報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“魔女エレーナの日常” 「“私立探偵 愛原学”ではありません」

2020-01-30 16:13:56 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月28日07:00.天候:雨 東京都江東区森下 ワンスターホテル]

 鈴木:「おはよう……」

 エレベーターから欠伸をして鈴木が出てきた。

 エレーナ:「何だか眠そうだな」
 鈴木:「ここだとついつい深く寝入るからな、起きるのが大変だ」
 エレーナ:「オマエんち、どんだけ寝にくい所なんだよ……」

 エレーナは飽きれた。

 鈴木:「リリィは?」
 エレーナ:「まだ寝てる。魔界との時差ボケで眠いんだろ。寝かせといてやるさ。どうせ私も、今日は夜勤明けだ」
 鈴木:「ホテル業務は大変だな。俺は朝飯食ってくるよ」
 エレーナ:「行ってらっさー」

 鈴木がホテル1Fにテナントとして入居しているレストランに向かうと……。

 リリアンヌ:「エレーナ先輩、おはようございます……」

 入れ違うようにしてエレベーターからリリィが降りてきた。

 エレーナ:「オマエも起きたか」
 リリアンヌ:「私……も?」
 エレーナ:「さっき鈴木が来て、レストランに向かったぜ?」
 リリアンヌ:「そ、そうですか」
 エレーナ:「今行けば、朝飯代も奢ってもらえるかもな?」
 リリアンヌ:「フヒッ!?功徳~~~~~~~!!」
 エレーナ:「変な日本語使うんじゃねーぜ」
 リリアンヌ:「行ってきまーす……」
 エレーナ:「ああ、せいぜいタカって来い」

 リリィもレストランに向かう。
 普段は創作料理レストランだが、モーニングだけは普通のバイキング。
 但し、創作料理に使う食材の余りを使ったものが出てくることもある。

 エレーナ:(今日は雨か。今日は部屋で引きこもりデーだな)

 と、そこへエントランスのドアが開けられた。

 エレーナ:「いらっしゃいませー」
 男:「…………」
 エレーナ:「……!」

 エレーナが警戒心を持ったのは、入って来た男がマフィア風の恰好をしていたからだ。
 強いて言うなら、見た目が完全にゴッドファーザー。
 どこからともなくトンプソンをブチかまして来そうな……。

 エレーナ:(ま、まさか私が潰したニューヨークマフィアの生き残り!?)

 エレーナは急いでカウンターの下に隠していた魔法の杖を取った。
 ゴッドファーザー的な男も、着ていた黒いトレンチコートの中から何かを取り出す。

 男:「金髪の魔女……。確かに特徴は合っている……」
 エレーナ:「お、お客様、何か御用でしょうか?」

 エレーナは魔法の杖を背中に隠した。
 どうやら男は外国人のようで、先ほど英語を呟いた。

 エレーナ:(パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ……)

 そして心の中で呪文を唱える。
 いつでも攻撃魔法を放つ為だ。

 男:「まず……私は宿泊客ではありません」
 エレーナ:(見りゃ分かる!)

 物言いは丁寧だが、ヤクザもマフィアもスーツ組は往々にして物言いは丁寧なものである。

 男:「実は人を捜してまして……。それがあなたかもしれないのです」
 エレーナ:「どちら様ですか?ニューヨークからお越しのアダムス御一家様でしたら、違った意味で歓迎致しますよ?」
 男:「いえ、違います。私は世界探偵協会イギリス支部から派遣されたエージェントです」
 エレーナ:「探偵さん?」
 男改め探偵:「はい」
 エレーナ:「あの、失礼ですが、恐らく出演作品を間違えてらっしゃるかと……。バイオハザードは今のところ、武漢でしか起きてませんよ?」
 探偵:「いえ、大丈夫です。私は『金髪の魔女』を捜して来日した者ですので」
 エレーナ:「イギリスからお越しなんですか?」
 探偵:「ええ」
 エレーナ:(通りで喋る英語が、うちの先生やマリアンナみたいな感じだと思ったぜ)
 探偵:「イギリス人の魔女を捜しています。あなた自身は如何でしょうか?」
 エレーナ:「私はウクライナ人です。あいにくですけど」
 探偵:「そうですか。あなたのお知り合いで、イギリス人の魔女はいらっしゃいますか?」
 エレーナ:「何人かいますけど、それ以上は個人情報なので言えませんね」
 探偵:「そうですか。実は私が捜しているのは、この魔女です」

 探偵は1枚の写真を差し出した。

 エレーナ:「……!」

 エレーナはその写真に見覚えがあった。
 というか、見覚えがあり過ぎるくらいだ。
 その表情を探偵は目ざとく見つけた。

 探偵:「どうやらお知り合いにいらっしゃるようですね。それとも、あなた自身がその姿を仮の姿としている。あるいはそれが正体で、この写真の魔女が仮の姿だったとか?」
 エレーナ:「何のことでしょう?私はこの姿が素ですよ。だから、その写真の人物とは全く関係ありません」
 探偵:「詳しく教えて頂けましたら、報奨金をお約束しましょう」
 エレーナ:「都合良く日本の札束でもお持ちなんですか?」
 探偵:「いえ、あいにくと現金はそんなに持ち歩かない主義です。やはり嵩張りますので」
 エレーナ:「小切手1枚寄越されたくらいでは、魔女は動きませんよ?」
 探偵:「ええ、分かっています。他国で調査した時もそうでした」

 探偵は手持ちの鞄をカウンターの上に置くと、バッグを開けた。

 探偵:「魔法具の材料としても完璧。金貨です」
 エレーナ:「ファッ!?」
 探偵:「現在、世界各地で金の相場が上がっていることは御存知だと思います。そこで報酬はこの金貨でいかがでしょうか?」

 探偵は金貨をまるでカジノの勝負師のように積み上げた。

 エレーナ:「……何から知りたいですか?」

 エレーナ!?
 守銭奴魔女の異名を持つ彼女だが、ついに金貨で同門の士を売るのか!?

 鈴木:「ヤベェ、ヤベェ。財布忘れちまったよー」

 そこへ鈴木、慌ててレストランから出てくる。

 鈴木:「やあ、エレーナ。危うくレストランで無銭飲食する所だったよ」
 エレーナ:「オマエ、そんなに死にたいか?」
 鈴木:「いやはや……。ん?なに、この金貨?あれ、マリアさんの写真だ。どうしたの?」
 探偵:「kwsk!この金貨はこちらの方に……」
 エレーナ:「って、おおーい!?」

 報酬横取り野郎の鈴木。
 功徳も何気に横取りする者がいるので、信仰者は注意だ。

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