[8月29日18:00.天候:雨 東京都江東区森下 ワンスターホテル1Fレストラン“マジックスター”]
キャサリン:「はーあ……。今日は開店休業だわ……」
ホテルの建物にテナントとして入居するレストランの経営者、キャサリンは溜め息をついた。
台風直撃で宿泊客のキャンセルが相次ぎ、また、外来の利用客すらも当て込めない状況だった。
キャサリン:「しょうがない。今日はもう閉店……」
すると、ホテル側の入口のドアが開いた。
キャサリン:「あっ、いらっしゃいませー!」
ホテル側入口からやってきたのは……。
エレーナ:「ちわ」
キャサリン:「あら?エレーナじゃない」
リリアンヌ:「フヒヒヒ……。こ、こんにちは……」
キャサリン:「リリィも?」
鈴木:「すいません。3名です」
エレーナ:「彼が夕食を奢ってくれるっていうから来たの」
キャサリン:「ああ、どうぞどうぞ」
鈴木達は窓側のテーブル席に座った。
天井の梁にはキャサリンの使い魔のカラスが止まっている。
魔女の使い魔として、黒猫以外はカラスも有名だ。
その使い魔が従えている普通のカラスまでいるが、こちらも特に人間のことを気にする様子は無い。
外が台風なので、避難してきたのだろう。
使い魔のカラスがサーッと舞い降りて来て、床の上に着地したかと思うと、見る見るうちに人の姿へと変えていった。
それは黒髪と浅黒い肌を持ち、スタイルも良い女性の姿であった。
鈴木:「うおっ!?」
使い魔:「いらっしゃいませ。メニューをどうぞ」
服装は黒を基調としたウェイトレスの姿である。
エレーナ:「ほお。変化の術を覚えたのか。さすがはキャサリン先輩だ」
使い魔:「おかげさまで……」
リリアンヌ:「フヒヒヒヒ……。こ、この男……え、エレーナ先輩がありながら……は、鼻の下伸ばしてます……」
鈴木:「い、いや、それは誤解だ!」
エレーナ:「いや、まあ伸ばしたくもなるだろ。よくこんな完璧に変化できたな〜」
使い魔:「マスターのおかげです。ご注文は?」
鈴木:「えーと……。『3種のハーブをふんだんに使ったチキンソテー』で、ライスと食後にコーヒーを付けて」
カラスの前でチキンソテー頼んでも良いのかと思うが、心配無い。
カラスは他の鳥も捕食するし、ややもすれば同族同士で共食いをすることもある。
鈴木:「あの、因みにこれ、カラスの肉じゃないですよね?」
使い魔:「よくお分かりで」
鈴木:「ですよねぇ……って、えぇ!?」
使い魔:「私のテリトリーに無断で侵入したアホを捕獲したものです。ですので、この料理は数量限定に……」
カラスもまた縄張り意識の強い鳥である。
鈴木:「や、やっぱりキャンセル!他の料理は……」
使い魔:「……ですが、マスターに止められたので、鶏の肉になります」
鈴木:「だっはーっ!」
リリアンヌ:「フヒヒヒヒ……。ウィッチ・ジョーク(魔女の冗談)……」
しかし東京都知事が石原慎太郎氏だった頃、捕獲したカラスをミートパイにして東京名物として売り出す計画があったとか無かったとか……。
で、石原氏自身が試食したとかしなかったとか……。
エレーナ:「おー、ジョークまで言えるのか。さすがはキャシー先輩だ。じゃあ、私は……」
尚、この店を切り盛りしているキャサリンは、れっきとしたダンテ一門の魔道師であり、元はポーリン組に所属していた。
なので、本当にエレーナやリリアンヌの先輩なのである。
ハイマスター(High Master ベテラン)となってからは独立し、魔法薬や料理の研究をしていたこともあって、その知識と技術を生かした料理店をこのホテルの中に開いた。
稲生勇太が高校生だった頃、老婆の姿に戻って(キャサリンの実年齢は500〜600歳ほどらしい)、魔法実験で余った魔法薬を使って作ったキャンディーを配るようなことをしていた。
