[5月1日11:42.天候:晴 東京都墨田区菊川 菊川駅前バス停→都営バス東20系統車内]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は午前中だけ事務所を開けていたのだが、特に何か仕事の依頼の電話があるわけでもなく、そのまま事務所を閉めてバス停に移動した。
愛原:「斉藤社長やデイライトさんから仕事を切られたら、俺ら路頭に迷うぞ?」
高橋:「先生の名探偵ぶりが理解できないなんて、情けない連中ですね!」
愛原:「そうかなぁ……」
そんなことを話していると、1時間に一本だけのバスが新大橋通りから左折して来た。
〔「東京駅丸の内北口行きです」〕
前扉からバスに乗り、後ろの席に行く。
〔発車致します。お掴まりください〕
バスは私達を乗せると発車した。
2人席に座ると、高橋が少し窮屈そうである。
が、私と密着できて、別のベクトルで嬉しいようだ。
〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは東京都現代美術館前、日本橋経由、東京駅丸の内北口行きでございます。次は森下五丁目、森下五丁目でございます。……〕
愛原:「リサに連絡しておこう。俺達はバスに乗ったって」
高橋:「しかし先生、このバスで行っても相当余裕があるんじゃないですか?」
愛原:「俺達は東京駅のどこかで飯でも食えばいいだろ。あと、オマエの煙草タイムもある」
高橋:「先生……。俺のタバコを気に掛けてくれるなんて、この大慈大悲に報恩感謝の念は絶えません……」
愛原:「いちいち暑苦しいセリフ吐くなよ、オマエ……」
初っ端から高橋トーク聞かされる身にもなってみー?
[同日12:12.天候:曇 東京都千代田区丸の内 都営バス呉服橋バス停→JR東京駅]
〔ピンポーン♪ 次は呉服橋、呉服橋でございます。地下鉄大手町駅、東京駅日本橋口、鉄鋼ビルディングへおいでの方は、こちらが便利です。次は、呉服橋でございます〕
愛原:「ここで降りよう」
私は後者ボタン手を伸ばした。
〔次、止まります。バスが停車するまで、そのままお待ちください〕
リサからの返信は来た。
予定通り、授業は昼で終わるという。
その足で上野駅まで来てくれれば良い。
〔「ご乗車ありがとうございました。呉服橋です」〕
バスが永大通り上のバス停に停車した。
私達は中扉から降りる。
都営バスは国道上の専用バス停、JRバスとその路線に乗り入れている高速バスは日本橋口のロータリーと棲み分けされている。
どちらの降車場にも屋根が無いので、雨の時は大変である。
愛原:「ん?何か雲が出て来たな……」
高橋:「午後から関東地方は雨だそうです」
愛原:「マジ?」
高橋:「はい。しかも、北関東に行くほど降水確率が高めです
愛原:「おいおい、聞いてねーよ」
高橋:「俺も言うの忘れてました。サーセン」
愛原:「因みに明日も雨なのか?」
高橋:「いや、明日は晴れるみたいですね」
愛原:「そうか。今日だけ持たせればいいのか……」
高橋:「そういうことになります」
そんなことを話しながら、到着するJRバスを横目に東京駅に入る。
日本橋口は特に珍しい物があるわけではないのだが、たまに入り口前で記念撮影をしている旅行客を見かける。
そしてその光景は、緊急事態宣言発出中においても変わらない。
ただ、さすがに緊急事態宣言発出前と比べて変わった所はある。
日本橋口に入ると、丸の内口とはまた違う大きな吹き抜けの広場がある。
ここはよく団体客が待ち合わせをしている場所で、コロナ禍前の全盛期にはツアー客でごった返し、そこを歩くのも一苦労だった。
しかし今はそんなことがまるで夢であったかのように、団体客の姿は殆ど見られなくなってしまった。
ピンク色のジャンパーを着た阪急交通社や、黄色いベストを着たクラブツーリズムの案内人達はどこへ行ったのだろう?
