[5月15日10:00.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅西口]
稲生勇太とマリアンナ・ベルフェゴール・スカーレットは大宮駅西口のバス停に向かい、そこに停車しているバスに乗り込んだ。
マリア:「このバス、乗ったことあった?」
稲生:「いえ、マリアさんは無いと思います。今年度から開業したばかりのバス路線なんで」
マリア:「ふーん……」
日野自動車製のポンチョと呼ばれる、コミュニティバスとしては一般的な小型バスである。
富士宮市内のコミュニティバス“宮バス”でも、使用されているものだ。
発車の時間になり、バスのエンジンが掛かる。
運転手:「お待たせしました。時間になりましたので発車します」
外側に開くスライドドアが閉まると、バスはゆっくり走り出した。
乗客は稲生達の他、最前列席に老婆と老人が1人ずつ乗っているだけだ。
前降りタイプのバスだと、どうしても老人などは前方の席に座りたがる。
〔お待たせ致しました。毎度ご乗車ありがとうございます。このバスは与野本町先回り、大宮西口循環線でございます。次はあおぞら保育園、あおぞら保育園でございます〕
与野本町とは言っているが、けして埼京線の与野本町駅に寄るわけではない。
稲生:「…………」
バスは1番後ろの席以外は一人掛け席しかない。
しょうがないので非常口前の席に前後して座っていて、マリアが稲生の前に座っている。
ふと気がつくと、マリアから体臭がするのが分かった。
そういえば徹夜ということは、風呂にも入っていないということだ。
そして元々体臭の強い人種ということもあってか、それで尚更匂うのだろう。
マリアは頭を垂れて眠気と戦っているが、稲生はそのフリをしてマリアの頭などの匂いを……と思ったら!
稲生:「!?」
稲生のスマホにメール着信が入った。
急いでポケットから取り出して確認すると、母親からのメールだった。
何でも威吹から電話があったらしい。
威吹は電話しかできないことは稲生の両親も知っている。
だからなるべく早めに電話してあげてという内容の電話だった。
稲生:(バスの中じゃ電話できないよ、母さん……)
もちろん母親の佳子はそんなこと知らないので、そういうメールを送って来たのだろう。
マリア:「何かあった?」
稲生のメール着信音に気づいたマリアが後ろを振り向いた。
稲生:「ああ、いや……。母さんからのメールです。威吹から家に電話があったらしくて……」
マリア:「イブキから?勇太とのファミリア(使い魔)契約を正式にするという決心が付いたか?」
稲生:「それは本人に聞かないと分かりませんが……」
稲生は取りあえずその件について了解した旨と、今からバスで家に向かっており、マリアも一緒である旨を返信しておいた。
[同日10:10.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 上落合7丁目バス停→稲生家]
最寄りのバス停に着き、バスはそこで降りる。
稲生:「大人2名です」
運転手:「はい、ありがとうございました」
稲生は運賃箱に回数券を2枚入れた。
マリア:「カードは使えないのか?」
右手にSuicaを持ちながら、マリアは稲生の後にバスを降りた。
稲生:「このバス、ICカードは使えないんですよ」
コミュニティバスあるあるであるが、実は“けんちゃんバス”はシステムがそれに近いというだけで、実は自治体絡みのコミュニティバスではない。
さいたま市も大宮区も中央区も、全く絡んでいない。
マリア:「ふーん……」
バスを降りて、あとは徒歩数分で稲生家に辿り着く。
マリア:「勇太。申し訳無いけど、着いたらすぐにシャワーを浴びたい。汗臭いでしょ?」
稲生:「僕にとってはいい匂いです」
マリア:「! わ、私は気になるから、シャワー使いたい」
稲生:「いいですよ。いつもの2階のシャワーですね」
マリア:「うん。勇太はお風呂入らないの?」
稲生:「入りますよ。ていうか、マリアと一緒に入りたい」
