報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「マリア、ダウン」

2017-11-29 15:20:36 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月5日21:34.天候:雨 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅]

 列車が南下するに従って、窓に当たる雨粒の量が多くなる。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、大宮です。上越新幹線、北陸新幹線、高崎線、埼京線、京浜東北線……〕

 稲生:「ん……?おっ、もう大宮か。マリアさん、マリアさん」

 稲生が隣に座るマリアの肩を揺すった。

 マリア:「んっ……」
 稲生:「もうすぐ降りますよ」

 稲生は、すぐ後ろに座るイリーナも起こそうとした。

 稲生:「先生、先生……」
 イリーナ:「あいよ。アタシゃ起きてるよ〜」

 キキィ!(想定外のATCブレーキで列車が大きく揺れた)

 稲生:「わっ!とっとっ……!」

〔「……尚、本日は大宮駅改良工事に伴い、列車の到着ホームが変更されております。この列車も14番線到着のところ、本日に限りまして15番線に到着致します。お出口は変わりまして、右側となります。到着ホームにご注意ください。……」〕

 ガクン!(想定外のポイント通過で、また列車が大きく揺れる)

 稲生:「わぷっ!」

 おおっと!稲生、バランスを崩してイリーナの巨乳に顔面ダイブだ!

 稲生:「すすす、すいませ……!」
 イリーナ:「いらっしゃーい♪」

 イリーナ、笑みを浮かべてそのまま稲生をハグ。

 マリア:「何をフザけて……

 マリア、顔を真っ赤にしてやってくる。
 そして……。

 稲生:「ぐえっ……!」
 イリーナ:「!!!」

 マリア、全体重を掛けた体当たりをかましてきた。

 イリーナ:「ちょっと、マリア!単なるジョークでしょ!何をそんなに……!」
 マリア:「うっ……くっ……!」
 イリーナ:「!?」

〔「ご乗車ありがとうございました。大宮ぁ、大宮です。お忘れ物の無いよう、ご注意ください。15番線に到着の電車は……」〕

 稲生:「いっけね!着いちゃった!早く降りましょう!」

 稲生達は慌てて荷物を取り、急いで列車から降りた。

 稲生:「ふう……!」

 ピー!(客終合図)
 プシュー、ガチャガラガラガラガラ………ッ、ガチャン!(E2系0番台の閉扉音はこんな感じ)

 イリーナ:「降り遅れ無くて良かったわね」
 稲生:「危うく上野まで連れて行かれる所でした」

[同日21:45.天候:雨 埼玉県さいたま市中央区 タクシー車内→稲生家]

 大宮駅からタクシーに乗り換えて家に向かう。
 雨はそんなに強いものではないが、道行く人達の殆どが傘を差している。
 タクシーのワイパーも数秒置きに動く程度の雨だ。

 稲生:「さすが先生ですね。予言が当たりましたよ」
 イリーナ:「まあ、このくらいは序の口さね」

 東日本大震災だけは魔界や“魔の者”が関わっていたこともあって、どの魔道師も予知はできなかった。
 “魔の者”と大魔王バァルは全くの面識は無いし、交流も全く無いが、たまたまこの二強魔が偶然同時に行動を起こしたことがあの大災害に繋がったとの見方もある。
 悪魔の考えることを人間に理解することは難しいが、悪魔同士は気が合うのか、そういうことで思わぬタッグを組んで来たりするから鬼以上にタチが悪い。
 今は魔道師達と契約している悪魔も、契約が切れたりすると今度は敵に回ることもあるから物凄く面倒臭い。

 イリーナ:「マリア、どうしたの?」

 マリアはローブを羽織っているが、更にフードも被って俯いていた。

 マリア:「いえ……ちょっと寒くて……」
 運転手:「あ、寒かったですか。どうもすいません」

 運転手はエアコンの暖房を強くした。
 確かに今は外が雨ということもあり、結構肌寒いとは感じる。
 しかし、車に乗った時、稲生は十分に暖房は効いていると思ったのだが……。

 稲生:(まあ、僕とマリアさんじゃ体感温度が違うのかも)

 屋敷の中には機械的なエアコンは見当たらないが、それでも空調が保たれているのは、それが偏に魔法によるものだろう。
 屋敷が魔法で建てられたことが分かる1つの理由である。
 稲生の部屋は夏場、冷房が強めだ。
 これはPCやゲーム機などが置いてあるから、というのを理由にしている。
 で、疑われた。
 そこまで暑くなるものなのか、と。
 マリアに調べられて、その時に見られたのが、PC内に保存していたJKモノやスク水モノもののエロ動画である。

 イリーナ:「…………」
 稲生:「あ、すいません。そこの道、左に入ってください」
 運転手:「はい。ここを左ですね」
 稲生:「はい。……で、あの標識の前で止めてください」
 運転手:「はい」

 タクシーがハザードを点けて止まる。

 運転手:「えー、ちょうど1000円です」
 稲生:「はい。……すいません、カードで」
 運転手:「はい」

 イリーナから渡されたカードで稲生が払っている間、背後で動きがあった。
 もちろん、マリアが先に降りたわけである。

 運転手:「それでは暗証番号を……」
 イリーナ:「マリア!」
 稲生:「!?」

 稲生が驚いて車の外を見ると、マリアが倒れていた。

 稲生:「マリアさん!?」

 イリーナに抱え起こされた。

 マリア:「ちょっと……足がもつれて……」
 イリーナ:「そんなわけないでしょ!」

[同日22:15.天候:雨 稲生家]

 イリーナ:「熱は38度5分。典型的な風邪ね」
 稲生:「そうでしたか。全然、咳をしていなかったので気がつきませんでした」
 イリーナ:「くしゃみとかはしてたけどね。ユウタ君も感染(うつ)されていないか、気をつけた方がいいよ」
 稲生:「今からイソジンでうがいしてきます」

 そこへ稲生の母親の佳子がやってきた。

 佳子:「あのー、パブロンで宜しかったらどうぞ」

 家の救急箱にあった風邪薬を持って来た。

 イリーナ:「どうも、ありがとうございます」
 佳子:「明日になれば近くのクリニックが開いてますよ」
 稲生:「それにしても、僕も魔道師になってから全く風邪なんか引かなかったものだからそういうものだと思ってましたけど、そうでもないんですね」
 イリーナ:「そりゃそうよ。怪我だったら回復魔法で治せるけど、病気は魔法で治せないからね。『不老不死の魔道師を殺すには、病を流行らせろ』ってね。だから風邪でも油断はできないのよ」
 稲生:「へえ……」
 イリーナ:「それじゃ、お言葉に甘えて頂きます」
 佳子:「どうぞどうぞ」

 イリーナは薬を持って客間に入った。

 佳子:「あの人達、保険とか入ってるのかしら?」
 稲生:「えっ?」
 佳子:「ほら、保険入ってないと全額負担になるからね」
 稲生:「そう言えば日本に住む外国人達は、こういう時どうしてるんだろう???」

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