[3月4日20:00.天候:雨 神奈川県相模原市緑区 (独)国家公務員特別研修センター3F宿泊室→1F小浴場]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は泊まり掛けの出張初日だ。
高橋:「先生、何か雨が強くなって来ましたよ?」
愛原:「山の天気は変わりやすいって言うからな。どうせ俺達、しばらくは外に出ないんだ。気にすることもないだろう」
高橋:「まあ、そうっスね」
私と高橋は2つある2段ベッドのうち、下段だけを使うことにした。
この2段ベッドには開放型B寝台車のようにカーテンが付いていて、閉めればちょっとした個室気分だ。
カプセルホテルのカプセルを、もう少し開放的にした感じ。
枕元には読書灯があり、コンセントも1つ付いていた。
そして何よりこの施設、Wi-Fiが飛んでいる。
しかも室内にその接続の仕方が書いてあることから、利用者が自由に使っていいらしい。
この施設の地下には秘密研究所があるとのことだが、上の研修センターにいる分には、まるで本当にそれがあるような印象は受けない。
もっとも、それが狙いなのだろうが。
と、そこへ部屋のドアがノックされた。
愛原:「はーい!」
高橋:「あ、俺出ます」
高橋が部屋のドアを開ける。
高野:「お風呂いいよー」
高橋:「何だ、アネゴか。先生を待たせやがって。本当は先生は一番風呂だぞ?」
高野:「その先生が私達に『先に入っていい』って仰ったから、お言葉に甘えただけだよ。何か文句ある?」
高橋:「その先生の有り難いお言葉を固辞してこそ、真の弟子……」
高野:「私はただの事務員で、先生の弟子でも助手でもないから」
もっとも、いざって時には猪突猛進タイプの高橋をいなしてくれる役割を担ってくれることもある。
リサ:「先生と一緒に入りたかった……」
絵恋:「リサさん、私で満足してーっ!」
よく見ると女性陣は浴衣ではなく、自前の寝巻を着ていた。
いや、室内には浴衣もあるんだ。
私達はしっかりそれに着替えていた。
リサと絵恋さんは学校のジャージだし、高野君もスウェットだ。
愛原:「あれ?キミ達、浴衣じゃないんだ?」
リサ:「先生が『合宿所みたいな所に泊まる』って言うから……」
絵恋:「去年の秋、学校の野外活動で合宿所に泊まった時は学校のジャージが指定されてましたから……」
うーむ……私の例えを真に受けてくれるなんて、そろそろ大人びる年頃だろうに、何て素直なコ達なんだろう。
願わくば、その素直さに付け込む悪い大人に騙されないようにしてもらいたいものだ。
特に、絵恋さんは。
リサは……申し訳ないが、既にその被害者だから、人間を辞めさせられてしまったのだろう。
高野:「私はいつでも寝込みを襲われてもいいようにしたわけですよ。先生達こそ、大丈夫なんですか?」
愛原:「いや多分、大丈夫だと思うが……」
高橋:「いざとなったら、俺が先生を守ってみせるぜ!」
高橋が勇ましいことを言ってくれるが、大抵今のうちに勇ましい言葉を言うヤツほど、事件が発生した際は意外と役に立たない法則だ。
愛原:「まあ、とにかく俺達も風呂に入ろう。22時までだからな、あと2時間しか無い」
高橋:「はい」
因みに浴衣はあるものの、タオルなどは無いので、これは自前で用意しなければならない。
ボディソープやシャンプーなどは、備え付けられているとのことだが。
私と高橋はタオルを持ち、部屋備え付けのスリッパを履いて小浴場へと向かった。
普通は途中にある階段を使って乗り降りしなければならないのだが、私はふとその奥にあるエレベーターが目に付いた。
あれが地下研究所に向かうというエレベーターなのだろう。
見た目はただの何の飾りっ気も無いエレベーターだが。
表向きは、この研修所を利用する身体障がい者のバリアフリーの為だという。
愛原:「試しに乗ってみよう」
高橋:「あ、はい」
私は試しにボタンを押してみた。
もしかしたら電源が切られているかもしれないと思ったが、下のボタンを押すとちゃんとランプが点灯した。
しかし、このエレベーターには、カゴが今何階にいるかの表示が無い。
しばらく待っていると、ランプが消えてドアが開いた。
〔3階です。下に参ります〕
愛原:「!」
乗り込んでみると、反対側にもドアがあった。
もちろん、それ自体は何も珍しいことではない。
駅のエレベーターなどにはよくあるタイプだ。
問題はどの階に着いた時、反対側のドアが開くのだろうということだ。
少なくともフロントのある2Fでは、今乗り込んだ側のドアが開くはずである。
全部がそうだと思っていただけに、反対側にもドアがあることは意外だった。
