[4月25日22:00.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル]
静まり返ったビジネスホテル5階の廊下を歩くは、このホテルの住み込み従業員エレーナ・M・マーロン。
手に飲食物を持って、502号室へ向かう。
そこは稲生が宿泊している部屋だ。
今日のエレーナは仕事休みのはずで、客室フロアを歩く理由は無いはずだが……。
エレーナ:「コホン」
エレーナは咳払いをしてから、稲生の部屋をノックした。
稲生:「はい?」
少ししてから稲生がドアを開けた。
エレーナ:「よう、稲生氏。ルームサービスだぜ」
稲生:「ルームサービス?僕は別に頼んでないよ?てか、このホテルにルームサービスなんてあったっけ?」
エレーナ:「ガチで私からのサービスだぜ。……今、1人か?」
稲生:‘「そうだけど?」
エレーナ:「よっしゃあぁーっ!ルームサービス、第2弾だぜ!中にお邪魔させて頂くぜ!」
エレーナは鼻息荒くして、稲生の部屋に突撃した。
稲生:「ちょちょちょ、待ってくれ!」
エレーナ:「待たせる男は嫌いだぜ!さっさと覚悟を決めるんだぜ!」
エレーナ、稲生をベッドに押し倒そうとしたが……。
エレーナ:「ぎゃっ!」
エレーナの後頭部から鈍い音がした。
マリア:「全く。油断も隙もない……!」
マリアの手には魔法の杖が握られていた。
本当は魔法陣を描いたり、召喚獣や悪魔を呼んで指示するのに使う為の物のはずだが、往々にして直接攻撃に使われることもある。
エレーナ:「ま、マリアンナ!?いつの間に!?ドアはオートロックだぜ!?」
マリア:「魔道士が魔道士に聞く質問じゃないだろ?さて、3秒以内にここを出て行かないと、【お察しください】」
エレーナ:「わ、分かったぜ!だけど稲生氏!」
稲生:「な、なに?」
エレーナ:「アンタの部屋に真っ先に来たの、私だぜ?その意味、分かるよな?」
稲生:「えっと……?」
マリア:「……3秒過ぎたぞ?パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!……」
エレーナ:「分かったぜ!失礼しました!」
エレーナは慌てて稲生の部屋を出て行った。
エレーナ:「ちっ、もう少し早く行くんだったぜ……」
エレーナはエレベーターに乗り込んだ。
エレーナ:「しゃあねぇ。鈴木の部屋を訪問してやるか」
3階に下りる。
そして、鈴木の部屋に向かった。
エレーナ:「ん?」
その時、鈴木の部屋から鈴木が出て来た。
鈴木:「おう、エレーナ!」
エレーナ:「鈴木、どこか行くのか?」
鈴木:「1階の自販機コーナー。ジュース切らしたからさ」
エレーナ:「何してるんだぜ?」
鈴木:「リリィとゲーム」
エレーナ:「はあ?リリィのヤツ、鈴木の部屋にいたのか?」
鈴木:「部屋のテレビにPS4繋げさせてもらってるよ」
エレーナ:「それはいいけどよ。あんまりリリィを夜更かしさせるなよ?」
鈴木:「分かってるって。それじゃ」
鈴木はエレベーターに向かった。
それからエレーナ、鈴木の部屋のドアをノックする。
リリィ:「フヒッ?はいー!」
リリィがドアを開ける。
エレーナ:「おう、リリィ。ここにいたのか」
リリィ:「フヒッ!?エレーナ先輩!む、ムッシュ鈴木がゲーム持って来たって言うんでぇ……」
エレーナ:「男の部屋に入り浸るなんて、オマエも魔女卒業するつもりか?」
リリィ:「フヒッ!?わ、私はただゲームを……」
エレーナ:「で、何をやってるんだぜ?」
リリィ:「“バイオハザードRE:3”です。い、今、病院の中……」
