報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Sisters” 「罠」

2017-06-22 16:45:47 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月6月15:00.天候:晴 北海道オホーツク総合振興局東部 廃洋館地下]

 重い鉄扉を開けると、更に地下へ続く階段があった。
 それは真っ暗な所であり、エミリーが左目のサーチライトを点灯して敷島達を先導した。
 その途中にも白骨化した死体が累々と転がっている。
 どれもKR団の構成員だった者達だ。
 敷島はその構成員たる人間達と殆ど遭遇していないが、既に多くが国外逃亡したり、こうやって死に至っていたのだろう。
 問題は、国外逃亡できた者とここで死んだ者の差についてだ。

 敷島:「!」

 敷島はそこで1人の構成員が持っていた銃を手にした。

 敷島:「この銃、まだ新しいな。マシンガンだと思うが、使えるか?」
 エミリー:「試してみます」

 弾は入っていなかったが、バージョン4.0から頂戴したものがある。
 これに装弾し、壁に向かって発砲するエミリー。
 まるで昔の足踏み式ミシンのような音を立てて、マシンガン弾は壁に着弾した。

 エミリー:「問題無く使えるようです」
 敷島:「よし。これはエミリーが持っててくれ」

 途中にライフルも落ちていたが、エミリーは遠距離からの狙撃が苦手である為(シンディは得意)、これは置いて行った。

 敷島:「なあ?思ったんだが、本当にこんな所にマルチタイプ試作機が隠されているのかな?」
 エミリー:「と、仰いますと?」
 敷島:「俺も平賀先生も、まさかこんな所にKR団のアジトがあるなんて思わなかったよ。ましてや、もうシステムだけが稼働している無人のアジトだ。俺は何だか違う気がするんだよなぁ……」
 エミリー:「分かりました。呼び掛けてみます」

 エミリーは右手をスウッと上に挙げ、目を閉じた。

 エミリー:「……送信はしましたが、返信がありません」
 敷島:「やはりな。シンディからの返信は?」
 エミリー:「これも無いです」
 敷島:「シンディのヤツ、一体何やってるんだろうなぁ?」

 敷島は少し苛立った様子で、自分のスマホを取り出した。
 スマホは相変わらず圏外のままになっていた。

 敷島:「うーん……」

 敷島は首を傾げた。

 エミリー:「どうしますか?」
 敷島:「しょうがない。平賀先生を見つけたら、一旦引き上げよう。さすがに予想外のことが多過ぎる。あとはもう、鷲田警視達に任せた方がいいかもしれない」
 エミリー:「分かりました」
 敷島:「KR団が関わっていることは予想できたけど、まさかこんなちゃんとしたアジトを抱えていたとはな……」
 エミリー:「そうですね」
 敷島:「さすがにもう、ほとんど打ち捨てられている状態とはいえ、殺傷能力のあるセキュリティシステムが……」

 その時、エミリーは何かを見つけた。

 エミリー:「敷島さん!」

 エミリーが敷島を後ろから抱き抱えるのと、敷島がワイヤーを足に引っ掛けたのは同時だった。

 敷島:「うわっ!?」

 ワイヤーを引き抜くと、そこからビームライフルが飛んで来る仕掛けが施されていた。
 このまま進んでいたら、【お察しください】。

 敷島:「あっぶねぇな!」
 エミリー:「ワイヤートラップです」
 敷島:「くそっ!通りで、ここにはロボットがいないわけだ!ヘタに先に行くと、何があるか分かったもんじゃないな」
 エミリー:「そうですね。私の後ろをついてきてください」
 敷島:「ああ、そうさせてもらう」

 因みにビームライフルが一定間隔で飛んで来ていたが、そこはエミリーが手に入れたマシンガンを撃ち込んで破壊した。
 それは途中に何ヶ所かあったが、すぐにエミリーが見つけ、マシンガンで装置ごと破壊した。

