今般の新型コロナ関連で、従業員自らが会社を休んだり会社が従業員を休ませたりしている職場も多い。
しかし、用語の意味を正しく理解していない(と思われる)例も(ネット上は言うに及ばず一部マスメディアでも)見受けられるので、以下に整理しておく。
A:(通常の)欠勤
疾病や私用等、本人の都合で欠勤すること。 特約の無い限り、ノーワーク・ノーペイ。
それが「無断欠勤」であったら、事情によっては懲戒の対象ともなりうるが、今般の新型コロナに関しては、会社に連絡できないほどの体調不良であるケースも想定しておく必要があろう。
B:年次有給休暇の取得
社内ルールに則り、年次有給休暇を取得する。 通常の賃金(またはそれに準じる額)が発生する。
事業の正常な運営を妨げる場合には、会社は、請求された時季を変更することができる。
C:子の看護休暇・介護休暇の取得
小学生以下の子(養子等を含む)の看護または介護を要する家族の介護のために休業する。
特約の無い限りノーワーク・ノーペイで差し支えないが、それを上回る不利益取り扱いは禁止されている。
D:特別休暇の付与
特定の事情がある場合に、年休とは別に休暇を与えることができる(与えなくてもよい)。
有給とするも無給とするも会社ごとに決めるべきものだが、「慶弔休暇」は有給としている例が多い。
ちなみに、今般の新型コロナ関連では、小学生以下の子の世話をするため欠勤した従業員に対し特別有給休暇を与えた事業主は「小学校休業等対応助成金」の対象となる可能性がある。
E:自宅待機
会社が「自宅で待機せよ」という業務命令を発するものであり、通常の賃金が発生する。
業務命令であるので、「常時連絡が取れる状態にしておくこと」、「必要があれば出社すること」等を命じることも可能。
F:休業命令(長期に及ぶ場合は「一時帰休」とも呼ばれる)
労働者を休業させ(賃金は不支給)、その事由が使用者の責に帰すべき場合は、労使で合意した額の休業手当(労働基準法で「6割以上」とされている)を支給する。
「自宅待機」とは異なり、休業中の行動は、原則として制限されない。
支払った休業手当については、「雇用調整助成金」の対象となる可能性がある。
G:年次有給休暇の時季指定
年次有給休暇は、本来、労働者が請求するものだが、以下の方法により、会社が時季を指定することも可能。
(1) 就業規則に基づく時季指定(取得日数が年間5日に満たない場合)
(2) 労使協定に基づく計画的付与(本人が5日以上を取得できる余地を残した範囲で)
いずれも、予め、就業規則に規定し、または労使協定を締結しておく必要がある。
H:一時解雇(レイオフ)
再雇用を前提として一時的に解雇すること。 誤解されやすいが、Fの「一時帰休」とは異なる。
米国では一般的だが、日本では「整理解雇」の一形態として位置づけられる。
なお、その他の休業(産休・育児休業・介護休業・公民権行使休暇・公傷休暇等)については、ここでは説明を省略する。
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