報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「斉藤家へ」

2022-03-21 19:59:06 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月5日13:08.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅・上野東京ラインホーム]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の7番線の列車は、13時9分発、普通、宇都宮行きです。この列車は、15両です。グリーン車が付いております。……〕

 話が終わった後、昼食を挟んで、今度は斉藤家へ向かうことになった。
 絵恋さんがどうしてもと、社長の携帯に何度も掛ける始末だったからだ。
 私とリサが了承すると、社長は済まなさそうにしていた。
 お詫びと御礼の印として、昼食はビル内のレストラン街で鰻重を御馳走してくれた。
 久しぶりの鰻に私は舌鼓を打ったが、魚介類より肉類の方が好きなリサは物足りなさそうにしていた。
 しかも斉藤家に向かう為に、わざわざ大宮までの新幹線のキップを秘書さんに取らせようとしていた有り様だ。
 私達に気を使ってくれるのもあるのだが、それほどまでに娘さんを溺愛していることに他ならないと私は思った。
 折衷案として、在来線のグリーン車のキップと大宮駅からのタクシーチケットだけをもらうことにした。
 これなら、新幹線よりも安く済む。

〔まもなく7番線に、普通、宇都宮行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。この列車は、15両です。グリーン車が付いております。……〕

 尚、斉藤社長はまだ残務処理があるので、会社に残るとのこと。
 夕方には帰るそうだ。
 中距離電車のグリーン車は、4号車と5号車にある。
 つまり、中間車だ。
 そこにリサを無断で乗せるのは協定違反になるので、善場主任に伝えておいた。
 善場主任は、私とリサが斉藤社長と会社で会ったことに驚いていたが、グリーン車への乗車は了承された。

〔「7番線、ご注意ください。宇都宮線の普通列車、宇都宮行きが到着致します。終点、宇都宮まで各駅に止まります」〕

 風を切って15両編成の電車が入線してくる。
 そろそろ昼間は暖かくなる頃だが、風は冷たいし、朝晩は冷える。
 にも関わらず、リサはもうコートを着ていなかった。
 ブレザーの下には、ニットのベストは着ているが……。
 BOWは、暑さ寒さはそんなに感じないらしい(ただ、さすがに火は熱いと感じるようだが)。

〔とうきょう、東京。ご乗車、ありがとうございます。次は、上野に止まります〕

 ドアが開くと、ここまでの乗客達が降りて来る。
 東海道本線の平塚駅から来た電車ということもあり、そんなに混んでいなかった。
 そもそも、下車客が多いので。
 また、高崎線よりも宇都宮線の方が空いている傾向にはある。
 5号車に乗り込み、2階席へ向かった。
 リサが先にホイホイと乗り、少し急な階段を昇ったので、私の顔にリサのスカートの裾が当たった。

 リサ:「ここがいい」
 愛原:「そうか」

 進行方向右側。
 窓側にリサが座り、通路側に私が座る。

 リサ:「あ……」
 愛原:「どうした?」
 リサ:「ジュースとお菓子買うの忘れた……。サイトーとLINEに夢中で……」

 リサはガックリと肩を落とした。

 愛原:「しょうがない。車内販売が来たら買ってやるよ」
 リサ:「本当!?」
 愛原:「ああ。どうせ紙のグリーン券だから、アテンダントが改札に来るはずだ。その時、買えばいいさ」
 リサ:「なるほど。分かった」
 愛原:「俺の見立てでは、上野駅を出た辺りに来るな」
 リサ:「どうして上野駅?」
 愛原:「まず、東京駅はターミナル駅だから、結構な乗り降りがあっただろ?」
 リサ:「うん」
 愛原:「次の上野駅もターミナル駅だから、結構な乗り降りがあるはずだ。なので、東京駅を出た時よりも、上野駅を出た時にグリーン券のチェックをやった方が効率がいい。俺がアテンダントだったら、そうするね」
 リサ:「なるほど。さすが先生。名推理」
 愛原:「いやいや。ただの鉄ヲタ知識だよ」

 などと得意気になった私だったが、もし当てが外れて上野駅を過ぎてもアテンダントが来なかったらどうしようと少々不安になった。

[同日13:16.天候:晴 東京都台東区上野 JR宇都宮線1590E列車5号車内]

 電車は上野駅を定刻通りに出た。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は宇都宮線、普通電車、宇都宮行きです。4号車と5号車は、グリーン車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください。次は、尾久です〕

 アテンダント:「失礼します。グリーン券はお持ちでないでしょうか?」
 愛原:キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
 リサ:「? 先生、グリーン券だって」
 愛原:「お……おっと!」

 私は急いでグリーン券を差し出した。

 アテンダント:「ありがとうございます」

 アテンダントは先に出したリサのグリーン券に、青い改札印を押した。
 駅で押される改札印は赤だが、車内で押されるのは青である。
 これはJRバスも同じ(だが、JRバステックではQRコードを読み取るだけで、改札印の押印も無ければ、乗車券の回収も無かったと作者の体験談)。

 リサ:「車内販売やってる?」

 リサはアテンダントが持っているバスケットを見て言った。

 アテンダント:「はい、ございますよ。何になさいますか?」
 リサ:「……レモンドーナツ。あと、ボトルコーヒー」
 アテンダント:「ありがとうございます」

 レモンドーナツとは栃木県の地産品の1つらしい。
 期間限定での販売だ。
 しょうがないので、私も1つ頂くことにした。
 あとは、私も缶コーヒー。

 アテンダント:「ありがとうございました」

 購入した後で、早速食べてみる。

 愛原:「レモンの味だ……」
 リサ:「酸っぱ!……でも、ドーナツ美味しい」
 愛原:「そりゃあ良かった」

 どうせ斉藤家でも、お茶とお菓子で接待してくれそうだがな。
 あ、それとも、歓迎されるのはリサだけかな。
 

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