マリア:「あ、あの……。今は……その……勇太のママがいるんでしょ?今はダメだよ」
稲生:「まあ、今はそうかもしれないけど……。母さんは別に一日中家にいるわけじゃないからね」
マリア:「分かった。分かったから」
マリアは白い肌を赤らめて歩みを速めた。
それから家に着く。
稲生佳子:「まあまあ。マリアさん、いらっしゃい。またゆっくりしていってね」
マリア:「はい。またお世話になります」
佳子:「この前来た時は片言の日本語だったのに、上手くなったわね」
マリア:「勇太君のおかげです」
そう。今のマリアは自動通訳魔法を使っていない。
少なくとも稲生家内においては、なるべくその魔法を使うのはやめることにした。
その代わり、なるべく日本語が上手くなるように努力した。
まだ難しい漢字などは無理だが、会話力だけは先に身に付けるようにした。
ただ、やはり外国語を喋り続けるのはストレスだ。
稲生家の外では母国語の英語に戻している。
佳子:「また奥の部屋を使ってください」
マリア:「はい。ありがとうございます」
佳子:「勇太、威吹君に早く電話してあげて」
勇太:「威吹、急ぎだって?」
佳子:「それは言ってなかったけど、待たせるのは悪いでしょ?」
勇太:「まあ、確かに……。あ、そうそう。僕とマリアさん、徹夜だったから、ちょっと寝させてもらうよ」
佳子:「何かあったの?」
勇太:「色々」
勇太は一瞬、大石寺三門前での事件のことを言おうとしたが、その後の経緯が複雑なのでそれは止めた。
マリアは一旦奥の客間に向かった。
勇太は佳子の質問をはぐらかすと、2階の自室に入る。
そしてスマホを取り出すと、それで威吹の家に電話した。
それにしても、魔界から電話が掛かって来るなど、本来はホラーものであろう。
しかも電話口の相手は狐の妖怪なのだ。
しかし稲生家において、それはホラーではない。
そもそも稲生家の人間は勇太以外、威吹が今どこに住んでいるのか知らないし(結婚したことは知っていて、その絡みでどこか遠くの地方に移住したという認識)、そもそも威吹自身が稲生家に害を与える存在ではないからだ。
勇太が掛けた威吹への電話。
その内容は何だと思う?
1:使い魔契約の話。
2:他愛も無い世間話。
3:喫緊な話。
4:そもそも電話が繋がらなかった。
5:何故か別の所に繋がった。
稲生勇太とマリアンナ・ベルフェゴール・スカーレットは大宮駅西口のバス停に向かい、そこに停車しているバスに乗り込んだ。
マリア:「このバス、乗ったことあった?」
稲生:「いえ、マリアさんは無いと思います。今年度から開業したばかりのバス路線なんで」
マリア:「ふーん……」
日野自動車製のポンチョと呼ばれる、コミュニティバスとしては一般的な小型バスである。
富士宮市内のコミュニティバス“宮バス”でも、使用されているものだ。
発車の時間になり、バスのエンジンが掛かる。
運転手:「お待たせしました。時間になりましたので発車します」
外側に開くスライドドアが閉まると、バスはゆっくり走り出した。
乗客は稲生達の他、最前列席に老婆と老人が1人ずつ乗っているだけだ。
前降りタイプのバスだと、どうしても老人などは前方の席に座りたがる。
〔お待たせ致しました。毎度ご乗車ありがとうございます。このバスは与野本町先回り、大宮西口循環線でございます。次はあおぞら保育園、あおぞら保育園でございます〕
与野本町とは言っているが、けして埼京線の与野本町駅に寄るわけではない。
稲生:「…………」
バスは1番後ろの席以外は一人掛け席しかない。
しょうがないので非常口前の席に前後して座っていて、マリアが稲生の前に座っている。
ふと気がつくと、マリアから体臭がするのが分かった。
そういえば徹夜ということは、風呂にも入っていないということだ。
そして元々体臭の強い人種ということもあってか、それで尚更匂うのだろう。
マリアは頭を垂れて眠気と戦っているが、稲生はそのフリをしてマリアの頭などの匂いを……と思ったら!
