはならないのに、出かけるときにアクシデントがあり、パニックとなってしまう。
危ない人々が部屋になだれ込みめちゃくちゃに。逃げ出して飛び出し、車に衝突してしまい…。
主人公は、情緒不安で薬を飲んでいるが、いつもと違う薬を処方されている。
水とともに飲むこととあるのに水が出ないという状況からパニックを起こし、大きな状況になっていく。

目覚めると、親切な家族の家。ここに戦争でPTSDを負った元兵士が間借りしていることから、また大騒動に。

ここを出て、主人公は森へ逃れる。そこには芝居小屋と野外演劇を見に来た観客たちが集っていておだやかな雰囲気。
主人公はまたここで妄想する。
このシーンが、急にアニメになって、これが素晴らしい。絵本で「木を植える人」があるが、そのアニメーションを観たことがあり、それに似た画法でつづられていく。ここだけでも見る価値あり。

また騒動が起きて、ラストへ。
とってもきれいな絵本のような夜空だなと思って見ていると…。

最後のシーン、無人飛行機が裏返っているように見えた。
そして、昔の映画で「ポゼッション」という映画を思い出した。イザベル・アジャーニとサム・ニールの夫婦が異星人の出現で壊れていく話で、蛸のような異星人とのラブシーンや、サム・ニールの一人2役、ラストの子供が空の風呂の中で「怖いよ怖いよ」と言って足をバタつかせているなど、初めて観たときは何じゃこりゃと思ったのだが、ずいぶん経ってから、戦争の脅威を描いていると知って、なるほどと思った次第だ。
なんだか、「ポゼッション」の子供と主人公のボーが重なって見えた。
エンドロールがそのシーンのまま流れるので、とても余韻があり、立ち上がって帰る人があまりいなかったのも印象的だ。



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光る君へ(ドラマ)

2024年02月12日 | ドラマ
ドラマ「光る君へ

2024年の大河ドラマは紫式部が主人公の「光る君へ」。
これがすこぶる面白い。

子供のころからの主人公と、のちの権力者・道長の出会いから描く筋が一本あって、当時の官職や政治状況、政略結婚や宮中の権謀術策、貧乏貴族や庶民の暮らしが描かれていて、なんだか平安時代、穏やかじゃないぞという感じ。

それから先週は「蜻蛉日記」の道綱の母が出てきたり、今週は「枕草子」の清少納言が出てきたぞ。
また、盗賊(多分、袴垂;はかまだれ)かと思われる男なども出てきて、「今昔物語集」や「宇治拾遺物語」の世界に広がってきて、あら懐かしや。
特に今週は、漢詩の会のシーンがあって、各人が作った漢詩の文字が画面に出たり(あそこでレ点だからこう読むとか)、訳が語られるのでとても面白かった。
恋する人に贈る和歌のシーンも、草書がさらさらと画面に出るので、あー練習帳にさんざん書いたな、とか、あれはあの字だよなとか思いながら見ていた。

衣装も美しい。五節の舞のシーン、真上から撮影したシーンがとくに美しかった。

役者については、女性陣も良いが、ことに男性陣が良いように思う。
父兼家役の段田氏のしらっとした策士ぶりしかり、長兄の新も大きく構えた感じの人物が出ているし、次兄役の玉置玲央は十八番の屈折した役柄を存分に発揮している(同局では「引きこもり先生」で屈折した若者役を印象的に演じたが、最近の「大奥」では一心に感染症に取り組む医学者の役を演じ、内野聖陽的な演技巧者になるのではと思わせてくれた)。芸人、実は盗賊の毎熊も、ぶっきらぼうさが「まんぷく」時代と変わらず、適役。関白(当時左大臣)の小さな声でしゃべる演技もなかなか。
そして、今週の漢詩の会から去る際の、道長=柄本兄の好きな人の前でする顔、リアルすぎだ。

などと思いつつ、楽しんでいる国文女子も多いのではないでしょうか?!







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