尚、旅行会社でも集合場所の棲み分けがされていたようで、日本橋口では阪急交通社やクラブツーリズム、八重洲北口ではJTBや読売旅行などが待ち合わせ場所に指定していた。
愛原:「俺達みたいな個人旅行客や少人数のグループ客はそこそこ見受けられるが、やっぱり団体ツアーは下火になっているな」
高橋:「時代ですかね」
愛原:「コロナ禍という名の時代だよ。それより、どこで食べようか?」
高橋:「俺は先生の残り物でいいです」
愛原:「フザけてると置いてくぞ?」
高橋:「さ、サーセン!」
[同日13:08 天候:曇 東京駅・東北新幹線ホーム→東北新幹線259B列車8号車内]
昼食を食べた私達は、その足で八重洲北口改札からコンコースに入った。
そこから更に、新幹線改札口を抜ける。
先にトイレに行ってからホームに上がった。
喫煙所はホーム上にあるが、トイレはコンコース内にしか無いからである(意外とこのトラップに引っ掛かる人多し。ホーム上でトイレを探し、コンコース内で喫煙所を探す人をまま見かける)。
〔20番線に、13時12分発、“なすの”259号、郡山行きが10両編成で参ります。この電車は、終点まで各駅に停車致します。……グリーン車は9号車、自由席は1号車から5号車です。まもなく20番線に、“なすの”259号、郡山行きが参ります。黄色い点字ブロックまで、お下がりください〕
指定席のキップ片手に列車を待つ。
もちろん、売店で缶ビールとおつまみを購入するのは忘れない。
今は車内販売が無いからだ。
〔「20番線、ご注意ください。当駅始発の東北新幹線各駅停車の“なすの”259号、郡山行きが参ります。黄色い点字ブロックまでお下がりください」〕
座席を逆向きにした状態で、列車が入線してくる。
既に車内清掃済みで、すぐに乗れるからだろう。
私達の乗車する8号車から、高橋が向かった喫煙所は少し離れている。
まだ、高橋は戻って来ない。
いっそのことタバコをやめてみてはどうかと勧めてみたことがあったのだが、『トチロ~がタバコをやめたら俺もやめます』と意味不明な返しをして来やがった。
〔「20番線、まもなくドアが開きます。乗車口までお進みください。業務放送、259B車掌、準備できましたらドア操作願います」〕
ドアが開いて、私は先に乗り込んだ。
2人席を前後して指定されている。
私は窓側に座らせてもらおう。
上座だ。
で、後ろの2人席にはリサ達に座ってもらう。
もちろんのこと、そのキップは既にリサ達に渡している。
上野駅から乗って来る予定だ。
〔「ご案内致します。この電車は13時12分発、東北新幹線“なすの”259号、郡山行きでございます。これから先、上野、大宮、小山、宇都宮、那須塩原、新白河、終点郡山の順に各駅に止まります。電車は1番前が10号車、1番後ろが1号車てす。自由席は1号車から5号車、グリーン車は9号車です。尚、10号車のグランクラスにつきましては、“なすの”号に限り、当分の間、営業を取り止めております。……」〕
“なすの”は区間運転各駅停車ということもあって、空いていることが多い。
東海道新幹線で言えば、“こだま”は全般的に空いていて、その中でも静岡止まりや三島止まりはもっと空いているのと同じことだ。
その中にあって、グリーン車でもガラガラなのに、グランクラスなど空気輸送もいい所だろう。
しかし、アテンダントを乗せないばかりか、グランクラスのキップを売らなくなるとは……。
高橋:「先生、お待たせしました」
私が先に缶ビールの蓋とおつまみの袋を開けていると、高橋が戻って来た。
高橋:「あっ、先生!ズルい!俺も混ぜてくださいよ!」
愛原:「分かったよ、ほら」
私は高橋に缶チューハイを渡した。
高橋:「やった!」
本来、主役は絵恋さんなので、私達が先に盛り上がってしまうのは申し訳ない。