 敷島:「エミリーがいるとチートだな」
 エミリー:「お役に立てて何よりです」

 ドアを開けると、今度は板張りの壁があった。
 干からびた干し草などがある所を見ると、恐らく家畜小屋を偽装していたのだろう。
 ここは北海道だから、別荘の他に農場としても偽装ネタにしていたのかもしれない。
 で、ここにも死体があった。

 敷島:「くっ……酷い臭いだ」

 それは腐乱死体だった。
 嗅覚の無いロイド達には何でも無いだろう。

 エミリー:「他の死体と比べて新しいということですね」

 エミリーが木製のドアを開けると、確かにそこに死体があった。
 農機具が置いてある所を見ると、やはり農場としても偽装していたのだろう。
 だがこの死体、変な死体だった。
 RPGのミミック(宝箱に化けたモンスター)を地味にしたような木箱の中に上半身を突っ込ませ、その上から蓋をされて、下半身だけを外に出した死に方をしていた。
 まるで、本当にミミックに食われたかのようである。
 エミリーが近づいて、その木箱を開けた。
 さすがの敷島も、その無残な死体を直視はできなかった。
 エミリーが冷静にそれを調べる。

 エミリー:「どうやら、本当にミミックに食い殺されたようです」
 敷島:「マジかよ!?」

 エミリーが原型の無くなった上半身をした死体を退けた。
 木箱の中はミミックの牙代わりに、丸鋸の形をしたチェーンソーがいくつも仕掛けられていた。

 エミリー:「不用意に開けると、本当に開けた人間を食い殺すミミックのロボットを造ったようですね」
 敷島:「マジかよ!?萌といい、意外とファンタジーもの造るの好きなテロ組織だな!」
 エミリー:「TDRやUSJに売り込めば、いい商売でしたでしょうに」
 敷島:「この権利、俺が頂いてやってみるか!?……あ、もちろん、殺傷能力が無い程度で」
 エミリー:「そうですね。その為にも、平賀博士を救出してここから脱出しませんと」
 敷島:「そうだな。よし、分かった。じゃ、この先はミミックに注意ということだな。随分と地味なミミックだが」

 RPGの宝箱が派手なだけかもしれない。
 因みに敷島とエミリーがやり取りしている間、ミクは下半身だけとなった死体を調べていたようだ。

 ミク:「たかおさん、この人、KR団の人じゃないみたいです」
 敷島:「誰だ?」
 ミク:「これを……」

 ミクは死体のポケットから取り出したパスケースを敷島に渡した。

 敷島:「DSS?……はっ!デイライト・セキュリティ・サービスか!?」

 デイライト・コーポレーション直営の警備会社である。
 但し、日本の警備会社とはかなりその色が違う。
 アメリカ本体直営なだけに、数々のシークレットサービスも行う。
 イリノイ州のデイライト研究所で戦った時も、DSSが敷島達の前に現れていた。

 敷島:「ここにDSSがいるのか!?」
 エミリー:「死体はかなり腐乱していますから、ここに来てからだいぶ時間は経ってはいるでしょうね」
 敷島:「デイライト本体も嗅ぎ付けて来たのか。だとしたら、どうして日本側に任せない?日本のデイライトが手に入れたところで……」
 エミリー:「それだけ日本側が独立しようと画策しているので、もはや信用できないのでしょうね」
 敷島:「それじゃ、平賀先生を浚ったのは……!?」
 エミリー:「デイライト・コーポレーション・インターナショナル……ですかね」
 敷島:「デイライトさん同士のケンカに巻き込まれたんじゃ、世話ねぇぞ!」

 因みに平賀は、デイライト・コーポレーション・ジャパンの外部役員という顔も持っている(本業は大学教授な為)。

 敷島:「全くもう!」
 エミリー:「あっ、敷島さん!先に行かないでください!」

 エミリーが止める間も無く、敷島は次の通路へ続くドアを開けた。

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