[2月11日12時30分 天候:曇 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階ダイニング]
学校から戻ったリサは、お昼にパールが作ったチャーシュー麺を食べながら、私に調査結果を報告した。
ラーメンはスーパーで買って来た袋麺である。
愛原「坂上先生の親父さん、アンブレラの社員だったのか……。営業マンだけど」
これは偶然だろうか。
学校へ行きたがるリサを東京中央学園に入れたデイライトは……。
今はもう卒業してしまったが、中等部の方にも何かあったのかもしれない。
それとも、高等部への調査の布石だったか。
私はメールで、善場主任に報告した。
それと、気になることがあるので、電話しても良いかどうかを確認した。
するとOKとのことで、私は善場主任に電話を掛けた。
善場「善場です」
愛原「善場主任、愛原です。お休みのところ、申し訳ありません」
善場「バイオテロに関することでしたら、年中無休ですから構いませんよ」
愛原「バイオテロというか……。リサが東京中央学園に入ったのって、デイライトさんの思惑ですよね?」
善場「そうですよ。今さら隠し立てするつもりはございません。所長は覚えておいでですか?リサの入学先の候補に、聖クラリス女学館もあったことを」
愛原「あー、そう言えば……」
六本木にある女子校である。
東京中央学園と同じく、中高一貫校である。
制服がリサのトラウマをくすぐるセーラー服だったので、そこは断った。
結果的には日本版リサ・トレヴァー『1番』が既にそこにおり、ややもすれば、そこが日本版マルハワ・デザイアになるところだったので、それを避けることができた形にはなった。
善場「東京中央学園も怪しいと睨んでいましたので、BOWたるリサを投入してみたらどうなるかを実験してみたかったというのはあります。やや時間は掛かりましたが、驚くべき結果を残してくれました。白井伝三郎が科学講師として学園に潜入していたどころか、特異菌の事や斉藤秀樹容疑者のことまで明かしてくれたのですから」
愛原「担任の坂上先生の父親が、元アンブレラの社員だったというのは?」
善場「それは大した成果ではないですね。元々が日本アンブレラは、アンブレラグループの光の部分を出す為に創業されました。その光の部分の営業部門の社員には、いくら調査しても、闇の部分の深い所までは分かりませんでしたので」
愛原「そうでしたか」
善場「問題は闇の部分ですね。アメリカの本体が廃止した研究を、日本では引き続き行っていたわけですから」
愛原「はい」
善場「日野博士は、白井伝三郎の下で働いていた研究員の1人です。白井が本部長で、日野博士は研究主任です」
愛原「なるほど」
リサの話では、坂上先生の親父さんは担当課長だったという。
なるほど。
主任と担当課長では、後者の方が上だろう。
部門が違うのだから、比較対象になるのかどうかは不明だが。
善場「他にも元アンブレラ社員が、例えば学校法人の教員に転職したりすることはあったようです」
愛原「そこは調査しなくて良いのですか?」
善場「もちろん調査済みです。具体的なバイオテロや、その準備罪に問われるようなことをしていたわけではないのであれば、特にこちらは何もしません」
愛原「それもそうですね」
善場「日野博士については、こちらでも調べておきましょう」
愛原「ありがとうございます」
私は電話を切った。
13時を過ぎると、私は学校に電話した。
愛原「あ、もしもし。坂上先生ですか?リサの保護者の愛原です。いつもお世話になっております」
相手はリサの担任の坂上先生。
愛原「うちのリサが御迷惑をお掛けしました。私の責任ですので、どうかリサの事は……」
と、謝罪した上で……。
愛原「日野博士の情報、ありがとうございました。恐らくかなり有益な情報になると思いますので、こちらに関しても御礼を言わせてください」
坂上「あ、あの……」
愛原「はい?」
坂上「いえ、何でもありません」
愛原「そうですか。宜しかったら、また日野博士のことについて分かったことがありましたら、是非とも教えて頂けないでしょうか?私に直接でも構いませんし、リサに言って頂いても構いませんから」
坂上「わ、分かりました」
私は電話を切った。
妙だな。
坂上先生の反応がおかしい。
どうやら、何か隠しているのかもしれない。
[2月13日15時00分 天候:晴 愛原学探偵事務所2階]
週が明けて、善場主任が事務所にやってきた。
善場「遅くなりまして、申し訳ございません。こちらがお返しする商品券など、有価証券類になります」
愛原「ありがとうございます」
善場「こちらの書類に御記入願います」
愛原「分かりました」
私が事務所の応接コーナーで、そのようなやり取りをしていると……。
リサ「ただいまァ」
リサが帰って来た。
パール「リサさん、今、来客中ですよ」
リサ「知ってる。善場さんでしょ?だったら、ちょうどいいかと思って」
善場「ちょうどいいって、どういうこと?」
応接コーナーは衝立で仕切られていたが、そこから善場が顔を覗かせた。
制服姿のリサは、鞄の中からA4サイズの茶封筒を取り出した。
リサ「担任の坂上先生から。当時同級生だった日野博士の息子の日記」
善場「ええっ?」
愛原「何だって!?」
善場「どうしてあなたの担任が持っていたの?」
リサ「坂上先生、隠し事をしていて、日野先輩が行方不明になった時、部室からそのノートを見つけたんだって。気になることが色々書いてあったから、それを持って帰っちゃって、そのままになってたんだって」
善場「なるほど。そういうことですか」
善場主任は、リサからノートを受け取った。
どうやらノートは、普段から『いい人』を演じている日野という人物が、それに対するストレスの捌け口をぶつける為の物だったようだ。
ノートそのものにも、『恨みのノート』と書かれている。
人望の厚さからイジメまでは受けていなかったようだが、パラパラとノートを捲っていた善場主任の表情が段々と険しくなる。
善場「これは坂上教諭にも、事情聴取しなければなりませんね」
リサ「今、テスト期間中だけど……」
善場「関係ありません。このノートは預からせて頂きます。いいですね?」
リサ「もちろん。その為に預かって来たんだから……」
愛原「一体、どんなことが書いてあったんですか?」
善場「彼は男版リサだったようです。もちろん、中身は人間ですがね。『薬』の力を使って、リサのような『魔王軍』を結成し、普段は『いい人』を演じながら、裏では怪奇現象にかこつけた『復讐』をしていたようです。ほら、相手がいい人だと調子に乗る人っているじゃないですか。対象はそれです」
愛原「なるほど。で、その薬というのは……」
善場「日本アンブレラで作られたと思われる違法薬物ですね。この日野という人物は、親がアンブレラの研究職員だったのを良いことに、そういう薬物を手に入れていたようです」
高橋「アンパンか?シャブか?」
善場「そちらの方が、まだ可愛いくらいです。外観上の化け物にはなりませんが、中身が化け物になるような薬物です。BSAAでも押収されたくらいですから」
愛原「それは怖いですね」
具体的には、飲めばたちどころにサイコパスや殺人狂にしてしまう薬とか。
1時間なら1時間、2時間なら2時間と時間を定めて服用した人間の心臓を停止させてしまう薬とか。
『恨みのノート』には、日野がその薬を手に入れたことが書かれていたという。
日本アンブレラが作っていた薬は、何も化け物になるようなウィルスとか新種の菌だけではなかったということ。
学校から戻ったリサは、お昼にパールが作ったチャーシュー麺を食べながら、私に調査結果を報告した。
ラーメンはスーパーで買って来た袋麺である。
愛原「坂上先生の親父さん、アンブレラの社員だったのか……。営業マンだけど」
これは偶然だろうか。
学校へ行きたがるリサを東京中央学園に入れたデイライトは……。
今はもう卒業してしまったが、中等部の方にも何かあったのかもしれない。
それとも、高等部への調査の布石だったか。
私はメールで、善場主任に報告した。
それと、気になることがあるので、電話しても良いかどうかを確認した。
するとOKとのことで、私は善場主任に電話を掛けた。
善場「善場です」
愛原「善場主任、愛原です。お休みのところ、申し訳ありません」
善場「バイオテロに関することでしたら、年中無休ですから構いませんよ」
愛原「バイオテロというか……。リサが東京中央学園に入ったのって、デイライトさんの思惑ですよね?」
善場「そうですよ。今さら隠し立てするつもりはございません。所長は覚えておいでですか?リサの入学先の候補に、聖クラリス女学館もあったことを」
愛原「あー、そう言えば……」
六本木にある女子校である。
東京中央学園と同じく、中高一貫校である。
制服がリサのトラウマをくすぐるセーラー服だったので、そこは断った。
結果的には日本版リサ・トレヴァー『1番』が既にそこにおり、ややもすれば、そこが日本版マルハワ・デザイアになるところだったので、それを避けることができた形にはなった。
善場「東京中央学園も怪しいと睨んでいましたので、BOWたるリサを投入してみたらどうなるかを実験してみたかったというのはあります。やや時間は掛かりましたが、驚くべき結果を残してくれました。白井伝三郎が科学講師として学園に潜入していたどころか、特異菌の事や斉藤秀樹容疑者のことまで明かしてくれたのですから」
愛原「担任の坂上先生の父親が、元アンブレラの社員だったというのは?」
善場「それは大した成果ではないですね。元々が日本アンブレラは、アンブレラグループの光の部分を出す為に創業されました。その光の部分の営業部門の社員には、いくら調査しても、闇の部分の深い所までは分かりませんでしたので」
愛原「そうでしたか」
善場「問題は闇の部分ですね。アメリカの本体が廃止した研究を、日本では引き続き行っていたわけですから」
愛原「はい」
善場「日野博士は、白井伝三郎の下で働いていた研究員の1人です。白井が本部長で、日野博士は研究主任です」
愛原「なるほど」
リサの話では、坂上先生の親父さんは担当課長だったという。
なるほど。
主任と担当課長では、後者の方が上だろう。
部門が違うのだから、比較対象になるのかどうかは不明だが。
善場「他にも元アンブレラ社員が、例えば学校法人の教員に転職したりすることはあったようです」
愛原「そこは調査しなくて良いのですか?」
善場「もちろん調査済みです。具体的なバイオテロや、その準備罪に問われるようなことをしていたわけではないのであれば、特にこちらは何もしません」
愛原「それもそうですね」
善場「日野博士については、こちらでも調べておきましょう」
愛原「ありがとうございます」
私は電話を切った。
13時を過ぎると、私は学校に電話した。
愛原「あ、もしもし。坂上先生ですか?リサの保護者の愛原です。いつもお世話になっております」
相手はリサの担任の坂上先生。
愛原「うちのリサが御迷惑をお掛けしました。私の責任ですので、どうかリサの事は……」
と、謝罪した上で……。
愛原「日野博士の情報、ありがとうございました。恐らくかなり有益な情報になると思いますので、こちらに関しても御礼を言わせてください」
坂上「あ、あの……」
愛原「はい?」
坂上「いえ、何でもありません」
愛原「そうですか。宜しかったら、また日野博士のことについて分かったことがありましたら、是非とも教えて頂けないでしょうか?私に直接でも構いませんし、リサに言って頂いても構いませんから」
坂上「わ、分かりました」
私は電話を切った。
妙だな。
坂上先生の反応がおかしい。
どうやら、何か隠しているのかもしれない。
[2月13日15時00分 天候:晴 愛原学探偵事務所2階]
週が明けて、善場主任が事務所にやってきた。
善場「遅くなりまして、申し訳ございません。こちらがお返しする商品券など、有価証券類になります」
愛原「ありがとうございます」
善場「こちらの書類に御記入願います」
愛原「分かりました」
私が事務所の応接コーナーで、そのようなやり取りをしていると……。
リサ「ただいまァ」
リサが帰って来た。
パール「リサさん、今、来客中ですよ」
リサ「知ってる。善場さんでしょ?だったら、ちょうどいいかと思って」
善場「ちょうどいいって、どういうこと?」
応接コーナーは衝立で仕切られていたが、そこから善場が顔を覗かせた。
制服姿のリサは、鞄の中からA4サイズの茶封筒を取り出した。
リサ「担任の坂上先生から。当時同級生だった日野博士の息子の日記」
善場「ええっ?」
愛原「何だって!?」
善場「どうしてあなたの担任が持っていたの?」
リサ「坂上先生、隠し事をしていて、日野先輩が行方不明になった時、部室からそのノートを見つけたんだって。気になることが色々書いてあったから、それを持って帰っちゃって、そのままになってたんだって」
善場「なるほど。そういうことですか」
善場主任は、リサからノートを受け取った。
どうやらノートは、普段から『いい人』を演じている日野という人物が、それに対するストレスの捌け口をぶつける為の物だったようだ。
ノートそのものにも、『恨みのノート』と書かれている。
人望の厚さからイジメまでは受けていなかったようだが、パラパラとノートを捲っていた善場主任の表情が段々と険しくなる。
善場「これは坂上教諭にも、事情聴取しなければなりませんね」
リサ「今、テスト期間中だけど……」
善場「関係ありません。このノートは預からせて頂きます。いいですね?」
リサ「もちろん。その為に預かって来たんだから……」
愛原「一体、どんなことが書いてあったんですか?」
善場「彼は男版リサだったようです。もちろん、中身は人間ですがね。『薬』の力を使って、リサのような『魔王軍』を結成し、普段は『いい人』を演じながら、裏では怪奇現象にかこつけた『復讐』をしていたようです。ほら、相手がいい人だと調子に乗る人っているじゃないですか。対象はそれです」
愛原「なるほど。で、その薬というのは……」
善場「日本アンブレラで作られたと思われる違法薬物ですね。この日野という人物は、親がアンブレラの研究職員だったのを良いことに、そういう薬物を手に入れていたようです」
高橋「アンパンか?シャブか?」
善場「そちらの方が、まだ可愛いくらいです。外観上の化け物にはなりませんが、中身が化け物になるような薬物です。BSAAでも押収されたくらいですから」
愛原「それは怖いですね」
具体的には、飲めばたちどころにサイコパスや殺人狂にしてしまう薬とか。
1時間なら1時間、2時間なら2時間と時間を定めて服用した人間の心臓を停止させてしまう薬とか。
『恨みのノート』には、日野がその薬を手に入れたことが書かれていたという。
日本アンブレラが作っていた薬は、何も化け物になるようなウィルスとか新種の菌だけではなかったということ。
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