それが怪談話のネタになったほど。
店に入る時は30代の女性の姿をしている。
リリアンヌ:「フヒヒヒヒ……。わ、私は魚料理で……」
エレーナ:「リリィは魚が好きだなぁ」
注文を終えると、まずはジョッキに入ったビールがやってくる。
鈴木:「リリィちゃんはソフトドリンクね。分かってるよね?日本の法律では『お酒は20歳になってから』」
リリィ:「…………」
リリィは鈴木と目を合わせようとしない。
エレーナ:「悪いな。リリィは人間時代のトラウマで、男と話ができないんだ」
鈴木:「稲生先輩とは話ができるのに?」
エレーナ:「稲生氏は同じ魔道師だし、マリアンナという保証人もいるから」
鈴木:「保証人!?」
エレーナ:「まあまあ。確かにリリィに酒を飲ませると、大変なことになるからな。酒は肉体年齢20歳以上の私達だけで飲もう」
まずは乾杯。
リリアンヌ:「で、でもエレーナ先輩の実年齢はぁ……」
エレーナ:「黙ってろ。私ゃ、ここでは鈴木よりも年下だ」
リリアンヌ:「フヒッ!?はいっ!」
鈴木:「ここでは?」
ビールで一杯やってると、妖艶な女性の姿に変身したキャサリンの使い魔が、できた料理を運んで来た。
使い魔:「お待たせを……」
鈴木:「おおっ!正に創作料理って感じ!……3種のハーブって結局何なの?」
使い魔:「グリーンハーブ、レッドハーブ、ブルーハーブです」
鈴木:「……ん?どこかのゲームで見たような?いや、ポンコツ探偵がゾンビ無双する作品でも出て来たような……?」
鈴木が何度も首を傾げていると、エレーナが、
エレーナ:「レッドハーブが手に入ったのか!これはなかなか手に入らないものだもんな!」
しきりに感心していた。
キャサリン:「ハーブも生ものだからね、早く料理に使わないといけないのよ」
厨房からキャサリンが出て来た。
キャサリン:「そのタイミングでこれだものねぇ……」
キャサリンは残念そうに窓の外を見た。
昼間よりは雨は弱まった……というか、殆ど止んでいるように見えるが、まだ風がビュウビュウ吹いている。
この風のせいで沿岸部の鉄道はもちろん、比較的内陸を走る鉄道もダイヤ乱れや運転見合わせが発生しているという。
エレーナ:「マリアンナもせっかくの稲生氏デートがこれでパーになったっていうし、マジでアナスタシア組は〜……」
リリアンヌ:「フフフ……」
[同日20:00.天候:曇 同ホテル1F]
エレーナ:「それじゃ、今日はごちそう様」
鈴木:「いいんだよ。こんなかわいいコ達と食事ができるなんて功徳だよ」
エレーナ:「功徳ねぇ……」
エレーナはエレベーターのボタンを押した。
エレーナ:「神に仕えた時点で私らの敵になるけど、仏に関しては何の通達も無いんだよねぇ……」
鈴木:「大丈夫だよ。キリストと違って日蓮大聖人様は、そんな御方じゃないよ!」
イエス・キリストが、というよりそれを信仰する宗教団体の方に問題があるような気がする。
ま、それは日蓮正宗も似たようなものだ。
エレーナ:「それじゃ、私達はもう休むから」
鈴木:「今度は俺の家に遊びに来てよ」
エレーナ:「……それって、『ヤらせろ』ってか?」
鈴木:「い、いや、そういうつもりじゃ……」
エレーナ:「じゃ、おやすみ」
鈴木:「お、おやすみなさい!」
エレーナとリリアンヌは先にエレベーターに乗り込んだ。
そして、地下1階に下りる設定をする。
ドアが閉まって、エレベーターが降下した。
リリアンヌ:「フヒヒ……!せ、先輩……!あ、あいつ、絶対先輩の体を……!」
エレーナ:「ああ。そりゃ狙ってるだろうな。でなきゃこんなことしないだろ」
リリアンヌ:「い、いい今のうちに、ぼ、ボボ、ボコして……!」
エレーナ:「いいから放っときな。また飯とか奢ってもらえるぞ」
リリアンヌ:「は、はい……」
