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ジェーン・エア(映画)

2012年05月27日 | 映画
映画「ジェーン・エア」

言わずと知れた英国文学を代表する名作のひとつ。原作者シャーロット・ブロンテよりも妹の書いた「嵐が丘」の方がさらに著名だが、共に文学全集に必ず入っている物語だ。
原作をむかーし読んだ時も引き込まれたけど、映像となった本作もイギリスの郊外でのロケーションや当時の服を再現した手作りの衣装など細部に凝ることでリアルさが生まれ、荒涼とした風景の中にイギリスの階級制を背景にした人々の心の中の明暗や苦悩が浮かび上がってくる。

巧いな、と思ったら、監督はキャリー・ジョージ・フクナガ。「闇の列車、光の旅」でサンダンス映画祭を席巻したあの監督なのだ。

俳優陣も充実。主人公に「アリス・イン・ワンダーランド」のミア・ワシコウスカ。芯の強い主人公像が「ピアノ・レッスン」のホリー・ハンターに重なって見えた。前作はキャラの方が強い映画だったが、今後はミア自身が立つ内容の映画で確実な演技を見せてくれる予兆を感じた。

そして、ロチェスター伯爵にマイケル・ファスペンダー。この俳優、イチオシです。「イングロリアス・バスターズ」に続き「X-MEN ファースト・ジェネレーション」のマグニートーの若い頃を演じて渋いぜーと思って注目していました。
もともと「X-MEN」はマーベルのアメコミ原作ながら、当時は知名度はそこそこあるがあと少しという感じだったヒュー・ジャックマンやハル・ベリー、ファムケ・ヤンセン…、といった今はトップクラスとなった俳優陣とブライアン・シンガー監督ががっぷり組んで、単なるドンパチで終わらない映画でみせてくれたから、「ファースト~」も期待して観てアタリでした。

ファスペンダーに話を戻せば、今回の「ジェーン・エア」も、複雑な状況に苦悩する伯爵を渋く演じています。華やかさを持った俳優ではないけれど、ダニエル・デイ・ルイスのようになっていくのではと思っています。

ラストは淡々と撮って終わるのですが、思わずぐっときてしまいました。

余談ですが、普段は会ったこともない遠縁の親戚から莫大な財産が贈与されて一夜にして大金持ちになるという話が英国の小説にはよく出てきます。シャーロック・ホームズやポワロなんかよくトリックで出てきます。実際に英国ではこういうことが多かったのでしょうが、まったく音信不通な親戚からというのは、きちんと家系図なりではっきりしているんでしょうね。逆に肩書きは貴族だけれど火の車で政略結婚…これはどこの国でもあるようです。

ともかく、堅い映画ですが、こういう映画捨てがたいです。
コメント
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