をとなの映画桟敷席         ~ほぼ毎日が映画館

映画取材から編集裏話まで、るかのここだけの話を忘れた頃にアップします

映画「Coda コーダ あいのうた」 ~東京国際映画祭今宵の1作

2022年10月28日 | 映画

Coda©2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

Coda コーダ あいのうた(映画)

今日も東京国際映画祭
本日の映画は日比谷ミッドタウンの屋外広場で無料上映された「コーダ」。
青空上映とてもいいですね! 屋外だとコロナ禍も気にしなくていいし、歌や音楽がモチーフの映画は外で聞くとホントいいです。

「Coda コーダ あいのうた」は、ろう者の家族(両親と主人公の兄と主人公)の中、1人だけ音が聴こえるティーンエイジャーの女性ルビー(エミリア・ジョーンズ)が主人公。
2022年のアカデミー賞では、なんと作品賞のほか、お父さん役のトロイ・コッツァーが助演男優賞、脚色賞を受賞しています。

家族と社会とのつながりを、彼女が担っているという設定です。だから彼女がいなくなると大変だ、という設定です。
でも、彼女には歌声という才能があることが分かり、それを見出した少々偏屈な教師の推薦で、名門の音楽大学バークリーを受験したいが、漁師を営む家族との板挟みとなって…、
というストーリー。
ちなみに「コーダ」は「Children of Deaf Adults」の頭文字をとったもの、「聴こえない親のいる、聴こえる子ども」のことをいいます。

劇中には、周りの偏見の目、それを受けている主人公の引け目や同級生からの疎外感や辱めなども描かれています。それだけだと暗い映画になりますが、それを吹き飛ばすような両親たちのバイタリティーや明るさ、そして主人公や級友たちの素晴らしい歌声とシニカルで厳しい先生の教えと級友との淡い恋が、明るく楽しい映画にしています。
ただ、ちょっと両親との会話やシーンでは、日本人には顔が赤らむようなやりとりや場面があるので、思春期の子供と一緒に見てドギマギしたという人もいるでしょう。おおらかというか、あけっぴろげというか…。
そのせいで、主人公が同級生たちにいじめられるシーンがあり、それが彼女を孤立させます。そんなとき、救ってくれたのが音楽。
実際、この俳優さんの歌声は素晴らしいですね。

それを見出す教師の先生も個性的。シニカルで独善的だが、才能を見る目は確かで、なんとか世に出してあげようとする。
そういえば、NHK朝ドラ「ちむどんどん」で、3女の才能を見出した片桐はいりが演じる先生を思い出しました。

音楽への道と家族との間で悩む主人公。漁協を抜けて自分たちの販売組合を作った両親たちには、手話通訳者が必要。
でも、バークリー受験の時は近付いてくる。
そんなとき、検査で両親の船に乗った検査員が、杓子定規に湾岸警備隊を呼んでしまって操業停止になるなどアクシデントが重なったシーンでは、都会人で何にも知らない人がルールだけで紋切型に行って、人が苦しむという例を投影しています。
皆がそれぞれ悩む中で、兄さんが主人公の背中を押したのが大きいなと思います。
家族の犠牲にならずに自分の夢を叶えろ、と。

学校での合唱発表会のシーンもとても良かった。
皆の歌声のラストに、主人公の歌声が会場の皆の心を揺らすシーンです。
一緒に口ずさむ人、リズムを取る人、そして涙を流して感動している人々。
歌や歓声は聞こえないけれど、両親にはそのみんなの感動が伝わることに、感動。
その夜の、主人公と父親との手話会話のシーンにまた感動です。

いろいろなことが起こって、両親や兄も、幸せは何かということを見つめ直します。
実はそういう中で、家族たちも主人公への依存から自立へと変化していることに映画を見ていて気づくでしょう。

ちょっと寒い日でしたが、心は温かく、日比谷を後にした夜でした。

コーダ あいのうた 公式サイト https://gaga.ne.jp/coda/
東京国際映画祭 公式サイト https://2022.tiff-jp.net/ja/
















