ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

失業給付の増額が助成金にも影響

2017-07-23 21:59:46 | 労務情報


 平成29年8月1日から雇用保険の基本手当日額が改定される。これは、雇用保険法の規定に基づき、「毎月勤労統計」の平均定期給与額の上昇又は低下した比率に応じて、毎年自動的に変更されるものだ。
 具体的に「45歳以上60歳未満」の基本手当日額で見てみると、現行では「(最低)1832円~(最高)7775円」であるものが、変更後は「(最低)1976円~(最高)8205円」に増額される。

【参考】厚生労働省サイト > 雇用保険の基本手当日額の変更
 ↓
こちら(新しいタグまたはウインドウが開きます)

 このことは、失業者ばかりでなく、実は、雇用に関する助成金を受けている会社にも影響する話だ。
 例えば「雇用調整助成金(※)」は、会社が休業した場合に休業手当の一部を助成するものだが、その支給額は、1日あたり「基本手当日額の最高額」を上限としている。したがって、8月1日以降の申請分については、助成金の支給額も増額される可能性がある。
 ※かつて中小企業向けには「中小企業緊急雇用安定助成金」があったが、現行制度では「雇用調整助成金」に統合されている。

 ほんの数日待てば助成金の受給額が増えるなら、申請のタイミングを調整することを考えても良いだろう。

 なお、このサイトでも何度か書いているように、助成金制度は上手に利用するべきものであって、あてにし過ぎてはならないので、ご注意あれ。


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社内恋愛を禁じ、あるいはそれをもって懲戒することは可能か

2017-07-13 15:59:58 | 労務情報


 従業員同士の恋愛に頭を悩ませている経営者もいることだろう。
 従業員間の恋愛関係が業務にプラスに働くケースも無いではないが、周囲の目をはばからずにいちゃついたり、当人同士の感情を業務に持ち込んだり、何かと業務に支障の出るケースの方が目立つからだ。

 しかし、だからと言って、「社内恋愛は禁止」などと就業規則に定めるのは、“愚策”の部類に入るだろう。
 なるほど、就業規則は、その内容も含め会社が一方的に制定することができるものには違いない(従業員の意見聴取にあたり反対意見が出されたとしても就業規則の成立には影響しない)が、現実にその規定を運用するにあたっては、そもそも「社内恋愛」を定義することからして難しく、まして、それを理由に懲戒を科すのは公序良俗違反として無効となる可能性が高いからだ。加えて、従業員間に、人間の自然な感情に会社が口出しすることへの是非論やそれをきっかけとする会社への不満が湧き出してしまうおそれすらある。
 これが実際に、職場の風紀を乱したり、会社に有形無形の損害を与えたりしたなら、社内恋愛とは関係なく、その事実に対する責任を問うべきではある。それが就業規則の懲戒事由に該当するなら、それを適用して粛々と懲戒処分を科せば良い。無論、就業規則が適正に制定され、その内容が従業員に周知されていることが前提の話ではあるが。

 さて、では、それが不倫関係であったらどうだろうか。
 不倫すなわち配偶者がありながら他の異性と交際することは、社会的には非難されるべき行為であるとは言え、私的行為に他ならない。そのため、裁判所は、就業規則に違反しない限り、会社がこれに対する懲戒を科すことはできないとしている(旭川地判H1.12.27、類似:東京地判S45.4.13等)
 とは言うものの、特に不倫関係の場合は、社内外で悪い評判が立ちやすく、関係者から苦情が入ることもありがちなので、そうした時こそ、就業規則に則って厳正に処分すれば良い。ただし、その場合でも、“懲戒解雇”となると、行為と処分とのバランスにより、その妥当性について裁判所の判断もケースバイケースで分かれている(肯定:東京高判S41.7.30、否定:岡山地判S41.9.26等)ので、要注意だ。

 なお、通常の恋愛関係であれ不倫関係であれ、目に余るような行為があれば、上司や同僚がインフォーマルに、節度を保つようたしなめるのが、最良の対処法であろう。
 もっとも、それが容易でないからこそ、頭を悩ましておられたのかも知れないが。


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その「出向」は「違法派遣」に該当しないか?

2017-07-03 22:50:14 | 労務情報


 従業員を自社に籍を置いたまま他社での業務に従事させるには、「在籍出向」(以下、本稿では単に「出向」という)か「労働者派遣」(以下、単に「派遣」という)のいずれかによることになろう。
 このうち「出向」は、「派遣」と異なり労働局の許可を受けなくても可能(※)であるうえ、期間の制限(派遣は原則として最長3年)も無いので、出向元にとっても出向先にとっても使いやすい制度と言えるが、ともすると、「違法派遣」として労働局の指導を受け、刑事告発されるケースまであるので、両者の違いを正しく理解しておく必要がある。
※自社で雇用する従業員を他社に派遣する「特定労働者派遣事業」(労働局への届出のみで可)の制度は平成27年の法改正で廃止された(当面は既得権保護措置あり)ので、ここでは考えない。

 そもそも出向は、経営や技術の指導、職業能力の開発、人事交流等を目的として、多くの場合は同一の企業グループ内で行われている。もちろんグループ外企業へ出向させられないわけではないし、逆にグループ内企業への出向が必ずしも適正なものとも言いきれないが、少なくとも、「業」として行われていないことが要件だ。
 業として行われているかどうかの判断材料の一つに、「労働者に係る費用の負担先」が挙げられる。出向者の賃金支払いや社会保険の加入は、通常は出向先で行われるのに対し、派遣では、これらは派遣元の負担となる。まれに、「片道切符ではない」ことを出向者に意識させる等の目的で、これらを出向元が一旦負担したうえで掛かった費用の全部または一部を出向先に請求する例も見られるが、その請求額が実費を上回っている(出向元がそれで儲けてしまう)と、業として行われている(=派遣)と見られる可能性があるので、要注意だ。

 また、出向者には出向先の就業規則が適用されることも、気を付けるべきポイントだ。すなわち、労働時間も、懲戒に関する事項も、出向先のルールに従わなければならない。ついでに言うと、時間外労働も出向先の三六協定に従うこととされ、その三六協定の締結(過半数労働組合または過半数代表者との間で締結する)にあたっては、出向者も出向先事業場の労働者として数えなければならない。

 以上を踏まえれば、会社は就業規則等による包括的同意のみで本人の個別同意が無くても出向を命じられるとされてはいる(東京地判S45.6.29、新潟地高田支判S61.10.31等)ものの、最低限、本人と出向先との雇用契約書は交わしておくべきであるし、費用負担その他の取り決めを出向元と出向先との間で明文化しておくことも必須と言えよう。
 これらを整備しておけば、関係三者(本人・出向元・出向先)がみな当該出向に係る条件を認識できるとともに、労働局の調査に際しても派遣に該当しないことを説明するための材料となりうるだろう。


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