エレーナ:「後半に入った所か。いつまでも起きてねーで、早く寝ろよ。見習いは夜寝て昼起きるもんだ」
リリィ:「は、はい……」
エレーナ:「オマエがこの部屋に来た時、鈴木以外に誰かいたか?」
リリィ:「フヒッ?誰もいませんでしたけど……」
エレーナ:「すると、オマエが1番鈴木に対する好感度が高いというわけか……」
リリィ:「ムッシュ鈴木、いい人です!」
エレーナ:「変わったな……。オマエもあいつも」
リリィ:「フヒッ?」
エレーナ:「何でもない。じゃあな」
エレーナはドアを閉めた。
エレーナ:「変わんねーのは私だけか……」
エレベーターのボタンを押すと籠が上がって来たのだが、そこに鈴木が乗っていた。
鈴木:「だいぶ買い込んで来ちゃった。今日までにクリアするぞ」
エレーナ:「それはいいけど、あんまリリィを夜更かしさせんなよ?」
鈴木:「分かってるよ。敵を倒したり、ギミックを解いたりする度に興奮して、『ムッシュ鈴木、スゴーイ!』とか言ってくれるのが可愛くてさぁ……」
エレーナ:「あいつがもっと小さい頃は勉強どころか、ゲームすらできない環境に置かれてたんだ。せいぜい、楽しませてやんな」
鈴木:「もちろん!」
エレーナ:「私は何も変われない……」
鈴木:「え、なに?」
エレーナ:「いや、何でもない。それじゃ」
エレーナは鈴木の部屋をあとにした。
地下階の自分の部屋に戻る前に、1階に立ち寄る。
エレーナ:「ん?オーナー、何をしてるんですか?」
フロントにオーナーはいなくて、代わりにロビーのマガジンラックの所にいた。
オーナー:「おお、エレーナか。いや、マガジンラックに新しい本を入れてたんだけどね」
エレーナ:「手伝いますか?」
オーナー:「いやいや。どうせ1冊増やすだけだ。大したことじゃない」
エレーナ:‘「何の本ですか?聖書とかじゃないですよね?」
オーナー:「そんなことしたら、このホテルの経営が傾いてしまうよ。そうじゃなくて、これ」
オーナーが見せたのは女性向けの恋愛指南書。
オーナー:「大きなお世話だということは分かってるんだが、どうもここに来られる魔女さん達は恋愛下手が多いような気がしてならない。それで、ちょっとここにヒントを仕掛けてあげようかと思ってね」
エレーナ:「その中に私も入ってるんですね?」
オーナー:「そう思うかい?これまた大きなお世話だと思うが、せっかく鈴木さんがキミに熱を上げているというのに残念だよ」
エレーナ:「……今、鈴木への好感度が高いのはリリィのようです」
オーナー:「なるほど。鈴木さんも言ってたねぇ。『俺、御受誡してから、何故か子供と婆さんからの好感度しか上がらないんですよー』なんてね」
エレーナ:「それでオーナーは何と?」
オーナー:「『子供とお年寄りに好かれるのは、人間性が素直に評価されている証ですよ』ってね。そしたら、『評価されなくてもいいから、普通の若い女性にモテたい』とか言ってけどねw」
エレーナ:「後でうちの魔女達に復讐されるような男のことですよ、それは。それでも良ければどうぞってね」
オーナー:「それでもいいと答えるのが、肉食系男子なんだろうなぁ……」
エレーナ:「オーナーにも覚えが?」
オーナー:「あるから、ここでホテル経営の仕事をしているようなものだよ」
エレーナ:「?」
オーナー:「ま、長くなるからその話はまた今度ね」
エレーナ:「私にも後でその本、見せてもらってもいいですか?」
オーナー:「いいよ。てか、後で戻してくれるなら、今読んでもいい」
エレーナ:「ありがとうございます」
エレーナは早速その本を手にすると、ソファに座った。
静まり返ったビジネスホテル5階の廊下を歩くは、このホテルの住み込み従業員エレーナ・M・マーロン。
