ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

従業員休業の種類(用語の整理)

2020-06-23 18:59:23 | 労務情報

 今般の新型コロナ関連で、従業員自らが会社を休んだり会社が従業員を休ませたりしている職場も多い。
 しかし、用語の意味を正しく理解していない(と思われる)例も(ネット上は言うに及ばず一部マスメディアでも)見受けられるので、以下に整理しておく。

A:(通常の)欠勤
 疾病や私用等、本人の都合で欠勤すること。 特約の無い限り、ノーワーク・ノーペイ。
 それが「無断欠勤」であったら、事情によっては懲戒の対象ともなりうるが、今般の新型コロナに関しては、会社に連絡できないほどの体調不良であるケースも想定しておく必要があろう。

B:年次有給休暇の取得
 社内ルールに則り、年次有給休暇を取得する。 通常の賃金(またはそれに準じる額)が発生する。
 事業の正常な運営を妨げる場合には、会社は、請求された時季を変更することができる。

C:子の看護休暇・介護休暇の取得
 小学生以下の子(養子等を含む)の看護または介護を要する家族の介護のために休業する。
 特約の無い限りノーワーク・ノーペイで差し支えないが、それを上回る不利益取り扱いは禁止されている。

D:特別休暇の付与
 特定の事情がある場合に、年休とは別に休暇を与えることができる(与えなくてもよい)。
 有給とするも無給とするも会社ごとに決めるべきものだが、「慶弔休暇」は有給としている例が多い。
 ちなみに、今般の新型コロナ関連では、小学生以下の子の世話をするため欠勤した従業員に対し特別有給休暇を与えた事業主は「小学校休業等対応助成金」の対象となる可能性がある。

E:自宅待機
 会社が「自宅で待機せよ」という業務命令を発するものであり、通常の賃金が発生する。
 業務命令であるので、「常時連絡が取れる状態にしておくこと」、「必要があれば出社すること」等を命じることも可能。

F:休業命令(長期に及ぶ場合は「一時帰休」とも呼ばれる)
 労働者を休業させ(賃金は不支給)、その事由が使用者の責に帰すべき場合は、労使で合意した額の休業手当(労働基準法で「6割以上」とされている)を支給する。
 「自宅待機」とは異なり、休業中の行動は、原則として制限されない。
 支払った休業手当については、「雇用調整助成金」の対象となる可能性がある。

G:年次有給休暇の時季指定
 年次有給休暇は、本来、労働者が請求するものだが、以下の方法により、会社が時季を指定することも可能。
   (1) 就業規則に基づく時季指定(取得日数が年間5日に満たない場合)
   (2) 労使協定に基づく計画的付与(本人が5日以上を取得できる余地を残した範囲で)
 いずれも、予め、就業規則に規定し、または労使協定を締結しておく必要がある。

H:一時解雇(レイオフ)
 再雇用を前提として一時的に解雇すること。 誤解されやすいが、Fの「一時帰休」とは異なる。
 米国では一般的だが、日本では「整理解雇」の一形態として位置づけられる。

 なお、その他の休業(産休・育児休業・介護休業・公民権行使休暇・公傷休暇等)については、ここでは説明を省略する。


※この記事はお役に立ちましたでしょうか。
 よろしかったら「人気ブログランキング」への投票をお願いいたします。
 (クリックしていただくと、当ブログにポイントが入り、ランキングページが開きます。)
  ↓

 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

家族手当は平等に支給されていますか?

2020-06-13 09:59:07 | 労務情報

 家族手当を支給する会社はまだ多い。
 社会全体の傾向としては“属人給”から“仕事給”へウェイト付けが移行しつつあるが、他の属人的な諸手当(住宅手当等)と比較して、家族手当を廃止するには抵抗の有る会社も多いのであろう。

 賃金には「労働の対価」というだけでなく「労働者やその家族の生活を支える」という意義も有るので、家族手当を支給すること自体に問題は無い。しかし、その支給方法が適正であるかどうかは、再度チェックしておきたいところだ。
 特に、「男女差別の温床となっていないか」には注意を払っておく必要がある。

 さすがに今時「家族手当は既婚男子に支給する」と規定している会社は無いだろうが、「世帯主に支給する」と規定してはいないだろうか。
 一見これならば男女を差別していないようにも思えるが…‥

※この続きは、『実務に即した人事トラブル防止の秘訣集』でお読みください。

  

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

60歳以上の賃金低下は「同日得喪」の活用を

2020-06-03 19:59:02 | 労務情報

 賃金が減額された場合の社会保険料は、減額月以降3か月間の賃金の平均額から算出し、その翌月から改定する(「随時改定」と呼ばれる)のが原則だ。

 しかし、このルールに従うと、定年後の再雇用にあたって賃金が大幅に減額された場合でも4ヶ月間は従前どおりの保険料が課されてしまう。また、標準報酬月額表で2等級に満たない賃金低下の場合は、そもそも随時改定の対象ではない。
 そのため、これらの負担を軽減させる趣旨で、特例措置が設けられている。

 社会保険(健康保険および厚生年金保険)の被保険者が定年後に1日の空白もなく継続雇用される場合には、いったん資格喪失届を提出し、同時に、新たな標準報酬月額による資格取得届を提出することができるのだ。
 こうすることで、賃金が低下した月から社会保険料も減額されることになる。

 ところで、この制度は、被保険者が満60歳以上であれば、必ずしも「定年」でなくても同じ取り扱いをすることとされている。
 例えば、「定年直後の再雇用契約では定年前と同じ賃金額だったが、3年後の契約更新にあたって賃金が低下した」というケースでも、使えるのだ。

 なお、この「同日得喪」は「しなければならない」というものではなく、使うかどうかは任意だ。
 傷病手当金の日額や在職老齢年金の支給停止額にも影響する話なので、(会社としては社会保険料の負担額を削減したいところではあろうが)本人の意向も踏まえたうえで処理を進めたい。


※この記事はお役に立ちましたでしょうか。
 よろしかったら「人気ブログランキング」への投票をお願いいたします。
 (クリックしていただくと、当ブログにポイントが入り、ランキングページが開きます。)
  ↓

 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする