ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

日本年金機構に事業主調査の権限は有るのか?

2015-06-23 17:39:10 | 労務情報

 社会保険料の『算定基礎届』を提出する時期となった。
 この『算定基礎届』は、原則として郵送で提出することになっているが、一部の事業主には、郵送ではなく、出勤簿・賃金台帳・源泉税納付書等とともに持参提出するよう、通知が届いている。日本年金機構によれば、「簡易調査を兼ねる」との趣旨で、概ね4分の1に相当する事業所に対してこの通知を発しているそうだ。今回これに該当した事業所も少なくないだろう。

 ところで、この通知を受け取った事業主から、「そもそも日本年金機構にはこういう調査をする権限が有るのか?」と質問を受けることが多い。「あの日本年金機構が調査とは、どの面下げて?」と、昨今の不祥事を受けて半ば感情的になっているのも否定できないが。
 その気持ちは分からないではないが、質問への回答としては、「法律で調査権限を与えています。残念ながら。」ということになる。

 厚生労働大臣は、被保険者の資格・標準報酬・保険料等に関し、必要があると認めるときは事業主に対して文書その他の物件の提出又は提示を命じることができる(健康保険法第198条・厚生年金保険法第100条)とされている。これは「厚生労働大臣」が有する権限なのだが、この権限を日本年金機構に委任した(健康保険法第204条第19号・厚生年金保険法第100条の4第36号)形になっているのだ。
 つまり、今回の通知文に書かれている文言は柔らかいが、これは、「厚生労働大臣に代って命じている」ものと読まなければならない。この指示に従わなければ、「六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」(健康保険法第208条第5号・厚生年金保険法第102条第5号)とされているので、甘く見てはいけない。
 もっとも、社会保険に加入すべき労働者をすべて加入させ、『算定基礎届』・『月額変更届』その他の書類を正しく提出しているなら、何ら臆することなく調査に応じれば良いだけのことだ。資料を揃えるのが面倒ではあるが。

 ちなみに、健康保険の保険給付に関しても、全国健康保険協会(協会けんぽ)に厚生労働大臣の調査権限を委任できることになっている。併せて承知しておかれたい。


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「キャリア支援企業表彰」候補団体を公募中

2015-06-13 16:29:36 | 労務情報

 厚生労働省(応募受付委託先:中央職業能力開発協会)では、現在、「キャリア支援企業表彰2015」の自薦を受け付けている。
 これは、従業員の自律的なキャリア形成の支援に取り組む企業を公募し、優れた事例を表彰するもので、受賞企業は10月下旬に発表される。昨年は、従業員4万5千人の大企業から従業員28人の小企業まで全10社が選ばれた。

 具体的には、応募企業が行ったキャリア支援策を、次の3つの観点から評価し、選考する。
 (1) 従業員の視点:
  キャリア目標の設定、的確な職業能力開発の機会の提供、公正な職業能力の評価が行われるなど、労働者の自己の成長感・成長期待に応えられる取組みかどうか
 (2) 企業の視点:
  企業(組織)ビジョンに連動した人材育成方針に基づいた方策を推進するなど企業ビジョンとの統合が図られている取組みかどうか
 (3) 社会の視点:
  例えば、高齢者の活躍の場の確保につながっているなど、雇用や職業能力開発に係る社会的な課題を解決する方向に合い、社会との調和が図られているかどうか

 そして、そのキャリア支援策が他企業にも活用でき、ひいてはキャリア支援の普及促進に貢献するものであるかについても、表彰者(厚生労働大臣)としては、重要な評価ポイントだろう。

 「キャリア支援企業」として表彰・公表されれば、「人-ヒト-」を大事にしている企業であることを広く世間に伝えられ、社内外のイメージアップに効果があるはずだ。
 何らかのキャリア支援策を講じている会社は、応募を検討してみてはどうだろうか。ちなみに、応募締め切りは、7月15日(水)となっている。

【参考】 中央職業能力開発協会リーフレット
http://www.career.javada.or.jp/id/career/pdf/5-2_2015_5.pdf


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退職者に賞与を支給しなければならない場合とは

2015-06-03 13:18:36 | 労務情報

 賞与は、月例給与とは性格が異なり、基本的には、支給対象者や支給額を会社が決定することができる。したがって、就業規則等に「支給日に在籍していない者には賞与を支給しない」と記載され、または、そのような労使慣行が定着している場合は、それによって退職者に賞与を支給しないことも許される(最一判S57.10.7、最一判S60.3.12など)。
 ところが、退職者にも賞与を支給しなければならないこととなるケースがいくつかあるので、以下に挙げてみたい。

 まず、支給日に在籍していることを賞与支給の要件とする明文規定も労使慣行も存在しない場合だ。
 一般的に、賞与は、①賃金の後払い、②功労への褒賞、③成果の配分、④将来への期待、の4つの性格を併せ持つと言われるが、その論に従えば、これらのうち「将来への期待」以外の3つについては、支給日前に退職した者にも受け取る権利があることになる。
 なので、逆に言えば、立ち上げたばかりの会社は、退職者に賞与を支給するつもりが無いならば、その旨を明文化しておくことが必須と言える。

 また、労働組合との労働協約がある場合は、就業規則はその内容に従わなければならない。これは、過半数組合との労働協約ばかりでなく、少数組合(昨今では企業外の合同労組等も目立つ)との労働協約も該当するので、失念(あるいは、敢えて無視?)することのないよう、注意したい。
 さらに、個別の雇用契約に特別な定めがある場合も、それに従わなければならない。例えば、年俸制では賞与相当額を月割または日割で支給することにしているのが通例なので、インターネット等で入手した「モデル契約書」をそのまま用いているようなケースは要注意だ。

 もっとも、本稿は「退職者に賞与を支給しない」ことを前提に書いているが、賞与にはインセンティブとしての効果もあるので、退職者に賞与を支給することが必ずしも会社にとってマイナス面ばかりとは限らないことも理解しておくべきだろう。


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