手に飲食物を持って、502号室へ向かう。
そこは稲生が宿泊している部屋だ。
今日のエレーナは仕事休みのはずで、客室フロアを歩く理由は無いはずだが……。
エレーナ:「コホン」
エレーナは咳払いをしてから、稲生の部屋をノックした。
稲生:「はい?」
少ししてから稲生がドアを開けた。
エレーナ:「よう、稲生氏。ルームサービスだぜ」
稲生:「ルームサービス?僕は別に頼んでないよ?てか、このホテルにルームサービスなんてあったっけ?」
エレーナ:「ガチで私からのサービスだぜ。……今、1人か?」
稲生:‘「そうだけど?」
エレーナ:「よっしゃあぁーっ!ルームサービス、第2弾だぜ!中にお邪魔させて頂くぜ!」
エレーナは鼻息荒くして、稲生の部屋に突撃した。
稲生:「ちょちょちょ、待ってくれ!」
エレーナ:「待たせる男は嫌いだぜ!さっさと覚悟を決めるんだぜ!」
エレーナ、稲生をベッドに押し倒そうとしたが……。
エレーナ:「ぎゃっ!」
エレーナの後頭部から鈍い音がした。
マリア:「全く。油断も隙もない……!」
マリアの手には魔法の杖が握られていた。
本当は魔法陣を描いたり、召喚獣や悪魔を呼んで指示するのに使う為の物のはずだが、往々にして直接攻撃に使われることもある。
エレーナ:「ま、マリアンナ!?いつの間に!?ドアはオートロックだぜ!?」
マリア:「魔道士が魔道士に聞く質問じゃないだろ?さて、3秒以内にここを出て行かないと、【お察しください】」
エレーナ:「わ、分かったぜ!だけど稲生氏!」
稲生:「な、なに?」
エレーナ:「アンタの部屋に真っ先に来たの、私だぜ?その意味、分かるよな?」
稲生:「えっと……?」
マリア:「……3秒過ぎたぞ?パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!……」
エレーナ:「分かったぜ!失礼しました!」
エレーナは慌てて稲生の部屋を出て行った。
エレーナ:「ちっ、もう少し早く行くんだったぜ……」
エレーナはエレベーターに乗り込んだ。
エレーナ:「しゃあねぇ。鈴木の部屋を訪問してやるか」
3階に下りる。
そして、鈴木の部屋に向かった。
エレーナ:「ん?」
その時、鈴木の部屋から鈴木が出て来た。
鈴木:「おう、エレーナ!」
エレーナ:「鈴木、どこか行くのか?」
鈴木:「1階の自販機コーナー。ジュース切らしたからさ」
エレーナ:「何してるんだぜ?」
鈴木:「リリィとゲーム」
エレーナ:「はあ?リリィのヤツ、鈴木の部屋にいたのか?」
鈴木:「部屋のテレビにPS4繋げさせてもらってるよ」
エレーナ:「それはいいけどよ。あんまりリリィを夜更かしさせるなよ?」
鈴木:「分かってるって。それじゃ」
鈴木はエレベーターに向かった。
それからエレーナ、鈴木の部屋のドアをノックする。
リリィ:「フヒッ?はいー!」
リリィがドアを開ける。
エレーナ:「おう、リリィ。ここにいたのか」
リリィ:「フヒッ!?エレーナ先輩!む、ムッシュ鈴木がゲーム持って来たって言うんでぇ……」
エレーナ:「男の部屋に入り浸るなんて、オマエも魔女卒業するつもりか?」
リリィ:「フヒッ!?わ、私はただゲームを……」
エレーナ:「で、何をやってるんだぜ?」
リリィ:「“バイオハザードRE:3”です。い、今、病院の中……」
エレーナ:「後半に入った所か。いつまでも起きてねーで、早く寝ろよ。見習いは夜寝て昼起きるもんだ」
リリィ:「は、はい……」
エレーナ:「オマエがこの部屋に来た時、鈴木以外に誰かいたか?」
リリィ:「フヒッ?誰もいませんでしたけど……」
