[11月1日06:30.天候:雨 長野県白馬村 白馬八方バスターミナル]
雨が降っているせいか、まだ薄暗いバスターミナルの前に1台の車が到着する。
稲生:「着きましたよ」
助手席から稲生が降りる。
マリア:「師匠、朝早いからって寝ないでください。寝るならバスの中で」
イリーナ:「年々朝の早さが身に堪える……」
マリア:「ユウタなんかもっと早く起きて御経唱えてたんですよ」
稲生:(マリアさんと旅行なんて久しぶりだから、眠れなくて丑寅勤行やってたなんて言えないな……)
イリーナを車から引きずり降ろすのはマリアに任せ、稲生は車から荷物を降ろす方をやった。
稲生:「バスが来るまで少し時間がありますから、中で休んでましょう」
マリア:「そうしよう」
バスターミナルと言っても、そこは観光案内所も兼ねた建物。
大規模なものではない。
アメリカの最大手長距離バス会社、グレイハウンドバスに言わせれば、『バス・ディーポ』となるのではないだろうか。
『高速バス乗換え駐車場はありません』『特急バス長野行のご利用には「サンサンパーク白馬」の駐車場・バス停をご利用ください』
待合室の中に貼られていた貼り紙、今でもあるかもしれない。
え?何の意味があるのかって?はっはっはっ、何でそんなこと聞くんだい?
マリア:「今、何か変なキモい笑い声がしたような……?」
稲生:「? 僕には聞こえませんでしたが……」
イリーナ:「…………」(←既に半分寝ている)
マリア:「私も寝ぼけてるのかな?」
稲生:「すいません。もっと遅い便にした方が良かったですかね」
マリア:「旅行の行程は基本、ユウタに全て任せることになっているんだから、別に文句は無いけどね。たまに夜行便に乗ることもあるのに、東京に行く時は乗らないんだな」
稲生:「アルピコ交通も“ムーンライト信州”も、夜行便は下りだけなんですよ」
マリア:「ふーん……」
稲生:「下りだけ夜行っていう例は、他にもあるんですよ。東武浅草駅からの“スノーパル”とか“尾瀬夜行”とか……」
イリーナ:「まあ、向こうで遊んで、帰るタイミングはてんでバラバラだからってことかねぇ……」
マリア:「師匠、起きてたんですか」
起きているのか寝ているのか分からない、正に年寄りだとマリアは思ったそうな。
[同日07:00.天候:雨 アルピコ交通“白馬・安曇野〜新宿線”バス車内]
係員:「はい、お待たせしましたー。7時ちょうど発車の新宿行きでーす!」
バスがターミナルの前に横付けされた。
稲生:「すいません、荷物お願いします」
係員:「はい」
さしものマリアの人形達も、荷物室の中に……。
マリア:「こら、バッグの中に入ってろ」
ミク人形:「てへぺろ」
ハク人形:「てへぺろ」
……入っているわけが無かった。
運転手:「えー、稲生様。9のBです」
稲生:「はい」
運転手:「マリアンナ様。9のAです」
マリア:「OK.」
運転手:「イリーナ様。8のAです」
イリーナ:「Да.」
バスに乗り込んで……。
稲生:「お2人さん、もしかして自動翻訳魔法切れてません?」
マリア:「Oh.(あれ?)」
イリーナ:「……あ、本当だ。このバス、Wi-Fi入ってるみたいだから、1度切れたみたい」
稲生:(自動翻訳魔法の原理、見たり!)
