星のひとかけ

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フェルメールと17世紀オランダ絵画展とメトロポリタン美術館展:わたしの 20/35

2022-03-23 | アートにまつわるあれこれ
今月は二週つづけて美術館へでかけました。
3回目のワクチン接種も終えたし(最近、ワクチン接種のことあまり言わなくなってきましたね)、、 ここのところ自分の体力もついてきてるし、、 それにもうコロナに感覚が麻痺してきた、というのが本音かもしれません。。 2年ぶりの美術館は愉しかったです。

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まずは ドレスデン国立古典絵画館 フェルメールと17世紀オランダ絵画展 東京都美術館 

この展覧会の一番の話題は、 フェルメールの「窓辺で手紙を読む女」。 
背景の壁に塗り潰されて消えていた《キューピッド像》が 約300年ぶりに修復によって描かれた当時の姿でよみがえった、 というものですね。

この「窓辺で手紙を読む女」、、 2005年の来日時に見ているんです、 キューピッドのいないバージョンのものを。

あのとき見た構図、 何もない広い壁の、室内のしずかな雰囲気が(自分が思っているイメージの)フェルメールらしい静けさに思われて、、 今回 壁にキューピッドの大きな絵があるのが当初のフェルメールの絵と知った時には、 えーー!?と思いました。 で、(そのままにしておけばいいのに…)と 正直そう思って。。

キューピッドが塗り潰されたのは フェルメールの死後のことだったんですね。 そういわれれば他のフェルメール作品でも 室内の壁には額や地図が掛かっているものが多いですし、、 でも… あの天使(キューピッド) 大き過ぎません…?

展示では、 修復後のキューピッドのある絵と、 キューピッドのいない絵(複製)とが 両方あって、 比較して見ることができるようになっていました。 近くに椅子のスペースもあって、 座って少し遠くから両方の絵を見比べることもできて、 展示室はとてもゆったりとしていました。 ほかの絵画もゆっくりと気持ち良く鑑賞できました。

それはすごく良かったのですが… 、、 同行の友はなにやら不満の様子、、
 「カーテンレールが見えない!」と。。

そうなのです。 今回のフェルメールは、黒い幅広の額に入っていたのですが、 緑のカーテンの上部にまっすぐカーテンレールが横切っているはずのものが 額の中に隠れてしまっているのか、見えないのです。。 カーテンの下の部分も、 絵の左右も少しずつ切れてしまっている、、 左の窓枠も見えないし、、

こちらのサイトに(和楽>>)、 フェルメールの全35点の作品を集めたものが載っていますが、 その図像で見ても、 上のカーテンレールまでちゃんと見えているはずなのですが…

そのせいか、 前回見たときの、 しずかな明るい空間という印象から、 なんだか圧迫感のあるせまい部屋の印象に…。 修復で色彩はひとまわり明るくなったようで、 カーテンの緑もとても美しかったですが…。
 

いま、、 他のフェルメールの作品も見ていて気付いたことが…
このキューピッドの絵は、 「ヴァージナルの前に立つ女」の背景にあるキューピッドの額と同じ絵なのですね。。 とすると、 キューピッドの上に掲げた左手には手紙を持っているのですね。 それが「窓辺で手紙を読む女」では カーテンに隠れて見えないようになっている。。
それを知ったうえで見れば、 なんだか、キューピッドの持っていた手紙が この女性のもとに届けられて、 それを読んでいるみたいな、、 そんなストーリーも想像できます。 カーテンをぱっと開けたら、 持っていたはずの手紙が今は無い! なんてヘンな想像をする面白さも…

「中断された音楽の稽古」という絵の背後にあるのも、 もしかして同じキューピッドの絵でしょうか、、 あちらの絵も女性が手紙をひらいていますね。。 


、、 いろいろ想像する楽しみはあるけれど、、 やはり 壁のキューピッドは無いほうが好きかな。。。 いえ、、 やっぱりキューピッドの隠された左手、、 ってところがポイントなのかも… と今は思い始めています。

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メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年国立新美術館

こちらは 西洋絵画の500年、とタイトルにあるように、 ルネサンスから近代まで 著名な画家がずらりと並んだとても贅沢な作品展でした。 どれもが見応えのある作品なので、、 個人的に気に入った作品についてだけ…

エル・グレコ 「羊飼いの礼拝」(MET美術館の画像>>
幼子イエスを見守るまわりの人物の動きと表情が生き生きとしていて、 聖なる歓びに満ち溢れている絵。 左端の暗がりにそっと顔をのぞかせているロバさんまで 優しいお顔で歓びにつつまれている気がする…

