日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

大学院期間を共済組合加入期間に入れるべきでは?

2008-09-19 20:57:00 | 学問・教育・研究
机の周りを整理していたら「ねんきん特別便」の封筒が出てきた。年金加入記録回答票に必要事項を書き込んで送り返すらしいが、未だにほったらかしにしている。知らせて貰った「あなたの加入記録」を見ると、私のデータは6項目が横並び一行に納まっている。あまりにも簡単なので、わざわざ送り返すこともなかろうという気があったのだろう。その記録とは国家公務員共済組合に組合員としての資格を取得した年月日、資格を失った年月日、そして加入月数がおもなもので、最後の加入月数は私の場合404ヶ月となっている。それを見ると大学院博士課程を修了してから16ヶ月は私はいわゆる博士浪人で無職であったことを今更のように思い出した。それに加えてこの404ヶ月というのを眺めていると、これまでも釈然としない思いが甦ってきた。それはこいうことである。

大学院の5年間はまだ学生の身分なのである。だから授業料を大学に納めていた。その頃はそれが当たり前のこととしてなにも疑うことはなかったが、年金生活に入って暇に任せて考え出すと、あれやこれやの疑問が生じてきたのである。1950年代、私の所属していた研究室では学部を卒業するとすぐに助手に採用された先輩がいた。その時から給料が頂けたのである。次の年に卒業した先輩はもう助手のポストが埋まっていたので大学院に進んだ。給料を貰うどころが反対に授業料を払わないといけなかった。しかし両者が研究室でやっていることは目立って違わない。同じように後輩の指導に当たっていた。大学院の先輩は課程博士として博士号を取得したが、助手の先輩も同じ頃に論文博士としての博士号を取得した。表面的には両者に違いは見えなかったが、実は大きな違いがすでに生じていたのである。課程博士の先輩が大学に職を得た時点で、助手の先輩より年金支給額計算の元になる組合員加入期間が最低5年間、すなわち60ヶ月も少なくなってるのである。組合員加入期間は年金はもちろん退職金の計算に効いてくるので、60ヶ月の違いはきわめて大きい。

私たちの頃は大学院に進む以上は大学に残ることを前提にしていたと思う。院生はいずれは大学を背負って立つ教員になるのだから、大学を会社にたとえるともう立派な新入社員である。会社では大卒を社員として採用してからは給料を払いながら一人前の社員に育てていくのが普通であろう。それが大学では社員に相当する院生に給料を出さずに授業料まで取っているのである。院生は将来の大学教育の担い手として、元来国が育て上げるべきところ、真理探求の知的欲望に世間を見る眼が視野狭窄に陥っているのをいいことに、国は実に阿漕なことをやって来たのだと見ることも出来る。わが国の高等教育費の支出水準が国際比較できわめて低いレベルであることが指摘されているが、一番費用のかかる人件費を個人の負担に押しつけているのだから当然である。

大学の重要な構成要員である教員の養成は元来国の仕事であるべきなのに、それを個人(院生)の持ち出しに頼るとはあまりにも不甲斐なき政府の仕業である。自衛隊員は全部国費で養成しているではないか。大学教員の重要性が自衛隊員にも及ばないとは到底思えない。大学院教育の抜本的見直しの前提として、将来の大学・大学院教育を担う院生の社会的位置づけを明確なものにすべきで、それは院生期間を共済組合加入期間に組み入れられるような性格のものでなければならないと思う。この実現に向けて大学人の奮起を期待したい。給料なしに授業料は払わされるは、年金はぐんと減らされるは、とかっての院生はダブルパンチを食らわされているにもかかわらず、なんと健気に教育に研究という社会的責務をちゃんと果たしてきたことだろうと、しばらくの自己陶酔をお許し頂こう。