星のひとかけ

文学、音楽、アート、、etc.
好きなもののこと すこしずつ…

ダン・エッティンガー指揮 東京交響楽団@サントリーホール

2018-10-23 | LIVEにまつわるあれこれ
20日(土)はお友だちと待ち合わせてサントリーホールへ。

ダン・エッティンガー指揮 東京交響楽団定期演奏会(写真右↓)

曲目 ワーグナー:ヴェーゼンドンク歌曲集
   ベルリオーズ:幻想交響曲 op.14



ダン・エッティンガーさんは初めて。 イスラエル生まれの現在47歳。
経歴を見ると オペラが得意のようで「ウィーン国立歌劇場…ほか 世界の主要歌劇場に出演し国際的評価を確立…」とのこと。(プログラムより)

前半の「ヴェーゼンドンク歌曲集」は、ワーグナーとマティルデ・ヴェーゼンドンク夫人(当時のパトロンの妻)との道ならぬ恋から生まれた歌曲… 
プログラムには歌曲の詩 
 1.天使 Der Engel
 2.とまれ Stehe still!
 3.温室にて Im Treibhaus
 4.悩み(心痛) Schmerzen
 5.夢 Träume
がすべて載っているので、 今度よく楽曲を聴きながら詩も味わってみたいと思います。 Wikiを見ると、 この詩はヴェーゼンドンク夫人によるものらしいので、 マティルデのワーグナーへの想いも一緒に読み取れるのかもしれません。

演奏では さすが歌劇を得意とするらしく、 メゾソプラノのエドナさんの歌を引き立てるように、 速さの緩急、音の強弱、弦の揺れの感じまで両手で細かく指示を出します。 とりわけ 音をごくごく小さく抑えたまま ソプラノの歌声と演奏が消え入るように でも幽かな煌めきを残しながら長く響く美しさは格別でした。 自分の呼吸音さえも邪魔になりそうな静寂で そっと息を詰めるくらい、、、

 ***

そして 休憩のあとの「幻想交響曲」 これが凄かった~~♪

もう オーケストラの交響曲というより、 音楽による夢幻の劇場のようでした…。。 
「幻想交響曲」はベルリオーズの悲恋(片思い)に基づいたもので、 「若き芸術家が失恋し、 阿片を呑んで服毒自殺を図るが致死量に達せず、 その阿片夢の中で芸術家は愛する女性を殺害し、 そのため断頭台へ送られ処刑され、 冥界で魔女や妖魔や怪物の饗宴に導かれる…」 というじつにロマン派的な内容。 詳しくはWikiで>>

 第1楽章「夢、情熱」 (Rêveries, Passions)
 第2楽章「舞踏会」 (Un bal)
 第3楽章「野の風景」 (Scène aux champs)
 第4楽章「断頭台への行進」 (Marche au supplice)
 第5楽章「魔女の夜宴の夢」 (Songe d'une nuit du Sabbat)

今回の東響さんのステージでは、 「舞踏会」の楽章では4台のハープがオーケストラの最前におかれて、、 ハープ4台の響き、、 はじめて聴きました。 ハープって 本当に「夢」のような音色ですね。
ハープ4台が並んだ様子は壮観でした… ミューザ川崎のtwitterに写真が>>

ダン・エッティンガーさんの指揮は非常にダイナミック。 先にも書いたように緩急、強弱、弦のヴィブラート、あとパートさんへ思いきり指差し指示… 右へ、左へ…
同行の友いわく、、「応援団の三々七拍子みだいだった…笑」、、 ほんとに。。 指揮者さんというか応援団長ぽい、、

そして超びっくりしたのが まさかの「足ダン!」、、 指揮しながら指揮台を足で「ダン!」て踏み鳴らすのです、、 最初なにが起こったかと… 怒ったのかと思っちゃった…。。 第1、第4、第5楽章中だったかな?? 全部で3回くらい踏み鳴らしまして、、 指揮者さん自ら音を発するの初めて見ました…笑