エレーナ:「すると、オマエが1番鈴木に対する好感度が高いというわけか……」
リリィ:「ムッシュ鈴木、いい人です!」
エレーナ:「変わったな……。オマエもあいつも」
リリィ:「フヒッ?」
エレーナ:「何でもない。じゃあな」
エレーナはドアを閉めた。
エレーナ:「変わんねーのは私だけか……」
エレベーターのボタンを押すと籠が上がって来たのだが、そこに鈴木が乗っていた。
鈴木:「だいぶ買い込んで来ちゃった。今日までにクリアするぞ」
エレーナ:「それはいいけど、あんまリリィを夜更かしさせんなよ?」
鈴木:「分かってるよ。敵を倒したり、ギミックを解いたりする度に興奮して、『ムッシュ鈴木、スゴーイ!』とか言ってくれるのが可愛くてさぁ……」
エレーナ:「あいつがもっと小さい頃は勉強どころか、ゲームすらできない環境に置かれてたんだ。せいぜい、楽しませてやんな」
鈴木:「もちろん!」
エレーナ:「私は何も変われない……」
鈴木:「え、なに?」
エレーナ:「いや、何でもない。それじゃ」
エレーナは鈴木の部屋をあとにした。
地下階の自分の部屋に戻る前に、1階に立ち寄る。
エレーナ:「ん?オーナー、何をしてるんですか?」
フロントにオーナーはいなくて、代わりにロビーのマガジンラックの所にいた。
オーナー:「おお、エレーナか。いや、マガジンラックに新しい本を入れてたんだけどね」
エレーナ:「手伝いますか?」
オーナー:「いやいや。どうせ1冊増やすだけだ。大したことじゃない」
エレーナ:‘「何の本ですか?聖書とかじゃないですよね?」
オーナー:「そんなことしたら、このホテルの経営が傾いてしまうよ。そうじゃなくて、これ」
オーナーが見せたのは女性向けの恋愛指南書。
オーナー:「大きなお世話だということは分かってるんだが、どうもここに来られる魔女さん達は恋愛下手が多いような気がしてならない。それで、ちょっとここにヒントを仕掛けてあげようかと思ってね」
エレーナ:「その中に私も入ってるんですね?」
オーナー:「そう思うかい?これまた大きなお世話だと思うが、せっかく鈴木さんがキミに熱を上げているというのに残念だよ」
エレーナ:「……今、鈴木への好感度が高いのはリリィのようです」
オーナー:「なるほど。鈴木さんも言ってたねぇ。『俺、御受誡してから、何故か子供と婆さんからの好感度しか上がらないんですよー』なんてね」
エレーナ:「それでオーナーは何と?」
オーナー:「『子供とお年寄りに好かれるのは、人間性が素直に評価されている証ですよ』ってね。そしたら、『評価されなくてもいいから、普通の若い女性にモテたい』とか言ってけどねw」
エレーナ:「後でうちの魔女達に復讐されるような男のことですよ、それは。それでも良ければどうぞってね」
オーナー:「それでもいいと答えるのが、肉食系男子なんだろうなぁ……」
エレーナ:「オーナーにも覚えが?」
オーナー:「あるから、ここでホテル経営の仕事をしているようなものだよ」
エレーナ:「?」
オーナー:「ま、長くなるからその話はまた今度ね」
エレーナ:「私にも後でその本、見せてもらってもいいですか?」
オーナー:「いいよ。てか、後で戻してくれるなら、今読んでもいい」
エレーナ:「ありがとうございます」
エレーナは早速その本を手にすると、ソファに座った。
もちろん直後にマリアが来たので、その差は僅かなものであることは言うまでもない。
リリィに関しては稲生よりも鈴木の方が好感度が高かったので、鈴木の部屋に行ったというわけだ。
因みにイリーナが1番高いと、イリーナがやって来るのだが。
ゲームと違って数値化できないのがツラいね。