〔ドアが閉まります〕
高橋:「先生、反対側にもドアがありますね?」
愛原:「そうだな」
だが恐らくその反対側のドアは、地下階で開くものではないかと思った。
何故なら、今乗り込んで来た側と反対側では根本的に違うものがあったからだ。
さっき乗り込んだ側には、ボタンが1階から屋上までしかない。
しかし反対側には、どうでも良い注意書きの紙に隠されるようにして、地下階のボタンがあった。
貼り紙に隠されているので、その下にボタンがあるかどうかは本来分からないのだが。
そしてもう1つ。
これは世界探偵協会日本支部の入っているビルの貨物用エレベーターにもあるのだが、ボタンの列の下にカード読取機がある。
恐らくこの読取機に権限のあるカードをかざさないと、地下階へのボタンが押せないのではないだろうか。
私は試しに、貼り紙の上を指でなぞってみた。
すると、やはりボタンの感触があった。
それを押してみる。
〔ランプの点灯しない階には止まりません〕
というアナウンスが流れた。
そして試しに、今度はフロントで渡されたビジターカードを当ててみる。
だが、ピピピッというエラー音が鳴って、読取機のランプが赤く点滅した。
つまり、このカードは権限が無いということだ。
なるほど、考えたものだ。
やはり罷り間違って、研究施設に迷い込むということは無さそうだ。
明日、権限のある善場主任の引率で向かうしかないということだな。
〔ドアが開きます。1階です〕
私の思った通り、地上階は先ほど乗り込んだ側のドアしか開かないようである。
1階に着床してドアが開くと、大浴場と小浴場があった。
大浴場の入口は電気が点いていなかったが、小浴場の方は電気が点いていた。
本当に大人数で泊まる際には両方稼働させ、しかも男女別にするようで、ドアの所には今はひっくり返されているものの、『女性用』という表示もあった。
男女比によって、大浴場と小浴場を男湯・女湯に分けるようである。
私達は今稼働している小浴場へ入った。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は泊まり掛けの出張初日だ。
高橋:「先生、何か雨が強くなって来ましたよ?」
愛原:「山の天気は変わりやすいって言うからな。どうせ俺達、しばらくは外に出ないんだ。気にすることもないだろう」
高橋:「まあ、そうっスね」
私と高橋は2つある2段ベッドのうち、下段だけを使うことにした。
この2段ベッドには開放型B寝台車のようにカーテンが付いていて、閉めればちょっとした個室気分だ。
カプセルホテルのカプセルを、もう少し開放的にした感じ。
枕元には読書灯があり、コンセントも1つ付いていた。
そして何よりこの施設、Wi-Fiが飛んでいる。
しかも室内にその接続の仕方が書いてあることから、利用者が自由に使っていいらしい。
この施設の地下には秘密研究所があるとのことだが、上の研修センターにいる分には、まるで本当にそれがあるような印象は受けない。
もっとも、それが狙いなのだろうが。
と、そこへ部屋のドアがノックされた。
愛原:「はーい!」
高橋:「あ、俺出ます」
高橋が部屋のドアを開ける。
高野:「お風呂いいよー」
高橋:「何だ、アネゴか。先生を待たせやがって。本当は先生は一番風呂だぞ?」
高野:「その先生が私達に『先に入っていい』って仰ったから、お言葉に甘えただけだよ。何か文句ある?」
高橋:「その先生の有り難いお言葉を固辞してこそ、真の弟子……」
高野:「私はただの事務員で、先生の弟子でも助手でもないから」
もっとも、いざって時には猪突猛進タイプの高橋をいなしてくれる役割を担ってくれることもある。
リサ:「先生と一緒に入りたかった……」
絵恋:「リサさん、私で満足してーっ!」
よく見ると女性陣は浴衣ではなく、自前の寝巻を着ていた。
いや、室内には浴衣もあるんだ。
私達はしっかりそれに着替えていた。
リサと絵恋さんは学校のジャージだし、高野君もスウェットだ。
愛原:「あれ?キミ達、浴衣じゃないんだ?」
リサ:「先生が『合宿所みたいな所に泊まる』って言うから……」
絵恋:「去年の秋、学校の野外活動で合宿所に泊まった時は学校のジャージが指定されてましたから……」
うーむ……私の例えを真に受けてくれるなんて、そろそろ大人びる年頃だろうに、何て素直なコ達なんだろう。
願わくば、その素直さに付け込む悪い大人に騙されないようにしてもらいたいものだ。
特に、絵恋さんは。
リサは……申し訳ないが、既にその被害者だから、人間を辞めさせられてしまったのだろう。
高野:「私はいつでも寝込みを襲われてもいいようにしたわけですよ。先生達こそ、大丈夫なんですか?」
