星のひとかけ

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永遠の…:イーディス・ウォートン著『無垢の時代』と『続・若草物語』の時代

2023-10-12 | 文学にまつわるあれこれ(ほんの話)
秋晴れの日々… 気持ちのよい青空がひろがっていますね。

先週のワクチン接種の後、 腕の痛みや頭痛の副反応が消えていったのに なんだか妙な気怠さとしんどさが続いて、、 インフルワクチンを打った時もなんとなくそうでしたが、 感染と似たような状態に身体がしばらくなるのかしら…

副反応なのか、 溜まっていた夏の疲労が出たのか、 それとも単なる老化現象…? なんだかわからないけど… というあたりがそれが老化なのかも…? 笑

まぁ 気にしないきにしない。。 そんな時こそ 今年の目標(ノンシャラン)という魔法のことばを思い出しましょう… 拘泥しない、 惑わされない…  nonchalant…

だいじょうぶよ、、 …昨日あたりからは動けるようになって、 夏じまいと冬じたくのお洗濯 たくさんしています。。 読書もようやく…


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『無垢の時代』イーディス・ウォートン著 、、この本のことはちゃんと読み終えてからにしますが…  、、このタイトル 最初なんのこと? と思って あたまの遠くに「エイジ・オブ・イノセンス」という映画があったな… と浮かんできたら その映画の原作だったのでした。

ダニエル・デイ=ルイス主演の、 華やかな上流階級の社交界を描いた映画、、 30年近く前の公開のころ たぶん観ているはずなのだけど 殆んど何もおぼえてない… 読み始めて、 舞台が(はじまりは) 1870年代のニューヨークだというのもぜんぜん記憶していなかったです。。

でも、 あらためて文章で読みはじめて、 そのオールド・ニューヨークという社会があのマンハッタン島に存在していたことにも驚き、、 だって「ギャング・オブ・ニューヨーク」で描かれた移民の島NYと、 とにかく厳格で品位ある上流階級の暮らしを守りつづける「無垢の時代」のNYが結びつかなくて、、

それで、 1870年代…? といったら、 私のとぼしい知識のなかでは 『若草物語』の第二部で、 ジョーが物書き修行と(ローリーの愛から距離を置くために) 家庭教師として下宿するのがニューヨークではなかった? そこでドイツ出身の貧乏教師ベア先生に出会う、 あれも同じ時代のNYだったはずでは…?

そう思い立って、 『無垢の時代』と『続若草物語』と ルイザ・メイ・オールコットの日記とを見比べて、、 いろいろ驚きながら読み進めているところなのです。。

そうすると 『無垢の時代』で描かれる一部の上流階級の、 夜な夜なオペラや晩餐会や舞踏会にあつまって華やかな社交を繰り広げている人々が ほんの一握りの社会で、 いかに閉鎖的なちいさな社会なのかが見えてきて、、(でも資産はうなるほど持っていて)

同じマンハッタン島の、 彼らの言う(いかがわしい)とか(下等な)とかいう地区には 若草物語のジョーが暮らしたような労働者も教師も学生もごっちゃに住んでいる下宿があったり、 新しい芸術家や作家たちが集まる場所ができたり、、 (それが今につながるNYのイメージだと思いますが) そういう新しい階層の進出を、 オールド・ニューヨークの御仁たちがいかに脅威を感じていたか、 というのもリアルに感じてくる。。 

じっさいオルコットは ニューヨークで 「過激主義者」(とか書かれている。トランセンデタリズムのことなのかな…)の集まりに参加したりしていて、、 それが当時どんなに進歩的というか過激なことだったのか、 『無垢の時代』と並べて読んでみると あぁ… なるほどとよく解ってくるのでした。

 ***

「エイジ・オブ・イノセンス」は 上流階級の若き弁護士(ダニエル・デイ=ルイス)が、 婚約のお披露目をした矢先、 ヨーロッパ帰りの自由な考えをもつ伯爵夫人(ミシェル・ファイファー)と出会い惹きつけられていく、、というストーリーですが

(手前勝手に…)『若草物語』と較べてみると、、 ジョーに想いを寄せるローリーは まさにこのデイ=ルイスに近い上流階級の立場であって、 ジョーたち姉妹は貧しくとも ローリーには上流階級なりの「社交界」での生活もあったはずなのです。。 …そう思ったら、 物語には描かれていないローリーの(大学生活とか実業家としての社交の)世界、というのも読んでみたいな~ と。。

ローリーはやがて 自分にふさわしい貴婦人となった末っ子エイミーを妻にするのですが、 そんな時になっても 「僕は君を愛することをやめようとは思わない」とジョーに語ったりする、、 兄として 友人として、 またそれ以上の存在として、、。 これって『無垢の時代』の青年ニューランドと同じ立場なのかも。。 『若草物語』では少女小説らしく深くは描かれませんけれど…


  あなたは現にまじめな良識ある実業家になって、お金を有意義に使い、富を積む代わりに、貧しい人たちからの祝福を積んでいます ・・・略・・ 私はほんとうにあなたを誇りと思っているのよ、テディ。 あなたは年をとるたびにりっぱになっていくわ・・・

『続若草物語』の最後のほうで ローリーはジョーからこんな言葉をおくられますが、 篤志家となってジョーの設立した自由学校をささえていくローリーと、 『無垢の時代』の弁護士ニューランドとを 合わせて読んでみるのもいいかな、、と興味深く思っているところです。


上流階級のローリーのことを べつに穿った見方をしているわけではないですよ。。 ローリーはジョーの自由な人となりを心から愛したのだろうし、 物語を書いたオルコットは、 現実にはそんなことは難しいのを知っていたけれども、 永遠の友そして永遠に誰よりも愛してやまない間柄としての二人を、 自分の理想として書きとどめたかったのでしょう… 


だから私も 永遠にローリーを愛するのです…


ローリーの愛した自由な精神や…


オルコットが苦しみながらも明るく描きつづけた少女たちのひたむきさを…




  ・・あなたが帰ってきたら、私の苦労なんかみんなどっかへ飛んで行っちまったようよ。 あなたはいつだって私の慰め手だったのね、テディ・・
           (『続若草物語』吉田勝江・訳)




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