キャサリン:「はーあ……。今日は開店休業だわ……」
ホテルの建物にテナントとして入居するレストランの経営者、キャサリンは溜め息をついた。
台風直撃で宿泊客のキャンセルが相次ぎ、また、外来の利用客すらも当て込めない状況だった。
キャサリン:「しょうがない。今日はもう閉店……」
すると、ホテル側の入口のドアが開いた。
キャサリン:「あっ、いらっしゃいませー!」
ホテル側入口からやってきたのは……。
エレーナ:「ちわ」
キャサリン:「あら?エレーナじゃない」
リリアンヌ:「フヒヒヒ……。こ、こんにちは……」
キャサリン:「リリィも?」
鈴木:「すいません。3名です」
エレーナ:「彼が夕食を奢ってくれるっていうから来たの」
キャサリン:「ああ、どうぞどうぞ」
鈴木達は窓側のテーブル席に座った。
天井の梁にはキャサリンの使い魔のカラスが止まっている。
魔女の使い魔として、黒猫以外はカラスも有名だ。
その使い魔が従えている普通のカラスまでいるが、こちらも特に人間のことを気にする様子は無い。
外が台風なので、避難してきたのだろう。
使い魔のカラスがサーッと舞い降りて来て、床の上に着地したかと思うと、見る見るうちに人の姿へと変えていった。
それは黒髪と浅黒い肌を持ち、スタイルも良い女性の姿であった。
鈴木:「うおっ!?」
使い魔:「いらっしゃいませ。メニューをどうぞ」
服装は黒を基調としたウェイトレスの姿である。
エレーナ:「ほお。変化の術を覚えたのか。さすがはキャサリン先輩だ」
使い魔:「おかげさまで……」
リリアンヌ:「フヒヒヒヒ……。こ、この男……え、エレーナ先輩がありながら……は、鼻の下伸ばしてます……」
鈴木:「い、いや、それは誤解だ!」
エレーナ:「いや、まあ伸ばしたくもなるだろ。よくこんな完璧に変化できたな〜」
使い魔:「マスターのおかげです。ご注文は?」
鈴木:「えーと……。『3種のハーブをふんだんに使ったチキンソテー』で、ライスと食後にコーヒーを付けて」
カラスの前でチキンソテー頼んでも良いのかと思うが、心配無い。
カラスは他の鳥も捕食するし、ややもすれば同族同士で共食いをすることもある。
鈴木:「あの、因みにこれ、カラスの肉じゃないですよね?」
使い魔:「よくお分かりで」
鈴木:「ですよねぇ……って、えぇ!?」
使い魔:「私のテリトリーに無断で侵入したアホを捕獲したものです。ですので、この料理は数量限定に……」
カラスもまた縄張り意識の強い鳥である。
鈴木:「や、やっぱりキャンセル!他の料理は……」
使い魔:「……ですが、マスターに止められたので、鶏の肉になります」
鈴木:「だっはーっ!」
リリアンヌ:「フヒヒヒヒ……。ウィッチ・ジョーク(魔女の冗談)……」
しかし東京都知事が石原慎太郎氏だった頃、捕獲したカラスをミートパイにして東京名物として売り出す計画があったとか無かったとか……。
で、石原氏自身が試食したとかしなかったとか……。
エレーナ:「おー、ジョークまで言えるのか。さすがはキャシー先輩だ。じゃあ、私は……」
尚、この店を切り盛りしているキャサリンは、れっきとしたダンテ一門の魔道師であり、元はポーリン組に所属していた。
なので、本当にエレーナやリリアンヌの先輩なのである。
ハイマスター(High Master ベテラン)となってからは独立し、魔法薬や料理の研究をしていたこともあって、その知識と技術を生かした料理店をこのホテルの中に開いた。
稲生勇太が高校生だった頃、老婆の姿に戻って(キャサリンの実年齢は500〜600歳ほどらしい)、魔法実験で余った魔法薬を使って作ったキャンディーを配るようなことをしていた。
それが怪談話のネタになったほど。
店に入る時は30代の女性の姿をしている。