そうしている間に列車は東京駅を発車したので、東北新幹線は定刻通りに運転していると実感した。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は午前中だけ事務所を開けていたのだが、特に何か仕事の依頼の電話があるわけでもなく、そのまま事務所を閉めてバス停に移動した。
愛原:「斉藤社長やデイライトさんから仕事を切られたら、俺ら路頭に迷うぞ?」
高橋:「先生の名探偵ぶりが理解できないなんて、情けない連中ですね!」
愛原:「そうかなぁ……」
そんなことを話していると、1時間に一本だけのバスが新大橋通りから左折して来た。
〔「東京駅丸の内北口行きです」〕
前扉からバスに乗り、後ろの席に行く。
〔発車致します。お掴まりください〕
バスは私達を乗せると発車した。
2人席に座ると、高橋が少し窮屈そうである。
が、私と密着できて、別のベクトルで嬉しいようだ。
〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは東京都現代美術館前、日本橋経由、東京駅丸の内北口行きでございます。次は森下五丁目、森下五丁目でございます。……〕
愛原:「リサに連絡しておこう。俺達はバスに乗ったって」
高橋:「しかし先生、このバスで行っても相当余裕があるんじゃないですか?」
愛原:「俺達は東京駅のどこかで飯でも食えばいいだろ。あと、オマエの煙草タイムもある」
高橋:「先生……。俺のタバコを気に掛けてくれるなんて、この大慈大悲に報恩感謝の念は絶えません……」
愛原:「いちいち暑苦しいセリフ吐くなよ、オマエ……」
初っ端から高橋トーク聞かされる身にもなってみー?
[同日12:12.天候:曇 東京都千代田区丸の内 都営バス呉服橋バス停→JR東京駅]
〔ピンポーン♪ 次は呉服橋、呉服橋でございます。地下鉄大手町駅、東京駅日本橋口、鉄鋼ビルディングへおいでの方は、こちらが便利です。次は、呉服橋でございます〕
愛原:「ここで降りよう」
私は後者ボタン手を伸ばした。
〔次、止まります。バスが停車するまで、そのままお待ちください〕
リサからの返信は来た。
予定通り、授業は昼で終わるという。
その足で上野駅まで来てくれれば良い。
〔「ご乗車ありがとうございました。呉服橋です」〕
バスが永大通り上のバス停に停車した。
私達は中扉から降りる。
都営バスは国道上の専用バス停、JRバスとその路線に乗り入れている高速バスは日本橋口のロータリーと棲み分けされている。
どちらの降車場にも屋根が無いので、雨の時は大変である。
愛原:「ん?何か雲が出て来たな……」
高橋:「午後から関東地方は雨だそうです」
愛原:「マジ?」
高橋:「はい。しかも、北関東に行くほど降水確率が高めです
愛原:「おいおい、聞いてねーよ」
高橋:「俺も言うの忘れてました。サーセン」
愛原:「因みに明日も雨なのか?」
高橋:「いや、明日は晴れるみたいですね」
愛原:「そうか。今日だけ持たせればいいのか……」
高橋:「そういうことになります」
そんなことを話しながら、到着するJRバスを横目に東京駅に入る。
日本橋口は特に珍しい物があるわけではないのだが、たまに入り口前で記念撮影をしている旅行客を見かける。
そしてその光景は、緊急事態宣言発出中においても変わらない。
ただ、さすがに緊急事態宣言発出前と比べて変わった所はある。
日本橋口に入ると、丸の内口とはまた違う大きな吹き抜けの広場がある。
ここはよく団体客が待ち合わせをしている場所で、コロナ禍前の全盛期にはツアー客でごった返し、そこを歩くのも一苦労だった。
しかし今はそんなことがまるで夢であったかのように、団体客の姿は殆ど見られなくなってしまった。
ピンク色のジャンパーを着た阪急交通社や、黄色いベストを着たクラブツーリズムの案内人達はどこへ行ったのだろう?
