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村上香住子著:『巴里ノート』

2017年03月06日 | 読書

図書館で必要な本を借りたついでに、ちょっと目に留まったこの本、『巴里ノート』も一緒に借りて来ました。以前何回か行ったパリ、どんなことが書いてあるのかなと思いながら...。
<村上香住子著『巴里ノート』>

著者の村上香住子さんはフランス文学の翻訳をされていましたが、1985年に雑誌の特派員としてパリに渡り、ファッションを中心に取材、執筆。1994年から2005年までは「フィガロジャパン」のパリ支局長をされておられたようで、20年間のパリ滞在の後、帰国。現在は短編小説、評論を文芸誌に発表されているようです。

この本の出版年を見ると2008年で、情報が少し古いようにも思えますがフランス人気質などはそうそう変わるものではないので、結構面白く興味深く読みました。

著者は取材をした相手には東京では少しではあるけれど現金で謝礼をしていたのが、パリではその様な時は、お花を贈るのが一般的な習慣だと教えられたのでそうしていたそうです。パリでは花屋さんもブランド化していて、贈られた人は必ずどこの花屋さんから届いたかをチェックするのだそうですね。

又、花を選ぶ時、
すみれ色の目の女性には紫系の花を、グリーンアイズの人には緑がかったカラーやカーネーションという具合に、贈る相手の目の色に合わせたりするようで、日本人の発想にはないことですね。こげ茶色の目の人には、どんな色の花になるんでしょね。オレンジ色系のお花かな~?

薔薇の花を贈る時は普通は奇数だけれど、お礼の場合は12本、愛の告白は30本がいいと言われているのだとか。

新聞事情として、パリには「フィガロ」「
リベラシオン」「ル・モンド」などがあり、どの新聞を読んでいるかで、その人の属する社会的階層がわかるといわれている様です。

ところが最近はフリーペーパーが沢山出現し、一応それぞれのターゲットに向けた情報が満載されているので、短時間で状況を把握したい人達にとって、それらは充分満足のいくものになっているのだそうです。

そういえばフランスの新聞は日本の様に早朝に家に配達されず、お店で買うものだと聞いたことがありますが、フリーペーパーの出現で一般の新聞はますます伸び悩むのではと感じます。

この本の著者はパリの高級ブランド街のサン・トノレ通りにあるアパルトマンに住まわれていて、そこから毎朝パレ・ロワイヤルを通って職場の「マダム・フィガロ」編集部まで通勤されていたようです。

そのパレ・ロワイヤルについて数ページをさいて記述されていますが、著者にとってここは思い出深い場所だったのでしょう。

パレ・ロワイヤルには私も何回か行ったことがあります。ここはパリの中心部ですが、オペラ座辺りの様に観光客でごった返すこともなく静かな所で、庭園のベンチに腰掛けて持参したサンドイッチを食べたこともあります。その頃は回廊に添ってレストラン、アンティークショップ、勲章などを売っているお店、自然素材のリネン類のお店などがあり、資生堂のショップもここにありました。

庭園入り口には現代アートのダニエル・ビュランの白と黒の柱やキューブが置かれていて、ルイ14世が幼い頃住まわれていた17世紀の古い建物とそれらが不思議に調和し穏やかな時間が流れている、そんな場所でした。この本の著者の村上さん同様に、私にとってもパレ・ロワイヤルはパリの好きな場所の一つです。

古いものに価値を与えるフランスの価値観は若者達に閉鎖的で重苦しく感じられる様で、そんなパリの若者達の心をつかんだのが日本の漫画なのだそうです。TVで日本のアニメが放送されたり、カルチェ・ラタンに漫画専門店が出来たりというのは時々私も耳にしますが、パリには漫画喫茶もあり、「ドラゴンボールZ」、「美少女戦士セーラームーン」などと共に、夏目漱石の「坊ちゃん」の漫画も注目されているそうで、驚きです。

古いものを大切にする国で窒息ぎみだった若者達にとって、日本はまたとない夢の国に見えるのでしょうと著者は書いておられます。

ワインについてのページでは、
フランスのワイン業界は目下大きな悩みを抱えていているようです。カリフォルニアやチリからのいい味のワインが安価で出回るようになって、フランスのワイン業界は出荷が大幅に減少してきているうえに、フランスの若者のワイン離れが深刻で、伝統を重んじるワイン業者も、とうとう2007年に缶やペットボトル入りワインの発売に踏み切ったのだそうです。

がしかし漫画世代の若者達がそうしたペットボトル入りのワインに、今後関心を示すかどうかはわからないと書いておられます。そういえば私もよくワインを飲みますが、ほとんどがカリフォルニアやチリ産の安い
ワインです。お味も結構いけますしね。

ふと目に入って借りたこの本ですが、パリのガイド本とは一味違って、なかなか興味深い内容で読みごたえがありました。改めて手にとって表紙を眺めると、セピア色のパリの写真も素敵で、もうだいぶ前に何回か行ったパリのことを懐かしく思い出させてくれる、そんな本でした。

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