リリアンヌ:「フヒヒヒヒ……。わ、私は魚料理で……」
エレーナ:「リリィは魚が好きだなぁ」
注文を終えると、まずはジョッキに入ったビールがやってくる。
鈴木:「リリィちゃんはソフトドリンクね。分かってるよね?日本の法律では『お酒は20歳になってから』」
リリィ:「…………」
リリィは鈴木と目を合わせようとしない。
エレーナ:「悪いな。リリィは人間時代のトラウマで、男と話ができないんだ」
鈴木:「稲生先輩とは話ができるのに?」
エレーナ:「稲生氏は同じ魔道師だし、マリアンナという保証人もいるから」
鈴木:「保証人!?」
エレーナ:「まあまあ。確かにリリィに酒を飲ませると、大変なことになるからな。酒は肉体年齢20歳以上の私達だけで飲もう」
まずは乾杯。
リリアンヌ:「で、でもエレーナ先輩の実年齢はぁ……」
エレーナ:「黙ってろ。私ゃ、ここでは鈴木よりも年下だ」
リリアンヌ:「フヒッ!?はいっ!」
鈴木:「ここでは?」
ビールで一杯やってると、妖艶な女性の姿に変身したキャサリンの使い魔が、できた料理を運んで来た。
使い魔:「お待たせを……」
鈴木:「おおっ!正に創作料理って感じ!……3種のハーブって結局何なの?」
使い魔:「グリーンハーブ、レッドハーブ、ブルーハーブです」
鈴木:「……ん?どこかのゲームで見たような?いや、ポンコツ探偵がゾンビ無双する作品でも出て来たような……?」
鈴木が何度も首を傾げていると、エレーナが、
エレーナ:「レッドハーブが手に入ったのか!これはなかなか手に入らないものだもんな!」
しきりに感心していた。
キャサリン:「ハーブも生ものだからね、早く料理に使わないといけないのよ」
厨房からキャサリンが出て来た。
キャサリン:「そのタイミングでこれだものねぇ……」
キャサリンは残念そうに窓の外を見た。
昼間よりは雨は弱まった……というか、殆ど止んでいるように見えるが、まだ風がビュウビュウ吹いている。
この風のせいで沿岸部の鉄道はもちろん、比較的内陸を走る鉄道もダイヤ乱れや運転見合わせが発生しているという。
エレーナ:「マリアンナもせっかくの稲生氏デートがこれでパーになったっていうし、マジでアナスタシア組は〜……」
リリアンヌ:「フフフ……」
[同日20:00.天候:曇 同ホテル1F]
エレーナ:「それじゃ、今日はごちそう様」
鈴木:「いいんだよ。こんなかわいいコ達と食事ができるなんて功徳だよ」
エレーナ:「功徳ねぇ……」
エレーナはエレベーターのボタンを押した。
エレーナ:「神に仕えた時点で私らの敵になるけど、仏に関しては何の通達も無いんだよねぇ……」
鈴木:「大丈夫だよ。キリストと違って日蓮大聖人様は、そんな御方じゃないよ!」
イエス・キリストが、というよりそれを信仰する宗教団体の方に問題があるような気がする。
ま、それは日蓮正宗も似たようなものだ。
エレーナ:「それじゃ、私達はもう休むから」
鈴木:「今度は俺の家に遊びに来てよ」
エレーナ:「……それって、『ヤらせろ』ってか?」
鈴木:「い、いや、そういうつもりじゃ……」
エレーナ:「じゃ、おやすみ」
鈴木:「お、おやすみなさい!」
エレーナとリリアンヌは先にエレベーターに乗り込んだ。
そして、地下1階に下りる設定をする。
ドアが閉まって、エレベーターが降下した。
リリアンヌ:「フヒヒ……!せ、先輩……!あ、あいつ、絶対先輩の体を……!」
エレーナ:「ああ。そりゃ狙ってるだろうな。でなきゃこんなことしないだろ」
リリアンヌ:「い、いい今のうちに、ぼ、ボボ、ボコして……!」
エレーナ:「いいから放っときな。また飯とか奢ってもらえるぞ」
リリアンヌ:「は、はい……」
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます