[7月17日06:00.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル1Fフロント]
マリアの部屋から、こそこそ出てくる勇太の姿を廊下の防犯カメラがしっかり映していた。
どうやら一晩中、勇太はマリアの部屋で過ごしたようだ。
そして、そそくさと、隣の自分の部屋に戻って行った。
その様子はフロントに設置されたモニタから見ることができるのだが(もちろん、客側からは見ることができない角度にある)、居眠りしていたエレーナはそれに気が付かなかった。
居眠りしていたエレーナが目を覚ましたのは、またもやロビーの公衆電話の着信音が鳴った時だった。
エレーナ:「うぉっと!?」
思わず反射的にフロントの電話を取ろうとしたが、着信音が違うことに気がついた。
エレーナ:「ま、また公衆電話か!?」
エレーナは公衆電話に駆け寄ると、受話器を取った。
エレーナ:「お電話ありがとうございます。ワンスターホテルでございます」
一応、マニュアル通りの挨拶をしておく。
イリーナ:「おっ、やっと繋がった!……じゃなかった!……我々ハ“噂の委員会”ダ」
エレーナ:「いや、もうバレてますよ!?イリーナ先生!」
イリーナ:「あらやだ!エレーナには通用しなかったのかしら?」
エレーナ:「どこから突っ込んでいいのか分かりませんが、うちのリリィも学園生徒ですから、“噂の委員会”のことは聞いています」
イリーナ:「ああ、そうだったわね」
エレーナ:「それで、何ですか?用件は私じゃなくて、稲生氏やマリアンナでしょう?まだ、部屋で寝てるでしょうけど、お急ぎなら呼びますよ?」
イリーナ:「ああ、それは別にいいの」
何故かイリーナは取り留めの無い世間話を始めた。
エレーナはそれを訝しく思った。
イリーナの世間話は30分ほど続いて……。
イリーナ:「……そろそろ大丈夫ね」
エレーナ:「やっぱり、何かありましたか?」
イリーナ:「“呪い針”がアナログ回線しか使えなくて良かったわ」
エレーナ:「えっ?」
そして、電話は切れた。
エレーナ:「一体、何だったんだ?」
エレーナが電話を切ろうとした時だった。
エレーナ:「!?」
受話器のうち、送話口の方が赤く染まっていた。
それはまるで血のようだった。
エレーナ:「!?」
思わず口元を押さえたが、別にエレーナの血ではない。
しかし、確実に血の臭いがした。
エレーナ:「“呪い針”が何かあったのか?」
要は、電話を使った瞬間殺魔法である。
電話口の相手の耳に“呪い針”なる、魔法の針を撃ち込む。
撃ち込まれた耳は爛れてしまう他、耳から脳髄に深く突き刺さって2度と抜けなくなるというものだ。
イリーナと契約違反をしたり、敵対しようとする相手に対し、発動させることがある。
エレーナ:「マリアンナ達に話した方がいいのか……?」
それからしばらくして7時くらいになると、勇太達がエレベーターから降りてきた。
勇太:「おはよう」
エレーナ:「おう、稲生氏。さっき、イリーナ先生から電話があったぜ」
勇太:「先生から!?何だって?」
エレーナ:「いや、特に気になる話は無い」
マリア:「そう言って、また情報料せびる気か?」
マリアは制服ファッションに着替えていた。
エレーナ:「本当にイリーナ先生がそういう話をしてきたら、そうするつもりだったぜ。だけど、本当にただの世間話だったんだ」
勇太:「どういうことなんだ?」
エレーナ:「多分、“呪い針”絡みじゃねーか?」
マリア:「呪い針?!」
勇太:「それって、ドラクエの『ザキ』を電話で唱えてみたって魔法だよね?」
マリア:「身も蓋も無いが、そういうことだ」
エレーナ:「あれは固定電話でしか使えないからな。しかも回線が塞がってると、発動できねぇ。もしかしたら、“呪い針”が制御不能とかになったんじゃねーの?」
勇太:「ええっ!?」
マリア:「それは困る!」