4列シートながら、長距離バスの為にトイレは付いているし、シートピッチも通常タイプより広めになっている。
この時点では、まだ乗客は少ない。
バスが走り出すと、座席の小さなテーブルを出して朝食を広げた。
といっても、途中のコンビニで買って来たサンドイッチやお握りである。
飲み物はターミナルの自動販売機で買った。
稲生:「それにしても、せっかくの旅行なのに雨とは……」
後ろの席から前の方を覗くと、大きなフロントガラスの上を大きなワイパーが規則正しく動いているのが見えた。
マリア:「台風が来てるんだろう?それまでに、先に上京するというタイミングはいいと思う」
稲生:「まあ、偶然ですけどね」
稲生は自分のスマホを出した。
稲生:「台風23号。こっちへしっかり向かって来てますね」
マリア:「師匠が相変わらずのほほんとしてるから、私達に影響は無いのだろう」
イリーナ:「ふふっ、それはどうかしら?」( ̄▽ ̄)
マリア:「どういう意味ですか?」
イリーナ:「暴風でマリアのスカートが捲れてユウタ君大喜びという予知が出てるわよ」(・∀・)
稲生:Σ( ̄□ ̄|||)
マリア:「変な予言しないでください!」ヽ(`Д´)ノ
稲生:「と、取りあえず今、風はそんなに強くないみたいですね。むしろ、雨」
[同日08:45.天候:雨 長野県安曇野市 長野自動車道上り梓川サービスエリア]
雨のサービスエリアに稲生達を乗せたバスが到着する。
大型車スペースでも、バス専用に止められるのは特権だ。
〔「梓川サービスエリアです。15分ほど休憩致します。発車は9時ちょうどです」〕
稲生:「降りてみましょうか」
マリア:「うん」
いつもは一緒に降りてくる人形達も、外が雨のせいか……。
稲生:「……あ、うん。分かった。買って来る」
荷棚から曲芸のようにぶら下がると、首から下げた小銭入れから500円玉を出した。
カップアイスを買ってくるように、とのことだ。
屋敷内での立場は、実はメイド人形より低い稲生だったりする。
中にはダニエラのように、自ら率先して稲生専属メイドをやってくれる者もいるのだが。
稲生:「それにしても降りますねぇ……」
バッと傘を差す稲生。
マリアはローブを羽織ってフードを被っているので、傘は差していない。
これだけで魔法の効果があるローブは、完全防水になっているというわけである。
が、さり気なく相合傘をする稲生だった。
この場合、稲生の方が身長が高い為、自然体勢である。
そう、これが自然体勢なんだよ。くそっ!
……あ、いや、失礼。コホン。
マリア:「まだ風は吹いていないな。よし。トイレに行ったら、私もちょっと買い物する」
稲生:「そうですか」
このサービスエリアにはコンビニが併設されている。
稲生は人形達に頼まれたお使いをしに行くつもりであったが……。
[同日09:00.天候:雨 アルピコ交通バス車内]
〔「それでは出発致します。再びのお願いですが、シートベルトの着用にご協力お願い致します。次の休憩箇所は、双葉サービスエリアです」〕
バスは雨の高速道路を進んだ。
イリーナは相変わらず寝ている。
ミク人形:「おいしーね」
ハク人形:「おいしーね」
荷棚に腰掛けてカップアイスを食べる人形2体。
稲生:「マリアさん、何を買ったんですか?」
マリア:「まあ、色々……」
稲生:「ん?」
色々買ったようだが、その中にストッキングが入っていたことはお伝えしておこう。
雨が降っているせいか、まだ薄暗いバスターミナルの前に1台の車が到着する。
稲生:「着きましたよ」
助手席から稲生が降りる。
マリア:「師匠、朝早いからって寝ないでください。寝るならバスの中で」
イリーナ:「年々朝の早さが身に堪える……」
マリア:「ユウタなんかもっと早く起きて御経唱えてたんですよ」
稲生:(マリアさんと旅行なんて久しぶりだから、眠れなくて丑寅勤行やってたなんて言えないな……)
イリーナを車から引きずり降ろすのはマリアに任せ、稲生は車から荷物を降ろす方をやった。
稲生:「バスが来るまで少し時間がありますから、中で休んでましょう」
マリア:「そうしよう」
バスターミナルと言っても、そこは観光案内所も兼ねた建物。
大規模なものではない。
アメリカの最大手長距離バス会社、グレイハウンドバスに言わせれば、『バス・ディーポ』となるのではないだろうか。
『高速バス乗換え駐車場はありません』『特急バス長野行のご利用には「サンサンパーク白馬」の駐車場・バス停をご利用ください』
待合室の中に貼られていた貼り紙、今でもあるかもしれない。
え?何の意味があるのかって?はっはっはっ、何でそんなこと聞くんだい?
