報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「迫り来る恐怖」

2017-01-14 20:51:18 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[12月31日18:00.天候:雪 ペンション“ビッグフォレスト”1F食堂]

 大森:「宿泊客の皆様、食事の用意ができました。どうぞ、食堂までお越しください」

 館内に大森の放送が響いた。
 こういうペンションでも非常放送の機器は必要のようで、それを使って放送しているようだ。

 宗一郎:「おっ、お前やマリアさんも風呂に入ったのか」
 勇太:「一応ね。傷痕に効く温泉で良かったよ」

 勇太はマリアを見た。
 マリアは小さく頷いた。

 宗一郎:「そうか。それは良かった」

 宗一郎は笑みを浮かべると、食堂へ向かった。
 今日の宿泊客は稲生家とマリア、花の女子大生3人組、そしてあのスーツにサングラスの男だけのようだった。
 しかもそのスーツの男、他の宿泊客から離れたテーブルに1人で座り、相変わらずサングラスに帽子を被っていて、一切正体を明かすつもりは無いようだ。

 バイトA(男):「オーナー、元木様はまだ来てないんスか?」
 大森:「雪子、元木様は?」
 雪子:「まだ到着されてないよ」
 宗一郎:「まだ、他に予約の入ってる客がいるのかい?」
 大森:「ええ。お1人なんですけどね、吹雪で立ち往生とかされてたら大変ですよ」

 確かに外を見ると、雪は大雪となっていた。
 時折、強い風が吹いて窓をガタガタと揺らした。

 宗一郎:「それは心配だねぇ……」
 バイトB(女):「お客様、お飲み物に何になさいますか?」
 宗一郎:「おお、そうだった。やはり、山の幸には赤ワインがいいかな?大森君お勧めのワインは無いの?」
 大森:「ああ、それなら取って置きのを持ってきますよ」
 宗一郎:「おっ、そうこなくちゃな」
 大森:「小久保君、ちょっと私はワインセラーに行ってくるから、もしその間に元木様が到着されたら、すぐに夕食の用意をしてあげて」
 バイトA改め小久保:「了解っス!」
 雪子:「ワインセラーの鍵なら今、葵ちゃんが持ってるんじゃない?」
 大森:「篠原さん?」
 バイトB改め篠原:「あっ、鍵ならさっき、フロントに戻しておきました」
 大森:「そうか」
 勇太:「僕はビールでいいです」
 佳子:「私もそれでいいわ」
 篠原:「かしこまりました!」

 メインディッシュは米沢牛のステーキだった。

 宗一郎:「いやあ、料理も美味いし、酒も美味い!おまけに温泉付きと来て、手頃な値段だ。こりゃ、別荘代わりに毎年お世話になりたいくらいだよ」

 宗一郎はワイングラス片手にそう言った。

 大森:「恐れ入ります」
 篠原:「おかわりいかがですかぁ?」
 勇太:「あっ、すいません」

 勇太はグラスにビールを注いでもらった。
 マリアはワイングラスを口に運んでいる。

 佳子:「元気なコね。いくつなの?」
 篠原:「今年、21です。冬休みの間だけ、小久保君とバイトしてるんですよぉ」
 大森:「こら。小久保君の方が年上なんだから、もっと敬語で喋りなさい」
 小久保:「別に、カタいことは気にしてないっスよ」
 大森:「いや、でもねぇ……」

 大森は苦笑していた。
 恐らく、いつものことなのだろう。
 何でも小久保は大学を留年しているそうなので、実質的に勇太と年齢は同じくらいかもしれない。
 もっとも、いかにも文科系といった見た目の勇太に対し、小久保はスラッとした長身の色黒なスポーツ系なので、スキーをやる為にここでバイトしているのかもしれない。
 そんなこんなで夕食は、楽しく終わった。
 最も先に切り上げたのは、あのスーツの男。
 料理やアルコールを早食いするように平らげて、さっさと食堂を出て行ってしまった。
 大森が食後のコーヒーを勧めたが、迷惑そうに手を振って行ってしまったのである。