愛原:「いや多分、大丈夫だと思うが……」
高橋:「いざとなったら、俺が先生を守ってみせるぜ!」
高橋が勇ましいことを言ってくれるが、大抵今のうちに勇ましい言葉を言うヤツほど、事件が発生した際は意外と役に立たない法則だ。
愛原:「まあ、とにかく俺達も風呂に入ろう。22時までだからな、あと2時間しか無い」
高橋:「はい」
因みに浴衣はあるものの、タオルなどは無いので、これは自前で用意しなければならない。
ボディソープやシャンプーなどは、備え付けられているとのことだが。
私と高橋はタオルを持ち、部屋備え付けのスリッパを履いて小浴場へと向かった。
普通は途中にある階段を使って乗り降りしなければならないのだが、私はふとその奥にあるエレベーターが目に付いた。
あれが地下研究所に向かうというエレベーターなのだろう。
見た目はただの何の飾りっ気も無いエレベーターだが。
表向きは、この研修所を利用する身体障がい者のバリアフリーの為だという。
愛原:「試しに乗ってみよう」
高橋:「あ、はい」
私は試しにボタンを押してみた。
もしかしたら電源が切られているかもしれないと思ったが、下のボタンを押すとちゃんとランプが点灯した。
しかし、このエレベーターには、カゴが今何階にいるかの表示が無い。
しばらく待っていると、ランプが消えてドアが開いた。
〔3階です。下に参ります〕
愛原:「!」
乗り込んでみると、反対側にもドアがあった。
もちろん、それ自体は何も珍しいことではない。
駅のエレベーターなどにはよくあるタイプだ。
問題はどの階に着いた時、反対側のドアが開くのだろうということだ。
少なくともフロントのある2Fでは、今乗り込んだ側のドアが開くはずである。
全部がそうだと思っていただけに、反対側にもドアがあることは意外だった。
〔ドアが閉まります〕
高橋:「先生、反対側にもドアがありますね?」
愛原:「そうだな」
だが恐らくその反対側のドアは、地下階で開くものではないかと思った。
何故なら、今乗り込んで来た側と反対側では根本的に違うものがあったからだ。
さっき乗り込んだ側には、ボタンが1階から屋上までしかない。
しかし反対側には、どうでも良い注意書きの紙に隠されるようにして、地下階のボタンがあった。
貼り紙に隠されているので、その下にボタンがあるかどうかは本来分からないのだが。
そしてもう1つ。
これは世界探偵協会日本支部の入っているビルの貨物用エレベーターにもあるのだが、ボタンの列の下にカード読取機がある。
恐らくこの読取機に権限のあるカードをかざさないと、地下階へのボタンが押せないのではないだろうか。
私は試しに、貼り紙の上を指でなぞってみた。
すると、やはりボタンの感触があった。
それを押してみる。
〔ランプの点灯しない階には止まりません〕
というアナウンスが流れた。
そして試しに、今度はフロントで渡されたビジターカードを当ててみる。
だが、ピピピッというエラー音が鳴って、読取機のランプが赤く点滅した。
つまり、このカードは権限が無いということだ。
なるほど、考えたものだ。
やはり罷り間違って、研究施設に迷い込むということは無さそうだ。
明日、権限のある善場主任の引率で向かうしかないということだな。
〔ドアが開きます。1階です〕
私の思った通り、地上階は先ほど乗り込んだ側のドアしか開かないようである。
1階に着床してドアが開くと、大浴場と小浴場があった。
大浴場の入口は電気が点いていなかったが、小浴場の方は電気が点いていた。
本当に大人数で泊まる際には両方稼働させ、しかも男女別にするようで、ドアの所には今はひっくり返されているものの、『女性用』という表示もあった。
男女比によって、大浴場と小浴場を男湯・女湯に分けるようである。
私達は今稼働している小浴場へ入った。
懸念した通り、運休便が拡大した。
来月御講の為に予約した便も運休が決定した為、前泊は絶望的となった。
今月・来月に御登山を計画している信徒の皆様で、公共交通機関利用を考えている方は、運行会社の運行情報に十分ご注意ください。
東海道新幹線も“のぞみ”の減便が決定しましたが、いつそれが“ひかり”や直接御登山に関係する“こだま”にまで波及するか分かりませんので。
死刑判決が下されました!
当然の結果だと思っていましたよ。
思想そのものには石原慎太郎先生などの賛同者はいたとしても、やり方が非常に悪かった。
刑法の、それも最高刑が課される違反をしたのですから。
日本は(ここ最近、司法が腐りつつも)法治国家なのですから、刑法に違反した分はしっかり償わないといけませんね。