日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

「科学者は謙虚、かつ毅然たれ」の余波

2009-12-06 11:26:26 | 学問・教育・研究
12月3日に投稿した科学者は謙虚、かつ毅然たれに思いがけなく多数の方のアクセスを頂いた。どのように受け取っていただいたのか私にも判断がつきかねるが、Googleで「科学者は謙虚、かつ毅然たれ」を検索した結果を一瞥すると、目立ったのが「評判良かった岡野先生たちの声明を批判してる」とのコメントであった。評判良かった声明というのは『慶應義塾大学グローバルCOEプログラム2拠点、「幹細胞医学のための教育研究拠点」拠点リーダー岡野栄之と、「In vivo ヒト代謝システム生物学拠点」拠点リーダー末松誠からの共同声明』のことである。

この声明が世間でどのように評判が良かったのか私は迂闊にも知らなかったが、私自身『現在進行中のプロジェクトを支える予算が削減されれば大打撃なので、プロジェクトリーダーがこのように反応するのは当然のことであろう。素早い反応はプロジェクトリーダーの真摯な責任感のあらわれとして評価するのに吝かではない』と一定の評価をした上で批判的な感想を述べたのである。それが若手研究者を始めとする一部の現役科学者の反発を呼び起こした可能性はありうると思う。その上、科学者のモチベーションとして知識欲を強調したものだから、『霞を食って生きていけるのか』との反発を引き起こした面もある。私はまず理念の面を述べ、その上に立って考えられる現実的な動きを述べるつもりであったので、それを昨日の「グローバルCOEプログラム」予算が削られても若手研究者の雇用を維持すべきだで記した。声明が若手研究者の役割・処遇をここまで強調する以上、かりに予算が削減されてもそれは人件費以外の削減で対処し、若手研究者の首切りを一切しないだろうと声明の「有言実行」を期待する一方で、それを確実なものとすべく若手研究者を鼓舞し奮起を促したのである。

ところが今朝、嬉しいことに私のこれまでのブログ記事を丹念に拾い、私の一貫した考えの要点を的確に理解してくださっている方の存在を知った。若い学者さんたちのチャンスなのにねえである。私が日頃から主張している研究費の分け方についても私の記事をまず紹介してくださっている。

一言で云えば「グローバルCOEプログラム」は高度な研究能力を有する人材育成には迂遠なものである。と云うより、『人材育成』が大砲巨艦の建造、陣地の構築の口実になっているようにも見える。これを本末転倒という。

高度な研究能力を有する人材育成を本気で目指すのなら、またそうであるべきだが、若い能力のある研究者に思う存分自分の発想で研究をさせる、それが最も望まれることである。若手研究者とはポストドクと30歳代前半の助教クラスを主体に、特例として博士課程の大学院生とするのが妥当であろう。彼ら自身が研究リーダーになるのである。「ポストドク募集」に群がるようなシステムではない。自ら研究費と生活費を獲得するのである。

その上で

ようは、中抜きしてる連中もボスの教授も全部すっ飛ばして、若手に金をまけと言ってるんで、実現可能性はともかく、話としてはずっと分かりやすいし、一般にも納得をさせやすい話だと思う。

と要領よくまとめてくださっている。ここまで丹念に読み取っていただけるとはまさにブロガー冥利に尽きるもの、と紹介させていただく。

若手研究者の奮起を心から期待する。