をとなの映画桟敷席         ~ほぼ毎日が映画館

映画取材から編集裏話まで、るかのここだけの話を忘れた頃にアップします

映画「ヒューマン・ネイチャー」

2006年02月28日 | 映画
毛深い女と密林の中でサルとして育てられた男、そして学者が織り成す三角関係のへんてこりんな物語。
毛深い女は発情期に耐え切れず(すでに野性っぽい)、全身脱毛を施し、堅物の生物学者を紹介してもらい結婚。その学者が森で見つけたサル少年を人間化し、天才に仕上げるのですが、生物学者が浮気をしたことから、野性に目覚めた妻と元野生児は密林へ駆け落ち。「おほおほ」サル語を話し、毛むくじゃらの2人を追って生物学者が森へ来るが、もみ合いの末、拳銃で撃たれ即死。2人は人間界に引き戻され、裁判を受けるシーンから映画は始まる。
ラストは野生児が自然を礼賛して、裁判所から森までの道のりを洋服を脱ぎながら闊歩するという驚き&ちょっと爽快なシーン。
しかし、ホントのラストは…。あーあ、そうか。
まあなんてったって、「マルコヴィッチの穴」のチャーリー・カウフマン脚本ですからして。

しかし、社会派が目立つティム・ロビンスはこーいう映画にも出るんですなー。

ヒューマン・ネイチャー
パトリシア・アークエット、ティム・ロビンス

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映画「存在の耐えられない軽さ」

2006年02月26日 | 映画
リアルタイムに生きてた方は、新聞の夕刊テレビ欄下の大きな映画広告で、鏡の上をまたぐ黒の下着姿のレナ・オリンとそれを見つめるダニエル・デイ・ルイスの姿に、「うわっ」と思った方も多いのではと思います。

観始めると案の定、奔放な女流芸術家とウブでダサ目の妻の間で揺れ動く浮気男の話で、ナンだかセックスシーンのある「おはん」(宇野千代の小説)みたいだなー、ダルイ。と、思いつつ観ておりました。
奔放がオリンで、ダサ妻テレーザがジュリエット・ビノシュ。ビノシュがこんな子ども子どもしていたとは驚きです。しかもわき毛が生えっぱなし! しかもピンクのブルマーか毛糸みたいなパンツをはいている。うーん。特にうーんなのが、ダニエル演ずる医者トマシュが浮気をしていることを気に病み、女性が全裸に見えてしまうプールのシーン。体操をしているおばちゃんたちが一糸まとわぬ姿で並んで体操してるシーンは、まるで湯治場のよう。

レナ・オリンはカッコイイですよ。いつもミュージカル「キャバレー」でライザ・ミネリがかぶるような黒い帽子をかぶって、ビノシュとお互いにヌードの被写体になるシーンの体の線がキレイ! この後、ゲイリー・オールドマン共演の「蜘蛛女」で女暗殺者を演じたのですねー。そして「ショコラ」でビノシュと再度共演したんだなー。

で、こんなんが3時間続くんじゃツライナーと思った頃、「プラハの春」=ロシアの侵攻のシーンが灰色の画面でこれでもかと入ることで、男の軽薄さじゃなく、命の軽く扱われる様を描いている映画だというところにやっとたどり着きました。
女流画家サビーナはアメリカへ亡命し、テレザとトマシュはスイスへ逃げるのだけど、再度プラハに戻ってきてしまうのです。

で、有能な脳外科医のトマシュは病院に復帰するも、当局から服従の書類を書くように言われ拒否して失職。窓拭きに転職するも浮気が続き、テレーザが当てつけに他の男と寝るというおこちゃま行為に走るのだが、元ウィーン大使から当局の罠だといわれ、「どっかいってしまいたい」とトマシュに言うんだわな。

で、ここからが意外と良かった。田舎へ2人で行き、農作業に明け暮れる生活になり、トマシュも灰汁が抜けたよう。しかし、遠くのレストランに泊まった次の日、トラックで帰る途中、ブレーキが利かず2人は亡くなった…この手紙が、アメリカのサビーナの元に届くのですな。「えぇ、2人は無二の親友でした」というサビーナ。このシーンにたどり着くために今までがあったのか、と思うのです。

はたして事故? それとも事故に見せかけて殺された? 真相はわかりません。
「ソフィーの選択」とオーバーラップなどもして…。
トマシュは性的なつながりで「生」の重さを感じていたんじゃないかなと思います。この映画で言う「軽さ」とは何かを考えた時、この映画の「重さ」がじんわり効いてくるように思いました。

存在の耐えられない軽さ
監督 フィリップ・カウフマン
出演ダニエル・デイ・ルイス、ジュリエット・ビノシュ、レナ・オリン
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映画「ビヨンド・ザ・シー」

2006年02月21日 | 映画
昨年公開時はあまり話題にならなかったが、作品評がヨイので見て観た。
シナトラは知ってるけど、ボビー・ダーリンというエンターテナーは知らなかったなー。けれど、劇中歌の「マック・ザ・ナイフ」や「ビヨンド・ザ・シー」は聴いたことがある有名曲。アメリカでは超有名なのでしょう。

