ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

定年制はパートタイマーにも適用されるか

2015-07-23 15:38:02 | 労務情報

 近年は定年制の廃止を検討している、もしくは既に廃止した、という企業も見られるようになってきたが、それでもなお大多数の企業において、定年制は堅持され続けている。

 ところで、定年制は、一般的には、いわゆる正社員を対象とした制度とされているが、パートタイマー等(ここでは「アルバイト」や「嘱託社員」なども含めて考える)には適用されないのだろうか。この問題に関して、本稿では、労働契約上の観点からアプローチしてみたい。

 まず、パートタイマー等を期間を定めて雇用している場合は、定年制は適用されない。
 と言うのも、そもそも「定年制」というのは従業員を一定の年齢をもって退職させる制度であるので、「期間」が満了すれば雇用が終了する契約であるのに「年齢」という別の雇用終了事由を加えるのは契約上そぐわないからだ。定年制は、無期雇用の従業員にこそ意味のある制度と理解しておくべきだ。

 さて、では、無期雇用の(=期間を定めずに雇用している)パートタイマー等には定年制が適用されるかと言うと、そうとは限らないのが難しいところだ。
 無期雇用のパートタイマー等に定年制が適用されるかどうかは、特約の無い限り「就業規則」によるわけだが、その就業規則自体がパートタイマー等に適用されていなければ当然、定年制も適用されないからだ。「この就業規則は、第○章の手続き(新規学卒者を想定した選考方法)により採用された従業員に適用する」と書いてあったり、「パートタイマーについてはパートタイマー就業規則を別途定める」と書いておきながらそれが制定されていないといったケースがありがちだ。

 定年制が適用されないならば、理屈の上では、文字通りの「終身雇用」ということになる。
 もっとも、その場合でも「解雇」や「退職勧奨」の対象とならないわけではないが、それで会社として良いのかどうか、考えてみる必要はあるだろう。


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ストレスチェックの費用は会社が負担すべきなのか

2015-07-13 14:19:18 | 労務情報

 労働安全衛生法の改正により、平成27年12月1日から会社に「ストレスチェック制度」の実施が義務付けられるが、それに先立ち厚生労働省は、同制度の具体的な内容を定めた「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」を公表した。
 それらによると、事業者には、定期的に(毎年1回)ストレスチェックを行うことが義務付けられ、その結果によっては、労働者の心理的な負担を軽減するための措置を講ずるよう努めなければならないほか、ストレスチェック制度の実施体制や実施方法などを定めた規程の整備などが求められている。

 ところで、ストレスチェックは「医師、保健師、看護師、精神保健福祉士」により実施される必要があるので、当然コストも発生することになるが、この費用は会社が負担しなければならないのだろうか。
 この点については法令等に明記されてはいないのだが、一般の定期健康診断の実施に要した費用について、「法で事業者に実施の義務を課している以上、当然、事業者が負担すべきものである」とする労働省(当時)労働基準局長による通達(昭和47年9月18日基発第602号)がある。ストレスチェックに要した費用もこれと同様に「会社負担」と考えるのが自然だ。
 追記:本稿執筆後に、これと同趣旨の通達が発せられ(平成27年5月1日付基発0501第3号)、ストレスチェックに要する費用も会社が負担するべきこととされました。

 では、ストレスチェックの受診に要した時間も、「労働時間」として扱わなければならない(=賃金の支払い対象にする)のかと言うと、“時間”については“費用”とは少しニュアンスが異なっている。上記通達では、一般健康診断(重量物取扱い等の有害業務従事者を対象とする「特殊健康診断」を除く)は「労働者の健康確保は事業の円滑な運営の不可決な条件であることを考えると、その受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましい」とするに留まっているのだ。すなわち、就業時間中にストレスチェック等を受診する時間を設け、あるいは、就業時間外に受診した場合に時間外労働として賃金を支払うことまでは、義務づけられていないと解される。
 なお、ストレスチェック受診にあたり年次有給休暇を利用することは問題ないものとされている。労働基準法が改正され、年間に一定日数の年次有給休暇を取らせなければならなくなったこととも関連して、この方式の採用を検討する価値はありそうだ。


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定額残業代(固定残業代)にメリットは無いのか?

2015-07-03 11:58:02 | 労務情報

 時間外手当は、所定労働時間を上回って労働した時間数に応じて支払うのが原則だが、労働契約上、予め一定額の時間外手当を支払うこととしておくことも可能だ。この制度は、一般的に「定額残業代」(または「固定残業代」)と呼ばれ、特に毎月恒常的に一定量の時間外労働が発生するような業態において導入されることが多い。

 さて、この制度を導入した場合、会社にとっては、どのようなメリットがあるだろうか。
 多くの経営者は「人件費コストが抑えられる」・「事務量が軽減できる」といったメリットを挙げがちだが、実は、このどちらも誤解に基づくもので、メリットではない。
 まず、人件費コストに関しては、一定額の時間外手当を支払ったとしても、それを上回る時間外労働があった場合には、超過分の時間外手当は支払わなければならないのだ。それどころか、想定していた時間外労働よりも実働時間が少なかった月にも決まった固定額を支払わなければならないので、コスト的にはむしろデメリットが大きいと言える。
 また、事務量に関しては、上記理由から、結局は実働時間を管理しなければならないのであり、事務量は変わらない。

 これを捉えて、「定額残業代制度を正しく運用しようとすれば会社にメリットは無い。すなわち、定額残業代を採用している会社は初めから正しく運用せずに残業代支払いを免れようとする“ブラック企業”だ」と主張する識者もいる。が、本当に、定額残業代にメリットは無いのだろうか。
 否、そんなことはない。定額残業代にはメリットが有るのだ。以下、それを述べてみたい。

 まず、労働者にとって「毎月の固定収入が増えるので生活の安定につながる」というのは、大きなメリットであるはずだ。また、時間外労働が少なくても賃金額が変わらないことから、時間外労働を抑制しようとする心理が働き、直接的には生産性の向上に、さらには間接的ではあるがワークライフバランスに寄与するといった効果もある。
 会社にとっては、それをリクルーティングの好材料として使え、優秀な人材を採用しやすくなる。また、事務的には、毎月同じ金額を支払うなら税額計算等の手間が減り、万が一計算ミスが発生した際にも金額の差異から発見しやすくなるという側面もある。

 定額残業代は、人件費削減や事務量軽減のためでなく、労働や事務の“品質”の向上をを図れることにこそ真のメリットがあることを、正しく認識しておきたい。


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