報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「バスの旅、鉄の旅」

2017-11-02 10:23:01 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月1日06:30.天候:雨 長野県白馬村 白馬八方バスターミナル]

 雨が降っているせいか、まだ薄暗いバスターミナルの前に1台の車が到着する。

 稲生:「着きましたよ」

 助手席から稲生が降りる。

 マリア:「師匠、朝早いからって寝ないでください。寝るならバスの中で」
 イリーナ:「年々朝の早さが身に堪える……」
 マリア:「ユウタなんかもっと早く起きて御経唱えてたんですよ」
 稲生:(マリアさんと旅行なんて久しぶりだから、眠れなくて丑寅勤行やってたなんて言えないな……)

 イリーナを車から引きずり降ろすのはマリアに任せ、稲生は車から荷物を降ろす方をやった。

 稲生:「バスが来るまで少し時間がありますから、中で休んでましょう」
 マリア:「そうしよう」

 バスターミナルと言っても、そこは観光案内所も兼ねた建物。
 大規模なものではない。
 アメリカの最大手長距離バス会社、グレイハウンドバスに言わせれば、『バス・ディーポ』となるのではないだろうか。

 『高速バス乗換え駐車場はありません』『特急バス長野行のご利用には「サンサンパーク白馬」の駐車場・バス停をご利用ください』

 待合室の中に貼られていた貼り紙、今でもあるかもしれない。
 え?何の意味があるのかって?はっはっはっ、何でそんなこと聞くんだい?

 マリア:「今、何か変なキモい笑い声がしたような……?」
 稲生:「? 僕には聞こえませんでしたが……」
 イリーナ:「…………」(←既に半分寝ている)
 マリア:「私も寝ぼけてるのかな?」
 稲生:「すいません。もっと遅い便にした方が良かったですかね」
 マリア:「旅行の行程は基本、ユウタに全て任せることになっているんだから、別に文句は無いけどね。たまに夜行便に乗ることもあるのに、東京に行く時は乗らないんだな」
 稲生:「アルピコ交通も“ムーンライト信州”も、夜行便は下りだけなんですよ」
 マリア:「ふーん……」
 稲生:「下りだけ夜行っていう例は、他にもあるんですよ。東武浅草駅からの“スノーパル”とか“尾瀬夜行”とか……」
 イリーナ:「まあ、向こうで遊んで、帰るタイミングはてんでバラバラだからってことかねぇ……」
 マリア:「師匠、起きてたんですか」

 起きているのか寝ているのか分からない、正に年寄りだとマリアは思ったそうな。

[同日07:00.天候:雨 アルピコ交通“白馬・安曇野〜新宿線”バス車内]

 係員:「はい、お待たせしましたー。7時ちょうど発車の新宿行きでーす!」

 バスがターミナルの前に横付けされた。

 稲生:「すいません、荷物お願いします」
 係員:「はい」

 さしものマリアの人形達も、荷物室の中に……。

 マリア:「こら、バッグの中に入ってろ」
 ミク人形:「てへぺろ」
 ハク人形:「てへぺろ」

 ……入っているわけが無かった。

 運転手:「えー、稲生様。9のBです」
 稲生:「はい」
 運転手:「マリアンナ様。9のAです」
 マリア:「OK.」
 運転手:「イリーナ様。8のAです」
 イリーナ:「Да.」

 バスに乗り込んで……。

 稲生:「お2人さん、もしかして自動翻訳魔法切れてません?」
 マリア:「Oh.(あれ?)」
 イリーナ:「……あ、本当だ。このバス、Wi-Fi入ってるみたいだから、1度切れたみたい」
 稲生:(自動翻訳魔法の原理、見たり!)

 4列シートながら、長距離バスの為にトイレは付いているし、シートピッチも通常タイプより広めになっている。
 この時点では、まだ乗客は少ない。
 バスが走り出すと、座席の小さなテーブルを出して朝食を広げた。
 といっても、途中のコンビニで買って来たサンドイッチやお握りである。
 飲み物はターミナルの自動販売機で買った。

 稲生:「それにしても、せっかくの旅行なのに雨とは……」

 後ろの席から前の方を覗くと、大きなフロントガラスの上を大きなワイパーが規則正しく動いているのが見えた。

 マリア:「台風が来てるんだろう?それまでに、先に上京するというタイミングはいいと思う」
 稲生:「まあ、偶然ですけどね」

 稲生は自分のスマホを出した。

 稲生:「台風23号。こっちへしっかり向かって来てますね」
 マリア:「師匠が相変わらずのほほんとしてるから、私達に影響は無いのだろう」
 イリーナ:「ふふっ、それはどうかしら?」( ̄▽ ̄)
 マリア:「どういう意味ですか?」
 イリーナ:「暴風でマリアのスカートが捲れてユウタ君大喜びという予知が出てるわよ」(・∀・)
 稲生:Σ( ̄□ ̄|||)
 マリア:「変な予言しないでください!」ヽ(`Д´)ノ
 稲生:「と、取りあえず今、風はそんなに強くないみたいですね。むしろ、雨」

[同日08:45.天候:雨 長野県安曇野市 長野自動車道上り梓川サービスエリア]

 雨のサービスエリアに稲生達を乗せたバスが到着する。
 大型車スペースでも、バス専用に止められるのは特権だ。

〔「梓川サービスエリアです。15分ほど休憩致します。発車は9時ちょうどです」〕

 稲生:「降りてみましょうか」
 マリア:「うん」

 いつもは一緒に降りてくる人形達も、外が雨のせいか……。

 稲生:「……あ、うん。分かった。買って来る」

 荷棚から曲芸のようにぶら下がると、首から下げた小銭入れから500円玉を出した。
 カップアイスを買ってくるように、とのことだ。
 屋敷内での立場は、実はメイド人形より低い稲生だったりする。
 中にはダニエラのように、自ら率先して稲生専属メイドをやってくれる者もいるのだが。

 稲生:「それにしても降りますねぇ……」

 バッと傘を差す稲生。
 マリアはローブを羽織ってフードを被っているので、傘は差していない。
 これだけで魔法の効果があるローブは、完全防水になっているというわけである。
 が、さり気なく相合傘をする稲生だった。
 この場合、稲生の方が身長が高い為、自然体勢である。
 そう、これが自然体勢なんだよ。くそっ!
 ……あ、いや、失礼。コホン。

 マリア:「まだ風は吹いていないな。よし。トイレに行ったら、私もちょっと買い物する」
 稲生:「そうですか」

 このサービスエリアにはコンビニが併設されている。
 稲生は人形達に頼まれたお使いをしに行くつもりであったが……。

[同日09:00.天候:雨 アルピコ交通バス車内]

〔「それでは出発致します。再びのお願いですが、シートベルトの着用にご協力お願い致します。次の休憩箇所は、双葉サービスエリアです」〕

 バスは雨の高速道路を進んだ。
 イリーナは相変わらず寝ている。

 ミク人形:「おいしーね」
 ハク人形:「おいしーね」

 荷棚に腰掛けてカップアイスを食べる人形2体。

 稲生:「マリアさん、何を買ったんですか?」
 マリア:「まあ、色々……」
 稲生:「ん?」

 色々買ったようだが、その中にストッキングが入っていたことはお伝えしておこう。

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