このダーリン役にケヴィン・スペイシー。ほんとにハリウッドのスターがすごいと思えるのは、演技派だけではなく、ダンサーやシンガー並みに踊って歌えるということ。
今回はラストにタキシードに身を包み、ダンサーたちを従えてケヴィン・スペイシーが踊るのが圧巻です。まるでコーラスラインかフォッシーか。
以前、「ディア・ハンター」や「デッド・ゾーン」のクリストファー・ウォーケンがキンキラスパンコールのスーツを着てステッキを持ち、ダンサーズを従えて踊り歌っていたのを見、驚いた!の一言でしたが、らしくない人ほど一流の踊りと歌を身につけてるんだよね。

内容的には、先日観たエルヴィス・プレスリーのドキュメンタリーに共通する部分があって、いつも取り巻き連中が自宅にいるので、2人になれると思って結婚した奥さんと、やがて軋轢が生まれてしまったという点。
そして、何かに救いを求めようとする点。エルヴィスは薬で、ダーリンは政治だった。そして、最後は病気で…。
スターってツライね。
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「ハイ・ライフ」芝居評

2006年02月17日 | 芝居小屋
小雪まじりの中、流山児★事務所の「ハイ・ライフ」を鑑賞。
すでに2年前くらいの再演をスズナリで観た事があるのだが、一部配役が入れ替わっているということで、期待して行った。再演時は雑誌テアトロでベスト1になったり、新聞の演劇欄で好評だったり、実際見た者としても、痛快無比の久々のヒット作!という感じだったのを記憶している。

で、今回は劇小劇場に舞台を移してだったが、この劇場、横長で、前後は空間がないんだよね。だから序章は左右の動きばかりだったし、寝転んで男らが悪巧みを話すシーンは全然見えない! 肝心なとこなのに。物理的にスズナリの方が合ったハコだった。

俳優陣は、単純で無骨なワル、バグに塩野谷正幸。牧場の夢をぶら下げられて悪事に誘われるシーンで、相手に背を向けながらも、表情などが魅せる(しかし、この表情も横長のため、見えた観客は一握りか)。

それから、若杉宏二は前回観た知的障害者ドニーの役から、主犯格ディックの役に。前回はこの役、千葉哲也が演じていて、ちょっと抜け目のない小悪党でイキな感じで演じており、塩野谷とのコンビも剛と柔で良かったのだが(特にラストは2人に乾杯!という感じだった)、今回の若杉は、良くも悪くも真っ当な悪党という感じ。ラスト前、仲間に啖呵をきる凄みはこの人ならではだが、普通のシーンは塩野谷とトーンがかぶる。

3人目、美形の女たらし役の小川輝晃はまさにビリー役にはまった。以前は、単にハンサムガイという演技だったが、今回は、実はゲイでドニーを誘惑するという難しいいシーンで、ベタっとしたいやらしさや、小ずるさが随所に出て成長していた。あとは、銀行のシーンで真面目な青年ぶっても狂気がでてしまうという芝居ができればなお良くなると思う。

ラスト、今回初参加の保村大和がドニー役。この人、演技巧者なのだろうと思うのだが、演出上変わったのか、本人のアイデアなのか知らないが、中盤、全裸のシーンは舞台の流れをぶち切ってしまった。裸は飛び道具だし、折角の男たちのハードボイルド感が出てきたのにオジャンだ。まして風呂に片手でイチモツを隠して入る人間がいるか?リアルさ無くすんだったらはなっからやらないほうがいい。再演ではやっていないのだから。

このあと、塩野谷がドニーの顔をバスタブに沈めたことで、バグの冷酷さが出て、ハードな空気が戻ってきたのが救いだった。これがなければ、芝居は緩みっぱなしになってしまっただろう。

個人的には再演時の若杉のドニーが「ユージュアル・サスペクツ」のケヴィン・スペイシーのようで好きだった。障害があるとはいえ、どこかにキレというか、危うさを秘めていたように思う。

やっぱり芝居はアンサンブルだと感じさせられた。個性とスタンドプレーは別物なのだというのを見せられた一夜だった。

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映画「パパラッチ」

2006年02月10日 | 映画
メル・ギブソンが製作をした映画。
パパラッチに怒り心頭のギブソンがドキュメンタリータッチで告発したシリアス映画かと思いきや、途中からはヒーロー映画さながらのハリウッド映画になり飽きないつくり。

映画開始当初は、スターだけでなく家族を追い回し、わざと挑発をしてスクープを作り上げるいやーな奴らという感じなのだが、しまいにはエスカレートして事故を起こさせ、子どもまでも瀕死なのに写真を撮り続けるシーンがあり、ダイアナさんの事故を彷彿とさせる場面が。しかも一般人まで巻き込んで死亡させ、自分たちは逃げてしまう。これはヒドイ!殺人事件じゃん!たぶんこのシーンで、無名の一般人は怒り心頭になると思うよ。

スター夫婦の子供が意識不明の重態になったことから、主人公のアクションスターの映画さながらの復讐劇が始まるのだが…スターはいくら憎いパパラッチとはいえ、殺しても罰せられないの? という疑問がラストに湧いてくる。つまり、途中から勧善懲悪ヒーロー的または西部劇的に「オレが掟だ」ということらしい。
それだけギブソンその他のハリウッドスターの怨念がこもった映画ということか。

主人公は精悍な2枚目でこれから伸びそうな役者さんでした。また、刑事役のおじさんが、よく映画のわきで見かける方で、いい味出してましたよ。
4月初旬に公開予定とのこと。
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