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映画「1976」~東京国際映画祭今宵の1本

2022年10月27日 | 映画

©1976 cinestraction

1976 (映画)

今日は、独裁政権下だった頃のチリの状況を背景に、一人の女性が体験する緊張と恐怖を描いたストーリー。
主人公は医師の妻で裕福な生活を送る中年の女性。
海辺の別荘を訪れた彼女に、その土地の司祭が一人の青年をかくまってほしいと言われたことから、彼女の人生が緊張に包まれたものとなる。
青年をかくまうがために、主人公が経験する恐怖がひしひしと伝わってくるストーリー展開。

監督はマヌエラ・マルテッリという女性で、時代背景とともにジェンダーと家庭という視点としても捉えて検証していると言っています。
主人公のカルメン役のアリン・クーベンハイムの演技が、観客にも心理的な圧迫感を追体験させます。
(最終日に発表された東京国際映画祭各賞のうち、彼女は主演女優賞に選ばれました。)

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映画「KEIKO~目をすまして」~東京国際映画祭今宵の一作

2022年10月25日 | 映画

©2022 映画「ケイコ 目を澄ませて」製作委員会/COMME DES CINÉMAS

KEIKO~目をすまして(映画)

良い映画でした。
耳に障がいを持つ女性がプロのボクサーとして歩む中で、家族や職場、ボクシングジムなど周囲の人との交流や毎日の暮らしの中で、葛藤や思いが綴られていきます。
ジムの会長が三浦友和。若いころはお芋な感じがしていましたが、年をとってからはいい味の演技者となられましたね。
主人公を温かく静かに見守る、そんな役です。
そんなボクシングジムが経営危機に陥るあたりから、主人公の心が波打ちます。
周囲の気持ちを素直に受け入れない主人公に、観客はイライラさせられるかもしれませんね。
この場面のトレーナーのような気持になるかもしれません。
でも、主人公のこの気持ちも、何か分かるのではないでしょうか。

弟との手話でのやりとりや、ライトの使い方など、ろうや耳に障がいのある人がどのように日常を送っているかもきちんと描かれているのも、見てほしいところです。弟と彼女と主人公とのやり取りなども、少しホッとさせられます。

国際映画祭の一般上映を知人に勧めましたが、もう満席でチケットが取れなかったそうです。

改めて、12月16日からロードショーが始まるとのことです。
試しに見てみてください。
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映画「あちらにいる鬼」~東京国際映画祭今宵の1本

2022年10月25日 | 映画

©2022「あちらにいる鬼」製作委員会

あちらにいる鬼 (映画)

東京国際映画祭が開幕して、最初の1本がこの作品。
「あちらにいる鬼」の主人公は、先ごろ没した瀬戸内寂聴さん。
文壇の先輩、井上光晴との不倫関係にあったころの愛憎、出家に至る過程、井上の死などが描かれる。
でも映画では、井上の奥さんの存在感が大きく感じられ、彼女が主人公とも言えるようだ。
英語の題名は2Womenと知り、納得。
すごく図太い女性だなと思わせる。この娘が原作者だからそういう描写が書けたのか。

配役は、瀬戸内晴美、のちの寂聴(役名は寂光)に寺島しのぶ。
晴美時代の顔の感じが似ているようだ。特に鼻の下から口の盛り上がり方や、歯茎など。

井上に豊川悦司。昔のきれいさが無くなり、ちょっとおっさんの汚れが出るようになって、それはそれで味が出てきていい芝居だなと思う。「半分青い」くらいから、そんな雰囲気が出てきたカンジ。
ま、「愛していると言ってくれ」は別物として大事にしまっておきますが。

井上の奥さんは広末涼子。普通というか、図太いというか。なんか合っていた感じがする。

全体的に欲を言えば、少し文壇のシーンがほしかったな、と思う。
有名だから分かるだろというのはちと乱暴。
そうすると、2人の関係のシーンがまた違ってくると思うのだが。

東京国際映画祭公式ホームページ https://2022.tiff-jp.net/ja/
「あちらにいる鬼」公式ホームページ https://happinet-phantom.com/achira-oni/
2022年11月11日より シネスイッチ銀座などでロードショー

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