報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“戦う社長の物語” 「水面下におけるロイド達のやり取り」

2018-03-16 10:15:32 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月13日19:00.天候:晴 静岡県富士宮市ひばりが丘 スーパーホテル富士宮]

 敷島:「シンディはここで待っててくれ。もし出先で何かあったら、すぐに呼ぶから」
 シンディ:「かしこまりました」

 敷島はシンディを留守番させる方を選択した。

 シンディはオーナーとユーザーが食事に行っている間、客室のライティングデスクの椅子に座っていた。
 脇腹から延びるコードは、充電用のケーブルだ。
 それで室内のコンセントに繋いで、自分も充電している。
 もちろん充電中であっても電源は入っているので、コードが届く所までは行動できる。
 尚、窓の縦引きカーテンは完全に閉めており、外から部屋の様子は見えない。
 シンディは元スナイパーだ。
 その辺は上手く心得ている。
 もっとも、ホテル周辺には、遠くから部屋に銃弾を撃ち込める箇所など無いのだが。
 それにしたって、外から敷島達の部屋が分からないようにするに越したことは無い。

 エミリー:「シンディ、シンディ。応答せよ」

 そこへエミリーから通信が入った。

 シンディ:「姉さん?修理は終わったの?」
 エミリー:「さっき、何とか終わった。私の代理、務めてくれてありがとう」
 シンディ:「それは何とも無いわ。それより、今は仙台?」
 エミリー:「そうだ。明日、平賀博士に連れられてそちらに向かう」
 シンディ:「こっちは静岡の富士宮。黒いロボットの手掛かりを追っていたら、KR団の吉塚博士に辿り着いたってわけ」
 エミリー:「吉塚博士は、ドクター・ウィリーのバージョンシリーズとは用途は同じだが、それとは違うタイプのロボットの開発をさせられていた。多分それが黒いロボットの元祖だろう」
 シンディ:「何で知ってるの!?」
 エミリー:「私のメモリーの奥深くに少し入ってた。昔……まだ敷島社長が南里研究所に来られる前、実は南里博士は吉塚博士と会っていたのだ。あの時の私はロボット同然だったから、大してメモリーに入れて無かったが……(というより、当時の性能ではまだメモリーの容量が小さかった)」
 シンディ:「マジか……。それと、9号機のデイジーは知ってるでしょ?寝返ったわ」
 エミリー:「デイジーが?……そうか。私達よりも新型だから、少し警戒した方がいい」
 シンディ:「私の廉価版・劣化版でしょ?それなら、そんなに心配無いと思うけど……」
 エミリー:「それでも私達より新しいタイプなことに変わりは無い。ジャニスとルディはそこに却って弱点があったが、アルエットは手ごわかった」
 シンディ:「っつっても、アルは別に敵対してなかったし」

 ジャニスとルディの弱点。
 それは自分達が最新型だと奢り、旧型とバカにしていたエミリーとシンディに油断したこと。
 のみならず、人間までも見下したこと。

 エミリー:「その探索で、色々な物は手にしたのだろう?」
 シンディ:「ええ。今、それは私が見張ってる」
 エミリー:「そうか。それは誰の命令だ?」
 シンディ:「社長よ」
 エミリー:「さすがは社長だ。もしシンディを護衛に連れて行ったりしたら、今頃部屋に侵入されて、その重要なサンプルが持ち去れていただろう」
 シンディ:「ええっ!?」
 エミリー:「黒いロボットは未だに稼働している。あいつら、体を出来る限り小さく折り畳んだり、手足のパーツを自分で取り外しできるから、それで小さな隙間からも入って来れるんだ」
 シンディ:「色合いといい、ゴキブリみたいな奴らだねぇ……」

[同日20:00.天候:晴 同ホテル客室]

 ドアロックが解除される音が聞こえる。
 すぐにドアが開いて入って来たのは敷島とアリス。

 シンディ:「お帰りなさいませ」
 敷島:「おうっ!今帰ったぞー!」
 アリス:「おえ……飲み過ぎた……」

 シンディを使役しているオーナーとユーザーの夫婦は、完全に泥酔していた。

 シンディ:「博士、大丈夫ですか?」
 敷島:「少しは加減しろって言ったんだがな。全く」
 シンディ:「またメイドロイド談義でもされたんですか?」
 敷島:「相も変わらず、不毛な論争だ。所詮は酔っ払いだよ」

 そういう敷島も、だいぶ顔が赤い。

 敷島:「取りあえず、そこに寝かせとけ」
 シンディ:「大丈夫でしょうか?」
 敷島:「心配すんな。こんなこともあろうかと、ソルマック買っておいたから」
 シンディ:「どの時点で想定されていたのですか?」
 敷島:「俺は風呂入って来るぞ」
 シンディ:「はい。温泉でしたね。博士も楽しみにしておられましたのに……」
 敷島:「明日の朝入ればいいだろ。チェックアウトの時間まで入れるんだから」
 シンディ:「それもそうですね」
 敷島:「ま、俺は朝風呂よりも夜入る方だから」

 敷島はロビーから持って来た浴衣に着替えた。
 ここのホテルは大浴場がある関係で、温泉地の旅館やホテルのように、浴衣で館内を行き来しても良いことになっている。

[同日21:00. 天候:晴 宮城県仙台市青葉区 東北工科大学・南里志郎記念館]

 エントランスホールでピアノを弾くエミリー。
 本来の演奏時間は17時だが、今はそれを無視している。
 修理が終わって、別に今はここにいなくてもいいのだが、エミリーはあえて明日の出発までここにいることを望んだ。

 バージョン4.0-4:「エミリー様、ソロソロ充電ノオ時間デス」
 エミリー:「分かった」

 ちゃんとバージョン4.0の4号機(B4-4)、エミリーが一曲弾き終わってから声を掛ける。

 B4-4:「何カ思ワレル所ガ有ノデスカ?」
 エミリー:「いや、別に」

 エミリーは鍵盤の蓋を閉じた。
 バージョンに先導されて、玉座のある部屋まで向かう。

 エミリー:「お前達に命令しておくことがある」
 B4-4:「ハッ、何デショウ?」
 エミリー:「私達の後継機とされる……9号機のデイジーを名乗る者が来ても、『ブロック』しろよ。命令は一切聞いていけない」
 B4-4:「か、カシコマリマシタ」
 エミリー:(シンディはあまり気にしていないようだが……レイチェルのような策士みたいなプログラムが組み込まれていたなら……危険だな)

 エミリーは充電の準備をしながら玉座に座り、そう考えた。

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