報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「面会制限」

2022-02-08 20:34:31 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月22日08:45.天候:晴 神奈川県相模原市緑区某所 国家公務員特別研修センター]

 藤野駅前から客待ちしていた地元のタクシーに乗り込み、研修センターへと向かう。

 運転手:「お帰りもご利用されますか?」
 愛原:「はい。11時にお願いできますか?」
 運転手:「11時ですね。分かりました」

 門扉の閉ざされた正門前に車を止めてもらい、料金を払う時のやり取り。
 交通の不便な場所故、本来なら車で来る所なのだ。
 近くに路線バスはあるものの、本数が少ない上、休日は運転されない。
 駅からタクシーに乗り、帰りはこうやって予約するのが必須と思われる。
 タクシーを降りて、正門横のインターホンを押した。

 愛原:「おはようございます。東京から参りました愛原です」

〔「どうぞ、お入りください」〕

 自動で、引き戸式の門扉が片側だけ開く。
 人1人分通れる幅だけ開くと、私達は中に入った。
 すぐ左手にある守衛所から、刑務官のような制服を着た守衛さんが出てくる。
 警備会社から派遣された警備員ではなく、直接雇用されている守衛であり、身分も国家公務員となる。
 この事から、行政執行法人ではないかと思われる。
 たかだか公務員の研修センターでと思うのだが、その実を知れば、とても重要な施設だということが分かる。
 とても、民間の警備会社に警備が務まる所ではない。

 守衛:「おはようございます」
 愛原:「おはようございます。お聞き及びと思いますが、例の地下施設へ参りたいと思います」
 守衛:「伺っております。まずは手荷物検査に御協力を」

 いつもの手荷物検査や金属探知機、果てはコロナワクチン接種済み証明書または陰性証明書の提出まで求められた。
 TウィルスやGウィルスなどの前では、新型コロナウィルスといえどもイチコロであるというのは、まだ水面下における公然の秘密であるので……。

 守衛:「まあ、愛原さん達の場合、別のワクチンで代用できるのでしょうな」
 愛原:「御理解が早く、恐れ入ります」

 入構手続きを終えて、ようやく正式な来訪者となる。
 渡された入構証は、一番権限の低いビジター用。

 守衛:「それではご案内します」

 守衛所から更に1人の守衛さんが出て来て、私達を護衛するかのように案内してくれる。
 前泊の時は、宿泊施設のある建物からエレベーターで直に向かったが、日帰りの今日は違うルートである。
 宿泊施設の裏手にある体育館の横の倉庫のような建物に入り、そこにあるエレベーターで下りる形であった。
 かなり地下深い所まで一気に下り、エレベーターを降りると、一変してメタリックな光景が広がる。
 ここが、この施設のメインである。
 ゲストのはずなのだが、まるで収監された囚人のようだ。
 エレベーターを降りて真っ直ぐに歩くと、途中に鉄格子の扉がある。
 その先には、防護服のような重装備をした守衛2人が待ち構えていた。
 しかも、手にはショットガンやライフルを持っている。
 ここは、リサのような危険なBOWを収監している所なのだ。

 守衛:「面会は2人までとなっています。どなたが行きますか?」
 愛原:「2人だけ!?」
 守衛:「はい」
 愛原:「もちろん、凛さんは外せない。となると、残り1人だが……」

 リサには会わせない方がいいだろう。
 リサもキレると手が付けられなくなることがある。
 あれだけ言い聞かせても、何かの拍子でブチギレることも考えられる。
 それならば……。

 愛原:「高橋、お前行ってくれ」
 高橋:「お、俺っスか?」
 愛原:「ああ。リサに会わせると、ちょっとマズいことになるかもしれん」
 高橋:「わ、分かりました」

 面会時の撮影・録音は禁止されているが、メモは禁止されていない。
 私は高橋に、どんなやり取りをしたかメモするように伝えておいた。

 守衛:「それでは待機の方は、こちらへどうぞ」

 私とリサは、会議室のような部屋に通された。
 高橋と凛さんは、面会室へ行く。

 愛原:「面会時間はどれくらいですか?」
 守衛:「30分を下回らない時間となっています」
 愛原:「刑務所と同じですね」
 守衛:「そうですね。因みに、そこを出て左に行くとお手洗いがあります。また、お手洗いの横に自販機がありますので、そこも使って頂いて構いません」
 愛原:「分かりました。ありがとうございます」
 守衛:「それでは、終了しましたら呼びに参ります」

 守衛さんが出て行き、部屋には私とリサだけになる。

 リサ:「ヤだな……、この雰囲気」
 愛原:「やっぱりか?俺でも落ち着かないからな。リサなんか、もっと落ち着かないだろう?」
 リサ:「そうだね。ちょっとトイレ行って来る」
 愛原:「行ってらっしゃい」

 リサは守衛さんに教わった場所のトイレへと向かっていった。
 さて、到着したはいいものの……ヒマになっちゃったな。
 私は自分のスマホを取り出した。
 地下とはいえ、ちゃんと電波は入るようだ。
 しかも、Wi-Fiまで飛んでいるくらいだ。
 恐らく、ここでは職員用なのだろう。
 パスワードを入力しないと繋がらないみたいだったし、どこにもパスワードは書かれていなかったので。
 ……と、思いきや。

 リサ:「ただいま」

 しばらくして、リサが戻って来た。

 愛原:「お帰り。トイレ、どうだった?」
 リサ:「まあまあ、きれいだった。和式じゃなかったし」
 愛原:「んん?」
 リサ:「アンブレラの研究所では、わたし達は和式トイレを使わされたの」
 愛原:「ああ、前に言ってたな!検便とか、採尿しやすいようにする為だろ?」
 リサ:「それと、わたし達のトイレシーンを見る為」
 愛原:「……ここのトイレは洋式だったんだろ?じゃあ、大丈夫だよ。俺も行って来る。ついでに、何か飲み物買って来るけど?」
 リサ:「オレンジジュースかリンゴジュースで」
 愛原:「分かった」
 リサ:「それと……」
 愛原:「何だ?」
 リサ:「ここ、Wi-Fi繋がるみたい」
 愛原:「そうみたいだな。だけど、パスワードが分からない」
 リサ:「トイレに書いてあった」
 愛原:「トイレに書いてあったのか!」

 何でトイレに?
 普通、こういう部屋とかに書いてないか?
 私は首を傾げながらトイレに向かった。

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