稲生:「!?」
稲生のスマホにメール着信が入った。
急いでポケットから取り出して確認すると、母親からのメールだった。
何でも威吹から電話があったらしい。
威吹は電話しかできないことは稲生の両親も知っている。
だからなるべく早めに電話してあげてという内容の電話だった。
稲生:(バスの中じゃ電話できないよ、母さん……)
もちろん母親の佳子はそんなこと知らないので、そういうメールを送って来たのだろう。
マリア:「何かあった?」
稲生のメール着信音に気づいたマリアが後ろを振り向いた。
稲生:「ああ、いや……。母さんからのメールです。威吹から家に電話があったらしくて……」
マリア:「イブキから?勇太とのファミリア(使い魔)契約を正式にするという決心が付いたか?」
稲生:「それは本人に聞かないと分かりませんが……」
稲生は取りあえずその件について了解した旨と、今からバスで家に向かっており、マリアも一緒である旨を返信しておいた。
[同日10:10.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 上落合7丁目バス停→稲生家]
最寄りのバス停に着き、バスはそこで降りる。
稲生:「大人2名です」
運転手:「はい、ありがとうございました」
稲生は運賃箱に回数券を2枚入れた。
マリア:「カードは使えないのか?」
右手にSuicaを持ちながら、マリアは稲生の後にバスを降りた。
稲生:「このバス、ICカードは使えないんですよ」
コミュニティバスあるあるであるが、実は“けんちゃんバス”はシステムがそれに近いというだけで、実は自治体絡みのコミュニティバスではない。
さいたま市も大宮区も中央区も、全く絡んでいない。
マリア:「ふーん……」
バスを降りて、あとは徒歩数分で稲生家に辿り着く。
マリア:「勇太。申し訳無いけど、着いたらすぐにシャワーを浴びたい。汗臭いでしょ?」
稲生:「僕にとってはいい匂いです」
マリア:「! わ、私は気になるから、シャワー使いたい」
稲生:「いいですよ。いつもの2階のシャワーですね」
マリア:「うん。勇太はお風呂入らないの?」
稲生:「入りますよ。ていうか、マリアと一緒に入りたい」
マリア:「あ、あの……。今は……その……勇太のママがいるんでしょ?今はダメだよ」
稲生:「まあ、今はそうかもしれないけど……。母さんは別に一日中家にいるわけじゃないからね」
マリア:「分かった。分かったから」
マリアは白い肌を赤らめて歩みを速めた。
それから家に着く。
稲生佳子:「まあまあ。マリアさん、いらっしゃい。またゆっくりしていってね」
マリア:「はい。またお世話になります」
佳子:「この前来た時は片言の日本語だったのに、上手くなったわね」
マリア:「勇太君のおかげです」
そう。今のマリアは自動通訳魔法を使っていない。
少なくとも稲生家内においては、なるべくその魔法を使うのはやめることにした。
その代わり、なるべく日本語が上手くなるように努力した。
まだ難しい漢字などは無理だが、会話力だけは先に身に付けるようにした。
ただ、やはり外国語を喋り続けるのはストレスだ。
稲生家の外では母国語の英語に戻している。
佳子:「また奥の部屋を使ってください」
マリア:「はい。ありがとうございます」
佳子:「勇太、威吹君に早く電話してあげて」
勇太:「威吹、急ぎだって?」
佳子:「それは言ってなかったけど、待たせるのは悪いでしょ?」
勇太:「まあ、確かに……。あ、そうそう。僕とマリアさん、徹夜だったから、ちょっと寝させてもらうよ」
佳子:「何かあったの?」
勇太:「色々」
勇太は一瞬、大石寺三門前での事件のことを言おうとしたが、その後の経緯が複雑なのでそれは止めた。
マリアは一旦奥の客間に向かった。
勇太は佳子の質問をはぐらかすと、2階の自室に入る。
そしてスマホを取り出すと、それで威吹の家に電話した。
それにしても、魔界から電話が掛かって来るなど、本来はホラーものであろう。
しかも電話口の相手は狐の妖怪なのだ。
しかし稲生家において、それはホラーではない。
そもそも稲生家の人間は勇太以外、威吹が今どこに住んでいるのか知らないし(結婚したことは知っていて、その絡みでどこか遠くの地方に移住したという認識)、そもそも威吹自身が稲生家に害を与える存在ではないからだ。
勇太が掛けた威吹への電話。
その内容は何だと思う?
1:使い魔契約の話。
2:他愛も無い世間話。
3:喫緊な話。
4:そもそも電話が繋がらなかった。
5:何故か別の所に繋がった。
家の近所から大石寺まで送迎して下さったカイドウさんに、改めてこの場で御礼申し上げたい(尚、解散場所のガソリンスタンドで給油されたので、その満タン分お支払いしておきました)。
また、悩み相談に乗って下さったトチロ〜さんにも御礼申し上げたい。
結局のところ、悩みを解決するのは自分自身。
御本尊様にはその後押しをお願いするのみ。
顕正会員は「御本尊様に全てお任せする」と言って、本当に丸投げするものだから、働くのは“魔の通力”なのである。
……と偉そうなことを書いたが、今回の御講で報恩坊の御本尊様と、御開扉の際に大御本尊様にすがりついた私も情けないものだ。
だったらもう少し信心真面目にやれって話だよな。
私も所詮、顕正会の乞食信心と大して変わらんということか。