 勇太:「何だか、犯罪の臭いがするなぁ……」
 宗一郎:「まあ、疑わしきは罰せずというからねぇ……」

 花の女子大生組が宿泊しているトリプルの部屋(実際はツインなのだが、エキストラベッドを1つ増設でき、それで3人部屋にできる)にはテレビが付いているそうで、それで年末特番を見るそうだ。
 “笑ってはいけない”でも見るのだろうか。

 勇太:「マリアさん、また温泉に入りますか?」(斜字は英語で喋っていることを表す)
 マリア:「うーん……。いや、さっき入ったばかりだから、また後ででいい
 宗一郎:「私達の部屋にはテレビが無いからな。しょうがないから、談話コーナーのテレビで紅白でも見るか」
 勇太:「う、うん。(どうせなせ、“笑ってはいけない”を見たいなぁ……)」

[同日19:00.天候:吹雪 ペンション1F談話コーナー]

 勇太達が食堂を出ると、女子大生達が大慌てで階段から駆け下りて来た。

 勇太:「何かあったのかな?」

 するとそのうちの1人、島村真理愛が勇太にいきなり抱きついた。
 ビキッと怒筋を浮かべるマリア。

 勇太:「わあっ?!なに、どうしたの!?」
 大森:「どうかしましたか?」
 本田:「オーナー、大変です!覗きです!覗き!」
 大森:「覗き?」
 島村:「怖かったよぉ……!」
 勇太:「そ、そう?」
 マリア:「勇太カラ離レテ!」

 マリアは島村を勇太から引き離した。

 渋谷:「私は直接見ていないんですけど、窓から私達の部屋を覗き込んでいたヤツがいたそうです。そうでしょ?」
 本田:「そう!そうなんです!私はまだチラ見だったからだけど、たまたま窓の外を見ようとしていたしまむーがガチ見しちゃって!」
 宗一郎:「窓の外からだって!?こんな吹雪なのに!?」
 佳子:「何かの間違いじゃないの?」
 島村:「本当なんです!窓の外に金色の目に、青白い肌をした人が……!」
 大森:「動物か何かを見間違えたんじゃないのか?」
 島村:「動物だったら動物だって分かるよ!あれは絶対、幽霊か何かだって!」
 大森:「いい加減にしなさい、真理愛。客商売なんだから、他のお客さんを怖がらせるようなことは言わないでくれ!」

 マリアは一瞬、自分のことを言われたような気がしてビクッとした。
 宗一郎が真っ先にそれに気づいた。

 宗一郎:「おいおい、大森君。キミこそ、あまり大声を出さないでくれ。うちの娘になるかもしれないお嬢さんがビックリしちゃったじゃないか」
 大森:「も、申し訳ありません!」

 だが、勇太とマリアは宗一郎の意味深なセリフの意味を知って、勇太は照れたように落ち着きを無くし、マリアは俯いてしまった。

 渋谷:「オーナー、部屋を替えてもらうことはできますか?」
 本田:「それも、できればテレビのある部屋がいいです!」
 大森:「あいにくと塞がってまして……」
 島村:「えーっ!?」
 宗一郎:「私達の部屋じゃないところを見ると、あのスーツの人の部屋だろう」
 本田:「うへっ?あのヤバそうな感じの人?麻央っち、ちょっと交渉してきてよ」
 渋谷:「何で私が?私は直接見てないんだから、気にしてないし」

 結局、部屋を替えてもらうことは諦めたようだ。
 カーテンを閉めて、窓の鍵もしっかり掛ければ大丈夫だということになった。

 大森:「何かありましたら、すぐにお知らせください。ドアの横に内線電話がありますから」
 本田:「は〜い」
 渋谷:「ほら、真理愛、行くよ」

 女子大生3人組は階段を上がって行った。

 大森:「きっと、旅の疲れと酔っぱらっていて、幻でも見たんですよ。すいません、姪がお騒がせして……」
 宗一郎:「いや……」
 マリア:(あの霊感の無い女達の前にも現れた……?あの幽霊、何かこれからやろうとしているということか……。明らかに、良からぬことではないな)

 マリアはふと談話コーナーの窓に目をやった。
 するとそこには、2つの光が……!

 マリア:「わっ!?」

 人が集まる談話コーナーにも幽霊が現れた!?

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