報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「魔王城新年会」 2

2019-01-11 10:16:35 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月1日18:00.天候:晴 魔界王国アルカディア 魔王城コンベンションホール]

 横田:「クフフフフ……。それではお時間になりましたので、開始させて頂きたいと存じます。先般の総幹部会……もとい、魔界共和党納会における大感動は今だ冷めやらぬものであります。今年は人間界において、波乱万丈となる予知が皆様から出ておりますが、今宵は平和となったこの魔界において……」

 司会は魔界共和党理事の横田のようだ。

 稲生:「ダメだ。顕正会の幹部会に参加している気分になる」
 イリーナ:「仏法の話は全くしていないのだからいいじゃない」

 横田:「申し遅れました。私、司会の横田でございます。それでは次に、魔界共和党幹事長にしてアルカディア王国の人間代表、安倍春明総理より新年の御挨拶がございます。総理、よろしくお願い致します」

 モーニングスタイルの安倍春明が登壇する。

 イリーナ:「段々、日本の安倍総理に似てきたわねぇ……」
 稲生:「遠い親戚ということですが、やはり血が通っていると似るものですね」

 安倍:「えー、皆さん、明けましておめでとうございます。本年も何卒よろしくお願い致します。昨年を振り返ってみますと、人間界では波乱な1年となったようでございますが、この魔界王国アルカディアにおきましては、幸いにも大きな災害並びに紛争等の発生は無く、また……」

 安倍の挨拶を聞いていて、稲生は思った。

 稲生:(あー……日本の安倍総理の喋り方と似て来てるなぁ……)

 安倍:「……遠い親戚が同じ総理大臣を務める日本国におきましては、金上天皇陛下の退位が行われ、また皇太子殿下の即位が行われると伺っております。しかしながら我が国においては、ルーシー・ブラッドプール陛下がまだまだ若く、お元気でいらっしゃいますので……」

 マリア:「よほどのクーデターが無い限り、ずっとブラッドプール王朝だと思いますよ」
 イリーナ:「しかも出自がヴァンパイアじゃ、『崩御』も無いだろうしね」

 三権分立な所は日本をモデルにしたというのは頷けるが、王室の運営方法は日本の皇族ではなく、イギリス王室を参考にしたとのこと。
 やはり象徴天皇制では、何か問題があると判断したか。

 安倍:「……長々とご清聴ありがとうございました。それでは今宵は皆で盛り上がりましょう。もしも私が酔い潰れましたなら、適当な部屋に放り込んでおいて頂ければ結構です」
 横田:「ありがとうございました。それでは総理が酔い潰れました暁には、私のパンティーコレクションルームに……」
 安倍:「それは却下だ!」
 横田:「それは残念です。それでは皆様、グラスを拝借」

 一同、ワイングラスを手にする。

 横田:「それでは安倍総理より、乾杯の音頭を取らせて頂きます。総理、お願いします」
 安倍:「それでは今年も1年、王国の平和と繁栄を願って、乾杯!」
 一同:「乾杯!」

 こうして、新年会が始まった。
 新年会は立食形式である。
 魔界の食べ物というと、おどろおどろしいものをイメージするが、今回は人間界を主に活動拠点とする魔道師達の新年会ということもあり、見た目は普通の料理が並んでいた。

 マリア:「おっ、このローストビーフはいける!」
 稲生:「本当ですか。ローストビーフはイギリス料理ですもんね」
 イリーナ:「これも美味しいわよ」
 安倍:「はっはっは!稲生君、沢山食べて栄養つけてくださいよ」
 稲生:「安倍総理!」
 安倍:「特にこれなんか、血や肉になる牛魔の肉です」
 イリーナ:「よく見たら、鉄分の多い料理が並んでますわね。鉄分には造血作用がありましてぇ……」
 マリア:「うっ!ま、まさか……」
 安倍:「稲生君!ルーシーに血のお歳暮を!」
 稲生:「総理!もう新年明けてますよ!?」
 イリーナ:「要は献血のお願いね」

 イリーナは溜め息をついた。

 安倍:「ルーシーはキミの血が気に入ったんだ!ついでにヴァンパイアにならないかとのお誘いだ!」
 稲生:「ぼ、僕は魔道師ですよ!?」
 イリーナ:「総理、もう酔っ払ったんですか?ただの献血はともかく、さすがにそれは私も反対します」
 マリア:「そうですよ!」

 吸血鬼に噛まれると、噛まれた側も強制的に吸血鬼となる。
 それを避ける為、『献血』という形を取っているのである。
 何のことはない。
 本当に人間界の献血ルームみたいなところで、血液パックに献血者の血液を注入するだけである。
 その血液パックは、すぐさまルーシーの所へ送られる仕組みだ。

 稲生:「栄養をつけたらよろしく頼む!」

 と、その時、仮設ステージからロックな音が響いて来た。

 リリアンヌ:「ヒャーッハッハッハッハッハーッ!正月からロックに行くにぜぇぇぇぇぇっ!」

 リリアンヌが趣味のロックを披露するようである。
 いっそのこと、人間界でもロッカーになればいいのにと思う。

 稲生:「それにしても、今年は日本も大変なことになるんですか?」
 イリーナ:「残念だけどね。アタシはまだしてないけど、ポーリン姉さんなんかは『東京オリンピックが中止になる』くらいの大災厄が起きるなんて予言もしているくらいよ」
 稲生:「そ、そんなに!?」
 マリア:「オリンピックはまた更に来年なのに、もうそこまで予知されているとは……」
 イリーナ:「ただ、あのお姉さんは魔法薬の開発・製造は門内イチだけど、占い関係は……ちょっとね」
 マリア:「宮廷魔導師がそれでいいんですか?」
 イリーナ:「まあ、王国の行く末を占うだけが仕事じゃないから。幸い今この王国は平和だから、そんなに占いに重点は置かれていないし、それよりも魔法薬を国内に流通させて病気を治してあげる方が、ここの政府の国民からの支持も右肩上がりになっていいわけよ」
 稲生:「こういう所にも政治的思惑が……」
 イリーナ:「ま、どこの国にもあるわよ。それよりまあ、献血のことは別にして、タダ飯・タダ酒なんだから、ありがたく頂戴しましょう」
 マリア:「タダより高い物は無いはずですけどね」

 BGMはリリアンヌのロック。
 エレーナに言わせると、アルカディア国内にあるリリアンヌの学生寮には、ロックのCDが沢山置いてあるのだという。

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