報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「リサの入学前準備」 4

2018-10-20 10:22:07 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月13日16:02.天候:晴 東京都千代田区神田岩本町 岩本町駅]

 アキバでリサの学用品を購入した私達は、再び菊川に戻るべく、地下鉄の岩本町駅に向かった。

〔まもなく4番線に、各駅停車、本八幡行きが10両編成で参ります。黄色いブロックの内側で、お待ちください。この電車は途中、瑞江で急行の通過待ちを致します〕

 地下鉄線内を急行電車も走る都営新宿線だが、あいにくとこの岩本町駅も菊川駅も各駅停車しか止まらない。
 往路と違い、この駅で待避をするわけではないので、今度は本線のホームに電車がやってきた。
 こちらも往路と違い、都営地下鉄の車両である。

〔4番線の電車は、各駅停車、本八幡行きです。この電車は途中、瑞江で急行の通過待ちを致します。いわもとちょう、岩本町〜〕

 電車内に入ると、時間帯が時間帯なだけに、学校帰りの学生の姿が目立つ。

〔4番線、ドアが閉まります〕

 京王の電車はチャイムが2回鳴ってドアが閉まるが、こちらはJRと同じ3回チャイムが鳴って閉まる。
 何でも、規格がJRと同じものを使っているらしい。
 それならJR線と乗り入れができそうなものだが、残念ながら線路の幅が違うのだそうだ。
 知り合いの鉄ヲタの話によると、京王線と都営新宿線と都電荒川線は1372mmという、とても珍しい規格なのだとか……。
 これでも標準軌である1435mmより狭いので、狭軌に分類されるとか何とか言ってたな。
 そんなことを考えているうちに、電車は走り出していた。

〔次は馬喰横山、馬喰横山。都営浅草線、JR総武快速線はお乗り換えです。お出口は、左側です〕
〔The next station is Bakuroyokoyama.Please change here for the Toei Asakusa line and the JR Sobu line.〕

 高橋はドアに寄り掛かってスマホをいじっているが、リサは帰宅中の同年代のコ達の方を羨ましそうに見ていた。
 なるほど。
 そんなに行きたかったのか。
 世の中には、学校に行きたくなくてしょうがないってコも沢山いるのになぁ。
 ほんと、悲喜こもごもだ。

 高橋:「先生」
 愛原:「何だ?」
 高橋:「アネゴからです。明日、リサを連れて制服の採寸合わせに行くそうです」
 愛原:「ああ、分かった。午前中、半休にしておこう」
 高橋:「それと……」
 愛原:「ん?」
 高橋:「『買うのは文房具関係と、せいぜい通学鞄と靴関係にしておいて』だそうです」
 愛原:「どういう意味だ?」
 高橋:「多分、制服とかはアネゴに任せることになっているでしょう?」
 愛原:「ああ」

 どうしても採寸合わせの時とか、服を脱がないといけないからな。
 いくらリサが私や高橋を慕っているとはいえ、女の子だから、そこは高野君に任せるべきだと思う。

 高橋:「体操服とかスク水とかも、アネゴがついでに買うからってことだと思います」
 愛原:「ああ、そうか!」

 ってか高橋も、『スク水』って言うんだ。
 かつての不良仲間がゲーム作りを始めて、それがコミケで売れるようになるまでなったわけだが、絶対そっち方面からの影響を受けていると思われる。

[同日16:15.天候:晴 東京都墨田区菊川 某洋品店]

 菊川駅で電車を降りた私達が向かったのは、とある洋品店。
 学校に近いだけに、ここで学校指定の物が買える。
 だが、その佇まいは先ほどの文房具屋と遜色無いほどの古めかしさだ。

 高橋:「先生、またこういう店だと、リサが拗ねますよ?」
 愛原:「ここは学校指定の店なんだ。ここでしか買えない物があるんだからしょうがない」
 高橋:「チッ、学校と業者の癒着ですか。ウゼェ」
 愛原:「高橋、それはブーメランというものだぞ」
 高橋:「どうしてですか?」
 愛原:「俺達だってリサの面倒を見ることで、日本政府から多大な報酬をもらってるだろ」
 高橋:「それは癒着じゃないです。向こうから言って来たんですから」
 愛原:「ま、とにかく入ろう」

 私達は店の中に入った。

 愛原:「上履きと体育館シューズが別にあって……?通学用の靴まで指定されている、と……」
 高橋:「やっぱ癒着じゃないスか!」
 愛原:「しつこい」

 とは言うものの、私も何だかそんな気がしてきた。

 愛原:「リサ、ちょっと履いてみてサイズ合わせてくれ」
 リサ:「分かった」

 リサは今履いているスニーカーを脱ぐと、まずは通学用の靴を履いてみた。
 心なしか、リサの手足が赤味がかっている。
 学用品を集め、ついに身に付けるものまで試着することによりその興奮度が高まり、力が解放される寸前ということか。
 取りあえず、必要な靴を全部履いてみた。

 愛原:「サイズはどの靴も同じで大丈夫だな」

 そこはさすが統一規格というわけだ。
 靴によっては、同じサイズのはずなのに何か違うってのも多々あるからな。
 因みにリサのヤツ、靴を履き替える際に椅子に座ってやるのだが、時折片足を椅子の上に上げたりする。
 スカートを穿いているものだから、時々中が見えてしまう。
 で、本人は全然気にしていない様子。
 なるほど。
 高野君の懸念していたのは、この辺りか。
 入学先は確か共学校のはずだから、この辺も高野君に教えておいてもらおう。

 愛原:「結構、大きな荷物になったな」

 靴を買った後、私達はようやく帰宅の途に就いた。

 高橋:「全くですね。おい、リサ。先生がここまで御苦労なさったんだからな、登校拒否なんかしやがったらマグナム撃ち込むぞ?」
 リサ:「うん、分かった」
 愛原:「いや、リサにマグナム効かないから」

 銃火器の集中砲火を浴びせても、せいぜい数秒間昏倒させるだけだとオリジナルのリサ・トレヴァーに関する説明にはあった。
 どうしても殺したければ、建物の自爆装置に巻き込ませろとのことだ。
 でも私には、本当にそんなことで殺せるのかどうかも怪しいと思った。
 とにかく、今ここにいる派生版のリサはいいコだ。
 そんなことにならないことを信じる他は無い。

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