マリア:「今、何か変なキモい笑い声がしたような……?」
稲生:「? 僕には聞こえませんでしたが……」
イリーナ:「…………」(←既に半分寝ている)
マリア:「私も寝ぼけてるのかな?」
稲生:「すいません。もっと遅い便にした方が良かったですかね」
マリア:「旅行の行程は基本、ユウタに全て任せることになっているんだから、別に文句は無いけどね。たまに夜行便に乗ることもあるのに、東京に行く時は乗らないんだな」
稲生:「アルピコ交通も“ムーンライト信州”も、夜行便は下りだけなんですよ」
マリア:「ふーん……」
稲生:「下りだけ夜行っていう例は、他にもあるんですよ。東武浅草駅からの“スノーパル”とか“尾瀬夜行”とか……」
イリーナ:「まあ、向こうで遊んで、帰るタイミングはてんでバラバラだからってことかねぇ……」
マリア:「師匠、起きてたんですか」
起きているのか寝ているのか分からない、正に年寄りだとマリアは思ったそうな。
[同日07:00.天候:雨 アルピコ交通“白馬・安曇野〜新宿線”バス車内]
係員:「はい、お待たせしましたー。7時ちょうど発車の新宿行きでーす!」
バスがターミナルの前に横付けされた。
稲生:「すいません、荷物お願いします」
係員:「はい」
さしものマリアの人形達も、荷物室の中に……。
マリア:「こら、バッグの中に入ってろ」
ミク人形:「てへぺろ」
ハク人形:「てへぺろ」
……入っているわけが無かった。
運転手:「えー、稲生様。9のBです」
稲生:「はい」
運転手:「マリアンナ様。9のAです」
マリア:「OK.」
運転手:「イリーナ様。8のAです」
イリーナ:「Да.」
バスに乗り込んで……。
稲生:「お2人さん、もしかして自動翻訳魔法切れてません?」
マリア:「Oh.(あれ?)」
イリーナ:「……あ、本当だ。このバス、Wi-Fi入ってるみたいだから、1度切れたみたい」
稲生:(自動翻訳魔法の原理、見たり!)
4列シートながら、長距離バスの為にトイレは付いているし、シートピッチも通常タイプより広めになっている。
この時点では、まだ乗客は少ない。
バスが走り出すと、座席の小さなテーブルを出して朝食を広げた。
といっても、途中のコンビニで買って来たサンドイッチやお握りである。
飲み物はターミナルの自動販売機で買った。
稲生:「それにしても、せっかくの旅行なのに雨とは……」
後ろの席から前の方を覗くと、大きなフロントガラスの上を大きなワイパーが規則正しく動いているのが見えた。
マリア:「台風が来てるんだろう?それまでに、先に上京するというタイミングはいいと思う」
稲生:「まあ、偶然ですけどね」
稲生は自分のスマホを出した。
稲生:「台風23号。こっちへしっかり向かって来てますね」
マリア:「師匠が相変わらずのほほんとしてるから、私達に影響は無いのだろう」
イリーナ:「ふふっ、それはどうかしら?」( ̄▽ ̄)
マリア:「どういう意味ですか?」
イリーナ:「暴風でマリアのスカートが捲れてユウタ君大喜びという予知が出てるわよ」(・∀・)
稲生:Σ( ̄□ ̄|||)
マリア:「変な予言しないでください!」ヽ(`Д´)ノ
稲生:「と、取りあえず今、風はそんなに強くないみたいですね。むしろ、雨」
[同日08:45.天候:雨 長野県安曇野市 長野自動車道上り梓川サービスエリア]
雨のサービスエリアに稲生達を乗せたバスが到着する。
大型車スペースでも、バス専用に止められるのは特権だ。
〔「梓川サービスエリアです。15分ほど休憩致します。発車は9時ちょうどです」〕
稲生:「降りてみましょうか」
マリア:「うん」
いつもは一緒に降りてくる人形達も、外が雨のせいか……。
稲生:「……あ、うん。分かった。買って来る」
荷棚から曲芸のようにぶら下がると、首から下げた小銭入れから500円玉を出した。
カップアイスを買ってくるように、とのことだ。
屋敷内での立場は、実はメイド人形より低い稲生だったりする。
中にはダニエラのように、自ら率先して稲生専属メイドをやってくれる者もいるのだが。
稲生:「それにしても降りますねぇ……」
バッと傘を差す稲生。
マリアはローブを羽織ってフードを被っているので、傘は差していない。
これだけで魔法の効果があるローブは、完全防水になっているというわけである。
が、さり気なく相合傘をする稲生だった。
この場合、稲生の方が身長が高い為、自然体勢である。
そう、これが自然体勢なんだよ。くそっ!
……あ、いや、失礼。コホン。
マリア:「まだ風は吹いていないな。よし。トイレに行ったら、私もちょっと買い物する」
稲生:「そうですか」
このサービスエリアにはコンビニが併設されている。
稲生は人形達に頼まれたお使いをしに行くつもりであったが……。
[同日09:00.天候:雨 アルピコ交通バス車内]
〔「それでは出発致します。再びのお願いですが、シートベルトの着用にご協力お願い致します。次の休憩箇所は、双葉サービスエリアです」〕
バスは雨の高速道路を進んだ。
イリーナは相変わらず寝ている。
ミク人形:「おいしーね」
ハク人形:「おいしーね」
荷棚に腰掛けてカップアイスを食べる人形2体。
稲生:「マリアさん、何を買ったんですか?」
マリア:「まあ、色々……」
稲生:「ん?」
色々買ったようだが、その中にストッキングが入っていたことはお伝えしておこう。
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