エレーナ:「だからか!うちのリリィ、急に登校命令が出たの!」
今度はリリィがエレベーターから降りてきた。
リリィは学園の制服である臙脂色のセーラーブレザー(上はセーラー服のような特徴的な襟、下はブレザーのような折衷デザイン)を着用し、黒いとんがり帽子に魔道士のローブを羽織っていた。
リリィ:「フヒッ、エレーナ先輩……。学園に行ってきます。聖水ください」
エレーナ:「リリィ、オマエが登校命令下った理由って、“噂の委員会”絡みだろ?」
リリィ:「フヒッ、そうです」
エレーナ:「“呪い針”がどうとか言ってなかったか?」
リリィ:「はい。そのことで、大事な話があるって聞いてます」
マリア:「大事な話って?」
リリィ:「それはこれから聞きます」
リリィはそう言うと、エレーナから聖水をもらい、再びエレベーターに乗って行った。
エレーナ:「魔法が暴走でもしたのかねぇ……」
マリア:「それは困る。ましてや、瞬間殺魔法だぞ」
エレーナ:「なあ」
勇太:「僕達は予定通り、魔界に行っていいんだろうか?」
エレーナ:「それはいいだろう。その事について、特に何も言ってなかったからな。ただ、“噂の委員会”はリリィの学園絡みだ。魔界共和党のことじゃねーから、それだけは言っておくぜ」
勇太:「そうか。学校の中にも、『○○委員会』とかあるもんね」
勇太は納得したように頷いた。
勇太:「“噂の委員会”って、結局何なの?」
エレーナ:「噂も魔法の1つなんだぜ。それについて研究する委員会ってとこかな」
勇太:「そうなの?」
エレーナ:「ガセネタで流された噂を、本当の話にしてしまう魔法とかな」
勇太:「はあ……」
エレーナ:「あとは知り過ぎたヤツを消す粛清部なんてのも、その委員会の中にあるぜ」
勇太:「それが、あの“呪い針”……」
マリア:「師匠の魔法でもある。それより、早いとこ朝食に行こう」
マリアは勇太を引っ張るように、レストランの方に向かった。
マリアの部屋から、こそこそ出てくる勇太の姿を廊下の防犯カメラがしっかり映していた。
どうやら一晩中、勇太はマリアの部屋で過ごしたようだ。
そして、そそくさと、隣の自分の部屋に戻って行った。
その様子はフロントに設置されたモニタから見ることができるのだが(もちろん、客側からは見ることができない角度にある)、居眠りしていたエレーナはそれに気が付かなかった。
居眠りしていたエレーナが目を覚ましたのは、またもやロビーの公衆電話の着信音が鳴った時だった。
エレーナ:「うぉっと!?」
思わず反射的にフロントの電話を取ろうとしたが、着信音が違うことに気がついた。
エレーナ:「ま、また公衆電話か!?」
エレーナは公衆電話に駆け寄ると、受話器を取った。
エレーナ:「お電話ありがとうございます。ワンスターホテルでございます」
一応、マニュアル通りの挨拶をしておく。
イリーナ:「おっ、やっと繋がった!……じゃなかった!……我々ハ“噂の委員会”ダ」
エレーナ:「いや、もうバレてますよ!?イリーナ先生!」
イリーナ:「あらやだ!エレーナには通用しなかったのかしら?」
エレーナ:「どこから突っ込んでいいのか分かりませんが、うちのリリィも学園生徒ですから、“噂の委員会”のことは聞いています」
イリーナ:「ああ、そうだったわね」
エレーナ:「それで、何ですか?用件は私じゃなくて、稲生氏やマリアンナでしょう?まだ、部屋で寝てるでしょうけど、お急ぎなら呼びますよ?」
イリーナ:「ああ、それは別にいいの」
何故かイリーナは取り留めの無い世間話を始めた。
エレーナはそれを訝しく思った。
イリーナの世間話は30分ほど続いて……。
イリーナ:「……そろそろ大丈夫ね」
エレーナ:「やっぱり、何かありましたか?」
イリーナ:「“呪い針”がアナログ回線しか使えなくて良かったわ」
エレーナ:「えっ?」
そして、電話は切れた。