サルヴァトール・ローザ 「自画像」 (>>
この絵はうれしい驚きでした。 サルヴァトール・ローザといえば、 荒々しい渓谷や滝といった風景画が有名で、 夏目漱石が『草枕』のなかで この人が絵の研究のために山賊になったことがあると語っている、、 その本人の「自画像」が拝めるなんて…。 
とても知的で高貴な雰囲気のあるかたでした。 髑髏の頭蓋骨にペンで文字を書いている長い端正な指先、、 綺麗に爪が整えられていて、 茶色のマニキュア(?)が施されていました。

ベラスケス 「男性の肖像」(>>
こちらは自画像とは書かれていないのですけど でもベラスケスらしい重厚さと圧倒的な存在感。 まなざしも鼻梁の肌の質感とか柔らかさや、、 その人の存在感が絵から浮き出てくるようでした。

ムリーリョ 「聖母子」(>>
思わず か、かわいい…! と呟いてしまう幼子イエスの愛らしさ。 聖母子像の赤ちゃんって、 たいがいあまり可愛くないことが多いように思うのですが(スミマセン…) このムリーリョの幼子の可愛いこと。 お目ゝがちょっと離れ気味であまえた感じでこっちを見てて、、思わず微笑んでしまいます。。
ムリーリョの描く子供たちもマリア様も、 可愛らしい絵が多いですよね。 きっと優しいかただったんじゃないかな~

フェルメール 「信仰の寓意」(>>
フェルメールのなかでは後期にあたる作品のようで、 技量も確立したからか さまざまな寓意を描き込んで盛り込み過ぎにも感じられる作品、、 なので そんなに好きな絵ではないのですが いっぱいいっぱい読み込むことができる絵、という感じ。 
天井から下がったガラス球の表面に映った窓などの微小な像とか、 天球儀とか 石板につぶされた蛇とか。。 
この背後の壁にはキリストの磔刑図がかかっていますが、、 フェルメールの描いた磔刑図とか、、見てみたかったです。。(「マリアとマルタの家のキリスト」は以前に見ました)

メトロポリタン美術館には あと2点見ていないフェルメールの作品が所蔵されています。 「眠る女」と 「少女」という作品、、 また待っていたらいつかお目にかかれるかしら。。

これで私が見ることの出来たフェルメール作品は20点になりました。 (前回まとめた記事はこちら>>


近代の作品では、 マネ、モネ、ゴヤ、ドガ、ルノワール、ゴッホと、、 名の知れた画家ばかり。。 大好きな画家クールベの日本初公開作が2点見れたのは嬉しかったです。 「漁船」は海をたくさん描いたクールベらしい波の部分の描き方にくらべて、 妙に正確にリアルに描かれている船の部分がなんだか浮いてて、、ちょっと不思議でした。

「水浴する若い女性」(>>)は、、 よく言われる、クールベの描くリアリズムの女性像は醜い、、とか、、 絵の説明文にも (肌のセルライト)なんてことまで書かれてて(笑)、、 そんなに醜いとは思わなかったんですけど…。。 足先を水に浸した透明感がよかったです。


ゴッホの「花咲く果樹園」
林檎かな、、 杏かな、、 明るい色調のやさしい絵でした。 ゴッホ展などでまとめて集中しながら見るときはゴッホらしい激しいタッチに目を奪われがちですが、、 この絵のように たくさんの絵画にまじって さりげなく展示されているゴッホの絵に、 あらためて光と色彩と花の生命のみずみずしさを感じました。 素敵な絵でした。


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コロナ禍も3年目、、 そして いま世界を揺るがしているロシアの愚かしい軍事侵攻、、

世界の美術館から作品が貸し出されて、 飛行機で輸送されて、、 それがどれだけ貴重で平和なことか、、 今の戦争が(ほんとうはこれを戦争などと呼びたくない、、 こんな一方的な侵略、暴力、テロ、殺人…)、、 これが続いている限り、 海外の美術品を日本で観ることは輸送の問題もあってますます大変になっていくことでしょう。。 
でも、戦下で苦しんでいる人を考えたらそんなことは耐えます、もちろん。。。 だけど…

前に、、 エルミタージュ美術館の、ソ連時代の公開されずにいた西洋絵画のこと 書きましたね。。(この日記の下のほうに>>
またあの時代に逆戻りするのでしょう ロシアは。。 独裁者はそれでいいんでしょう。。 だけど、、 命の危険にあるひとたちの事、、

早く、、 一刻も早く、、 包囲されたひとびとを助けて… どうにかして。。


そればかりを考えています。。



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