第4楽章の最後で 断頭台の首が落ち、ウォーーーと観衆が沸くシーンでは、、 客席からまさかの「ブラヴォー」コールというアクシデント(?)も経て、、 魑魅魍魎が跋扈する狂乱の第5楽章へ、、
第5楽章で素敵だったのは、 鐘の鳴る部分に 大きな教会の塔にあるような鐘が2台用意されていて それが素晴らしい音で鳴り響いてました。 そして自在にリズムを変えながら楽団を煽りまくるダン氏。 リズムの緩急の指示にちょっとオケのコントロールが崩壊気味になるところがありましたけれど、、 まぁそれも含めて魑魅魍魎の怖ろしさということで…

、、私の好きなマルケヴィチのベルリンフィル盤だと 第5楽章のあのリズムが三連符みたいになるところなどびしっと決まってキレッキレの鋭さがあるのですが、 今回のうねるような混沌気味の第5楽章も 見ていて 聴いていて 大変面白かったです。

そして 東京交響楽団さんの木管さんのソロパートなども大変美しかったです。

 ***

ベルリオーズはこの楽曲を創るにあたって、 英国の文学者トマス・ド・クインシーの『阿片常用者の告白』の中の阿片幻想にインスパイアされた、、というのは 多分いろんな解説にも書かれていると思うのですけど、、 幻想交響曲の初演が1830年、 『阿片常用者…』の英国での雑誌掲載が1821年で、、 ずいぶん早いな(ボードレールが『人工楽園』で『阿片常用者…』を訳出したのが1850年代だから)、、と思っていたら

BBCで放送されたというこちらの記事を見たら、 ベルリオーズは アルフレッド・ド・ミュッセが最初に訳した仏語版の『阿片常用者…』を参考にしたらしいと、、
Opium and the Symphonie Fantastique

ミュッセ版は手元にないので ド・クインシーの『阿片常用者…Confessions of An English Opium Eater』に依りますが、、 確かにド・クインシーの描く阿片夢の描写と ベルリオーズの内容には共通するところが幾つもあります。 恋人を殺害はしないけれど、、 愛する人の死、 田園風景の夢の中での再会や、 阿片夢に現れる舞踏会、 そして最後の怖ろしい生き物たちに苛まれる恐怖、、
(その気も狂わんばかりの… という部分をほんの少し↓ 野島秀勝訳)



、、話はとびますが かつて ダリオ・アルジェント監督が撮り、 今度、音楽をトム・ヨークが担当してリメイクされた映画『サスペリア』は、、 もともとダリオ・アルジェント監督が ド・クインシーの『阿片常用者…』の続編である 『深き淵よりの嘆息 Suspiria de Profundis』にインスパイアされて制作したもの、、 
、、ということは以前から読んで知っていたのですが 一体『サスペリア』のどこが『深き淵より…』と関係があるのか 読んでもち~っともわかりません、、 が、 映画は次の『インフェルノ』や『サスペリア・テルザ 最後の魔女』との三部作をもって それらがド・クインシーの中の「レヴァナとわれらの悲しみの貴婦人たち」に出てくる「三姉妹」をモチーフにしているのですね(…と思って読んでもやはりサスペリアとの関連はよく読み取れないですが…)。。
 
ド・クインシーの幻想の文学、、 いろんなところに引き継がれているわけです、、 以上余談です。 (トム・ヨークのサントラにもちょっと興味があります)

トマス・ド・クインシーに関する過去ログ>>

 ***

話を戻して、、 ダン・エッティンガーさんの指揮は大変ダイナミックで見ていて楽しかったです。

来年には 再び東京交響楽団さんとクシュシュトフ・ウルバンスキ君との演奏会を聴きに行くことにしています(上記写真左) 今度はショスタコーヴィチです。 楽しみ…

さきほど、 ドイツのエルプフィルとウルバンスキさんとの ホルスト「惑星」と「スターウォーズ」(?) という素敵なフルバージョン映像を見つけましたので また見てみたいと思います、、 相変わらずスタイルの好いウルバンスキ君です。。
Elbphilharmonie LIVE | »Star Wars« & »Die Planeten« von Holst mit dem NDR Elbphilharmonie Orchester


明日は 映画『ボヘミアン・ラプソディ』に行くのだーーー!!(狂喜♡)


フレディに会える…
この記事についてブログを書く
« ヘニング・マンケルさんの菓... | TOP | 映画『ボヘミアン・ラプソデ... »
最新の画像もっと見る

Recent Entries | LIVEにまつわるあれこれ