エレーナ:「一体、何だったんだ?」
エレーナが電話を切ろうとした時だった。
エレーナ:「!?」
受話器のうち、送話口の方が赤く染まっていた。
それはまるで血のようだった。
エレーナ:「!?」
思わず口元を押さえたが、別にエレーナの血ではない。
しかし、確実に血の臭いがした。
エレーナ:「“呪い針”が何かあったのか?」
要は、電話を使った瞬間殺魔法である。
電話口の相手の耳に“呪い針”なる、魔法の針を撃ち込む。
撃ち込まれた耳は爛れてしまう他、耳から脳髄に深く突き刺さって2度と抜けなくなるというものだ。
イリーナと契約違反をしたり、敵対しようとする相手に対し、発動させることがある。
エレーナ:「マリアンナ達に話した方がいいのか……?」
それからしばらくして7時くらいになると、勇太達がエレベーターから降りてきた。
勇太:「おはよう」
エレーナ:「おう、稲生氏。さっき、イリーナ先生から電話があったぜ」
勇太:「先生から!?何だって?」
エレーナ:「いや、特に気になる話は無い」
マリア:「そう言って、また情報料せびる気か?」
マリアは制服ファッションに着替えていた。
エレーナ:「本当にイリーナ先生がそういう話をしてきたら、そうするつもりだったぜ。だけど、本当にただの世間話だったんだ」
勇太:「どういうことなんだ?」
エレーナ:「多分、“呪い針”絡みじゃねーか?」
マリア:「呪い針?!」
勇太:「それって、ドラクエの『ザキ』を電話で唱えてみたって魔法だよね?」
マリア:「身も蓋も無いが、そういうことだ」
エレーナ:「あれは固定電話でしか使えないからな。しかも回線が塞がってると、発動できねぇ。もしかしたら、“呪い針”が制御不能とかになったんじゃねーの?」
勇太:「ええっ!?」
マリア:「それは困る!」
エレーナ:「だからか!うちのリリィ、急に登校命令が出たの!」
今度はリリィがエレベーターから降りてきた。
リリィは学園の制服である臙脂色のセーラーブレザー(上はセーラー服のような特徴的な襟、下はブレザーのような折衷デザイン)を着用し、黒いとんがり帽子に魔道士のローブを羽織っていた。
リリィ:「フヒッ、エレーナ先輩……。学園に行ってきます。聖水ください」
エレーナ:「リリィ、オマエが登校命令下った理由って、“噂の委員会”絡みだろ?」
リリィ:「フヒッ、そうです」
エレーナ:「“呪い針”がどうとか言ってなかったか?」
リリィ:「はい。そのことで、大事な話があるって聞いてます」
マリア:「大事な話って?」
リリィ:「それはこれから聞きます」
リリィはそう言うと、エレーナから聖水をもらい、再びエレベーターに乗って行った。
エレーナ:「魔法が暴走でもしたのかねぇ……」
マリア:「それは困る。ましてや、瞬間殺魔法だぞ」
エレーナ:「なあ」
勇太:「僕達は予定通り、魔界に行っていいんだろうか?」
エレーナ:「それはいいだろう。その事について、特に何も言ってなかったからな。ただ、“噂の委員会”はリリィの学園絡みだ。魔界共和党のことじゃねーから、それだけは言っておくぜ」
勇太:「そうか。学校の中にも、『○○委員会』とかあるもんね」
勇太は納得したように頷いた。
勇太:「“噂の委員会”って、結局何なの?」
エレーナ:「噂も魔法の1つなんだぜ。それについて研究する委員会ってとこかな」
勇太:「そうなの?」
エレーナ:「ガセネタで流された噂を、本当の話にしてしまう魔法とかな」
勇太:「はあ……」
エレーナ:「あとは知り過ぎたヤツを消す粛清部なんてのも、その委員会の中にあるぜ」
勇太:「それが、あの“呪い針”……」
マリア:「師匠の魔法でもある。それより、早いとこ朝食に行こう」
マリアは勇太を引っ張るように、レストランの方に向かった。
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