尚、旅行会社でも集合場所の棲み分けがされていたようで、日本橋口では阪急交通社やクラブツーリズム、八重洲北口ではJTBや読売旅行などが待ち合わせ場所に指定していた。
愛原:「俺達みたいな個人旅行客や少人数のグループ客はそこそこ見受けられるが、やっぱり団体ツアーは下火になっているな」
高橋:「時代ですかね」
愛原:「コロナ禍という名の時代だよ。それより、どこで食べようか?」
高橋:「俺は先生の残り物でいいです」
愛原:「フザけてると置いてくぞ?」
高橋:「さ、サーセン!」
[同日13:08 天候:曇 東京駅・東北新幹線ホーム→東北新幹線259B列車8号車内]
昼食を食べた私達は、その足で八重洲北口改札からコンコースに入った。
そこから更に、新幹線改札口を抜ける。
先にトイレに行ってからホームに上がった。
喫煙所はホーム上にあるが、トイレはコンコース内にしか無いからである(意外とこのトラップに引っ掛かる人多し。ホーム上でトイレを探し、コンコース内で喫煙所を探す人をまま見かける)。
〔20番線に、13時12分発、“なすの”259号、郡山行きが10両編成で参ります。この電車は、終点まで各駅に停車致します。……グリーン車は9号車、自由席は1号車から5号車です。まもなく20番線に、“なすの”259号、郡山行きが参ります。黄色い点字ブロックまで、お下がりください〕
指定席のキップ片手に列車を待つ。
もちろん、売店で缶ビールとおつまみを購入するのは忘れない。
今は車内販売が無いからだ。
〔「20番線、ご注意ください。当駅始発の東北新幹線各駅停車の“なすの”259号、郡山行きが参ります。黄色い点字ブロックまでお下がりください」〕
座席を逆向きにした状態で、列車が入線してくる。
既に車内清掃済みで、すぐに乗れるからだろう。
私達の乗車する8号車から、高橋が向かった喫煙所は少し離れている。
まだ、高橋は戻って来ない。
いっそのことタバコをやめてみてはどうかと勧めてみたことがあったのだが、『トチロ~がタバコをやめたら俺もやめます』と意味不明な返しをして来やがった。
〔「20番線、まもなくドアが開きます。乗車口までお進みください。業務放送、259B車掌、準備できましたらドア操作願います」〕
ドアが開いて、私は先に乗り込んだ。
2人席を前後して指定されている。
私は窓側に座らせてもらおう。
上座だ。
で、後ろの2人席にはリサ達に座ってもらう。
もちろんのこと、そのキップは既にリサ達に渡している。
上野駅から乗って来る予定だ。
〔「ご案内致します。この電車は13時12分発、東北新幹線“なすの”259号、郡山行きでございます。これから先、上野、大宮、小山、宇都宮、那須塩原、新白河、終点郡山の順に各駅に止まります。電車は1番前が10号車、1番後ろが1号車てす。自由席は1号車から5号車、グリーン車は9号車です。尚、10号車のグランクラスにつきましては、“なすの”号に限り、当分の間、営業を取り止めております。……」〕
“なすの”は区間運転各駅停車ということもあって、空いていることが多い。
東海道新幹線で言えば、“こだま”は全般的に空いていて、その中でも静岡止まりや三島止まりはもっと空いているのと同じことだ。
その中にあって、グリーン車でもガラガラなのに、グランクラスなど空気輸送もいい所だろう。
しかし、アテンダントを乗せないばかりか、グランクラスのキップを売らなくなるとは……。
高橋:「先生、お待たせしました」
私が先に缶ビールの蓋とおつまみの袋を開けていると、高橋が戻って来た。
高橋:「あっ、先生!ズルい!俺も混ぜてくださいよ!」
愛原:「分かったよ、ほら」
私は高橋に缶チューハイを渡した。
高橋:「やった!」
本来、主役は絵恋さんなので、私達が先に盛り上がってしまうのは申し訳ない。
そうしている間に列車は東京駅を発車したので、東北新幹線は定刻通りに運転していると実感した。