星のひとかけ

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『それゆえに愛はもどる』ロバート・ネイサン著

2018-10-29 | 文学にまつわるあれこれ(妖精の島)
一昨年、 ロバート・ネイサン著の『ジェニーの肖像』という本について書きました。
(ジェニーの肖像 過去ログ>>

あのとき、 創元推理文庫版の『ジェニーの肖像』には もう一作品『それゆえに愛は戻る』(大友香奈子 訳)も収録されていて… と書きましたが、 その作品については何も触れませんでしたね。

今回、 『それゆえに愛はもどる』を昭和51年 文化出版局版 矢野徹 訳のもので読むことができ、、 二年前の印象とはまた違った新鮮さと、 今の気持ちやたまたま今の状況と繋がりあう何かがあったのか、、 心につよく感じるものがありました。 翻訳のせいもあるのか、、 それとも、、 いまが10月のせいなのか、、 あるいは このところ頭の中にずっとずっと フレディの歌声が入れ替わり立ち代わり脳内再生されつづけているせいなのか…

Can anybody find me somebody to love... ♪ って…

 ***

『それゆえに愛はもどる』は ロバート・ネイサンによる一篇の詩から始まっています。 「いまは青い十月」と 矢野さんは翻訳されている詩。

原文は、、「Now Blue October Robert Nathan」で検索すれば どこかのサイトで読めると思います。 、、矢野さんの訳から、、 詩の最後の部分だけすこし…



最後の二行は…

 And love, before the cold November rain,
 Will make its summer in the heart again.

、、 だから、、 この十月のおわりに、、 どうしても読みたかった(書きたかった)のです。。

 ***

ストーリーは 少し『ジェニーの肖像』と似ています。 『ジェニー…』の主人公は若い貧しい画家の青年でしたけど、、 こちらは 妻を失った(4歳と5歳かな?)子供のいる売れない作家、、 暮らしているのは 「海を見はるかす岩棚のうえに立っていた… 砂漠かと見まちがう色をしたカリフォルニアの丘陵地帯」

トゥリシャとクリスという姉と弟の子供たちは 母を喪ったあとも天使たちのように愛らしく 貧しいながらも楽しそうにけなげにパパとの暮らしをおくっています。 作家は いつか自分の作品が有名に… 何かの賞を… そんな日をかすかに夢見ながらも 子供向けの物語を毎月出版社に送ってその小切手が届くのを待つ生活をしています。。 可愛らしい子供たち、、 裕福にはほど遠いけれども生活はしていける日々、、 目の前にひろがる美しい海岸、、 つつましくも穏やかな暮らしには違いないのだけれど、、 



 「…だが、喜びは分けられる。 愛もそうだ。」


、、 ロバート・ネイサンは詩人です、、 だから こういう 短いけれども心に突き刺さる一文が ところどころに出てきて、 はっと胸が疼くのです、、。

ストーリーだけを追っていったら 海の妖精を想像させる、 『ジェニーの肖像』を読んでいればなおさら想像されうる 大人のおとぎ話、、。 喪った愛の洞穴に 幻像のようにあらわれる不思議な女性… 

、、だから その物語の筋というか、 結末のあり方とかに 大きな意味を求めるのがこの書の読み方ではないような気がします。

 
 「男の人生には、 ひとつ以上の愛をうけ入れる余地があるんだ」


… こんな 台詞もでてきます。。 身勝手…? 本音…? 真理…? 嘘…?  、、笑


先に挙げた クイーンの歌と同様…

  Find me somebody to love
  Somebody somebody somebody somebody
  ・・・
  Can anybody find me somebody to love?


誰かを失っても、、 ふたたび 希わざるを得ない心 求めることのやまない愛…

そういう心の物語、、 なのでした。。


『それゆえに愛はもどる』 So Love Returns 1958年の本ですので、 「男は…」 「女は…」 「男の子は…」 「女の子は…」 というような記述が多くでてきて、 現代にはちょっとそぐわない価値観もあるかもしれないけど、、 「人は…」 「少年の心をもった人は…」 「少女の心をもった人は…」 というように読み替えることはできるかもしれない、、 人が人を求めること、、 少年の心が求める冒険、、 少女の心が求める優しさや夢、、 そこの普遍性は時代が変わっても変わらないものもあるように思う。。

ロバート・ネイサンの愛の物語、、 矢野徹さんの訳書でふたたび読めたらいいのに、、 

 ***



Now Blue October


今朝のカーテン越しの夜明けです…
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