ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

「紹介予定派遣」の適正かつ上手な活用を

2022-12-23 09:02:01 | 労務情報

 臨時で労働力が不足したとき、それが急を要するのなら、真っ先に頼るべきは「労働者派遣」だろう。 若干コストは掛かっても、採用に費やす時間や労力の比ではないからだ。

 ところで、労働者派遣において最もネックになるのが、労働者派遣法第26条が禁じている「労働者を特定する行為」ではなかろうか。
 派遣先としては労働者の事前面談くらいしておきたいところだが、派遣の場合、それは原則として許されていないのだ。

 もし会社として「労働者を選びたい」というのであれば、通常の「労働者派遣」ではなくて「紹介予定派遣」(派遣期間満了後に派遣先が直接雇用することを前提に締結した派遣契約)を検討すると良いだろう。 紹介予定派遣であれば、事前面談することも容認されており、また、派遣期間中(最長6か月)に本人の適性を見て正式な採否を判断することも可能だからだ。
 一方で、派遣労働者本人にとっては、知らない会社にいきなり直接雇用されるのは仕事や労務管理の面で不安なため、「体験入社」という意味での「紹介予定派遣」へのニーズも少なくない。特に知名度の無い新興企業に対してはそれが顕著である。

 しかし、紹介予定派遣は、通常の労働者派遣とは異なるゆえのデメリットもある…‥

※この続きは、『実務に即した人事トラブル防止の秘訣集』でお読みください。

  

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派遣先責任者の選任義務とその活用について

2022-12-13 10:24:48 | 労務情報

 派遣労働者を受け入れる事業所(派遣労働者の数と直接雇用する労働者の数との合計が5人以下の事業所を除く)は、「派遣先責任者」を選任して次の事項を行わせなければならない(労働者派遣法第41条、労働者派遣法施行規則第34条第1号ただし書き)。
  1.派遣労働者を指揮命令する者および関係者に、労働者派遣法等・労働者派遣契約の定め・派遣先への通知について周知すること
  2.派遣期間の変更について派遣元へ通知すること
  3.派遣先における均衡待遇の確保に関すること
  4.派遣先管理台帳の作成・保存および派遣元への通知
  5.派遣労働者から申し出を受けた苦情の処理
  6.派遣労働者の安全・衛生に関し、当該事業所の管理者および派遣元との連絡調整
  7.その他派遣元との連絡調整

 すなわち、派遣先責任者の役割は、端的に言ってしまえば「派遣労働者が働きやすい環境を作ること」だ。
 そして、それは「生産性の向上」という形で会社に返ってくる。
 逆に、もし派遣先責任者がその職責を果たさなければ、派遣労働者が働きにくくなりかねず、そのことが職場全体の就労意欲に、ひいては経営にも悪影響を及ぼすことも懸念されうる。

 一方で、派遣先責任者への就任により「その者自身のスキルが向上する」という副産物もある。
 上に列挙した職務は、管理職として部下を管理することに通じるので、管理職候補者に経験を積ませる目的で派遣先責任者に就かせるのも、人材育成の観点から一考に値するだろう。

 厚生労働省が示した「派遣先が講ずべき措置に関する指針」(平成11年労働省告示第138号、令和2年厚生労働省告示第346号)は、派遣先責任者には「労働関係法令に関する知識を有する」「人事労務管理等の専門的知識や経験を有する」「派遣労働者の就業に係る一定の権限を有する」といった者を選任するよう“努める”ことを求めている。
 もちろん知識・経験・権限の全く無い者を派遣先責任者に就かせるべきではないが、その職務を遂行する中でこれらを高めていくことを会社が企図するのも、悪くなかろう。 現在のところは受講を義務づけられていない「派遣先責任者講習」を受講させるのも一策だ。

 いずれにしても、派遣先責任者を「義務づけられているから選任する」というスタンスで形式的に置くだけなのは、実にもったいない。 選任が義務づけられていればこそ、会社はそれを有意義に活用するべきだろう。


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従業員の家族が同業他社に勤務していることが判明したら

2022-12-03 12:21:43 | 労務情報

 家族の職業や勤務先は従業員本人にとってはセンシティブな情報であって、それを会社に報告させるのは、少なくとも罰則をもって強制するのは難しい。
 会社が家族関係の情報を入手する目的としては「課税処理や年末調整のため」「社会保険の加入手続きのため」「家族手当や慶弔見舞金等の支給可否判断のため」「緊急時の連絡のため」等が考えられるところ、「家族の職業や勤務先」はこれらに関係ないからだ。

 これを踏まえたうえでの論になるが、従業員から任意的に報告させたり、インフォーマルに情報を入手したりして、従業員の家族が同業他社に勤務していることが判明した場合、「同業他社に機密が漏洩するおそれあり」として当該従業員を解雇することは可能なのだろうか。

 結論を言うと、それを理由に解雇するのは、さすがに無理だ。
 従業員と家族とは別人格であり、現に機密を漏洩したのならともかく、その“おそれ”では、解雇の理由にはなりえない。 夫が同業他社に勤めているという理由で妻を試用期間中に解雇した事案において「仮に秘密が漏洩するおそれがあるのであれば、秘密保持のための適宜の措置を取ればいいのであって、解雇の合理的理由とは認められない」とした裁判例(大阪地判H16.3.11)もある。

 では、会社からの一方的な解雇ではなく、退職を勧奨するのであればどうか。
 退職勧奨自体に違法性はないので、詐欺や強迫が無い限り問題ないと考えられる。 しかし、退職勧奨はあくまで“勧奨”であるので、本人が応じなければ意味が無いし、本人に納得してもらうための“パッケージ”を用意する必要があるかも知れない。

 一方、これが採用前であったら少し様相は異なる。
 面接等で家族について質問することは「不適切な採用選考」として行政指導の対象となりうるが、“雑談”の中で応募者が自ら家族が同業他社に勤務している旨を話したのなら、それをもって不採用とすることは問題ない。 その応募者を従業員として採用するもしないも「営業活動の自由」に属するからだ。

 さて、ここまでは組織から排除する方法について述べてきたが、当該従業員について組織の中での配置を変えるのは、どうだろうか。
 配置転換は、人事権(会社が有する「経営権」に属する権限の一つ)の行使として、ある程度の裁量が認められる。例えば「機密を取り扱う部署から他部署へ異動させる」といったケースであれば、その配置転換に合理的な理由があると言えよう。 ただし、合理的な理由があっても、経営上の必要性と比較衡量して従業員の受ける不利益が過大である場合は“権利の濫用”として無効となることもある(参考判例:最二判S.61.7.14)ので、特に転居を伴う配転命令は要注意だ。

 詰まるところ当該従業員の人材としての有用性次第という話にもなりそうだが、いずれにしても、感情を先行させず、冷静に、会社にとっての真の損得を考えて判断したい。


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