ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

特定受給資格者? 特定理由離職者?

2017-10-23 07:59:13 | 労務情報

 ちょうど10年前の平成19年10月に雇用保険法が改正され、失業給付を受給するには、原則として「12ヶ月以上」の被保険者期間が必要となった。いまだに「6ヶ月以上」で受給権を得られるものと記憶している人もいるようだが、現行制度では、それは「特定受給資格者」と「特定理由離職者」に限っての扱いとなっている。

 「特定受給資格者」とは、倒産や解雇等により離職を余儀なくされた者であって、いわゆる“会社都合”での離職者を言う。
 もう一つの「特定理由離職者」とは、平成21年に新設された区分で、「正当な理由のある自己都合により離職した者」を言う。特定理由離職者は、失業給付に際して、当面は(当初は「平成24年3月31日までの暫定措置」であったが、現在は「平成34年3月31日まで」に延長されている)特定受給資格者と同様の扱いをするものとされている。
 なお、これに「有期雇用契約の更新を希望したにもかかわらず更新されずに契約満了となり離職した者」を含む取り扱いは、今は廃止されている。

 まれに、「正当な理由=会社都合である」と誤解してか、「特定受給資格者」として扱うよう会社に求めてくる退職者もいると聞くが、会社はそれに応じる必要は無い。
 確かに、例えば「配偶者の転勤により通勤困難になったため」というような理由は、単なる「転職希望」とは性格を異にする正当な離職理由ではある。しかし、そうであっても、“自己都合”であることに変わりはないのだ。
 もし、そのように求めてくる退職者がいたら、「特定理由離職者」という区分があって、給付制限や給付日数等についても「特定受給資格者」と同様に扱われることを説明し、理解を求めるのが正しい対処だ。


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部下に資格取得を命じる際に注意しておくべきこと

2017-10-13 22:39:31 | 労務情報

 業務上、従業員に、特定の資格を取得してもらう必要がある場合には、会社はそれを命じることができる。そして、従業員は正当な理由なくその命令を拒むことはできないものとされる。このことは、すべての業務命令に共通する考え方だ。
 しかし、資格取得命令に関しては、直接的に業務を行うための命令とは扱いを異にする点があり、それに関しては、下命側(上司)・受命側(部下)ともに誤解している向きがあるので、ここで整理しておきたい。

 まず、受験そのものに掛かった費用に関しては、受験料は言うまでもなく、受験会場までの交通費や受験時間相当分の賃金も、会社が負担しなければならない。これらはすべて業務命令を遂行するために必要な経費だからだ。
 ちなみに、仮に受験結果が不合格であった場合でも、これらを会社に返還させることはできない(大阪高判S43.1.28)。なお、資格取得の成否が社内評価(人事考課や昇格査定等)に影響することについては、それが業務命令である以上、当然と言えよう。

 それから、資格を取得するために必要な学習時間については、労働時間として賃金支払いの対象しなければならない。これに関しては、従来グレーに扱われがちであったが、先ごろ策定された「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(H29.1.20基発0120第3号)には労働時間に含むべきことが明記されている。
 また、労災事案ではあるが「技術士資格受験のための勉強も会社の指揮監督の下での残業というべき」と判じられた裁判例(大阪地判H21.4.20)も参考になりそうだ。

 一方で、資格取得のために学校に通うことに関しては微妙かも知れない。
 例えば自動車運転免許のように、その資格を取得するためには学校(この例では自動車教習所)に通うのが一般的とされているなら会社がその費用を負担することについて異論を挟む余地は無さそうだが、必ずしも学校に通わなくても取得できる資格の場合に、その費用や、ましてその時間分の賃金を支払うかどうかは、会社の考え方によって異なる。
 また、資格が取得できた折に奨励金(一時的なもの)や資格手当(恒久的なもの)といった金員を支給するかどうかも、会社ごとに異なって然るべきものだ。
 もっとも、こうした制度は、一般的に“自己啓発”を促すモティベーションとしての機能を期待されていることが多いが。

 経営者や管理職としては、これらを踏まえたうえで、安易に資格取得を命じるのでなく、自己啓発とも組み合わせながら、部下のポテンシャルを向上させることを考えるべきだろう。


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死亡退職金は誰が受け取ることになっているか

2017-10-03 18:49:09 | 労務情報

 退職金には、①賃金の後払い、②功労への報償、③退職後の生活保障、という3つの性格があるとされる。これらは従業員本人が死亡したことによっても否定されるものではない(③は「遺族の生活保障」と読み替えられる)ので、従業員が死亡退職した場合であっても、会社は退職金を支給しなければならない。その点、賞与には「将来の労働への意欲向上」という4つめの性格があるため「支給日に在籍しない者には賞与を支給しない」旨の定めを置くことが許されるが、それとは異なる。

 では、本人が死亡してしまった場合、会社は誰に対して退職金を支給するのか。

 それは、会社の退職金規程がどう定めているかによる。
 もし退職金規程に死亡退職金の受取人について定めが無ければ、相続人全員による遺産分割協議が整った後に、各相続人に対してそれぞれの相続分に応じて退職金を支給することになる。
 一方、退職金規程に死亡退職金の受取人が明記してあれば、遺産分割協議を待たずに、定められた受取人に退職金を支給すれば良い。その方が実務面で簡便であり、また、遺族間のトラブルも生じにくいので、一般的には定めを置いておくことが推奨されている。

 ところが、その定めを「労働基準法施行規則第42条から第45条までに準じる」としている場合(実際このように定めている例が数多く見受けられる)は、これが新たなトラブルの火種となることが往々にしてあるので、要注意だ。
 というのも、ここで準用する労働基準法施行規則第42条第1項は、「遺族補償を受けるべき者は、労働者の配偶者(婚姻の届出をしなくとも事実上婚姻と同様の関係にある者を含む。以下同じ。)とする」と定めており、事実婚を認めているからだ。
 つまり、退職金規程にこれと同じ規定があったなら、死亡した従業員が戸籍上は独身であっても、あるいは戸籍上の配偶者がいたとしても婚姻が破綻しているとみなされる場合は、内縁関係にある者がいたなら、その者に対して退職金を支給しなければならないことになる。
 なお、同規則第43条第2項には「労働者が遺言又は使用者に対してした予告で前項に規定する者のうち特定の者を指定した場合においては、前項の規定にかかわらず、遺族補償を受けるべき者は、その指定した者とする」とあるが、この規定は第42条に劣後するので、遺言等があっても配偶者(内縁を含む)が第1順位であることは揺るがないことも覚えておきたい。

 死亡退職金の受取人について定めがあったらあったで、こういった事態も起こりうることを担当者は承知しておかなければならない。また、退職金制度の新設や改定を予定している会社は、こうした点も勘案して死亡退職金の受取人をどうするかを検討するべきだろう。


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