ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

「精神障害者雇用義務化」の誤解を笑えない

2018-01-23 17:29:10 | 労務情報

 現行「2.0%」(50人に1人)とされている民間企業の障害者雇用率は、平成30年4月1日からは「2.2%」(45.45人に1人)へ、次いで3年以内に「2.3%」(43.48人に1人)へと引き上げられる(平成29年6月30日政令第175号)。
 企業経営者としては、これによって障害者雇用率を満たさなくなってしまい「障害者雇用納付金」(※)を納めるような事態に陥ることの無いよう、今から準備しておきたい。
 ※ 常用雇用労働者(週20時間以上の短時間労働者は0.5人として算入)が200人を超える事業主は未達成1人あたり月額5万円、100人を超え200人以下の事業主は未達成1人あたり月額4万円、100人以下の事業主は対象外。

 ところで、今般の障害者雇用率の改定について、厚生労働省は「精神障害者の雇用義務化等を踏まえたもの」と位置づけている。
 この「精神障害者の雇用義務化」という用語だけを抜き出して、経営者の中には「精神障害者を必ず雇用しなければならない」と理解している向きもあるようだが、身体障害者や知的障害者の雇用数をもって障害者雇用率を達成できるなら、それに加えて精神障害者も雇わなければならないわけではない。

 しかし、その誤解を一笑に付すことはできない。
 というのも、障害者を採用したら施設の整備や援助を行う者の配置等の措置を講じなければならない(障害者雇用促進法第36条の3)ところ、その対象となる「障害者」は、従来の「身体障害者+知的障害者」に加えて、今年4月からは「精神障害者」に対しても、この「合理的配慮の提供義務」が課せられることになるからだ。
 そういった意味で、「障害者雇用率を算出する算式の分子部分に精神障害者も加えられただけでしょ」との甘い認識(実際そう思っている企業経営者も多い)の方が、より危険と言える。

 もっとも、「精神障害者」と言って一括りにはできず(これは身体障害者や知的障害者にも当てはまることだが)、その種類や程度は人によって異なる。
 「障害者」というレッテル貼りをしてしまうのでなく、各人の能力や適性に応じた処遇を考えることが肝要なのであって、そう考えてみれば、障害を持たない者に対するそれと基本的には変わらないのだ。


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特別休暇は有給? 無給?

2018-01-13 15:59:11 | 労務情報

 労働基準法で定められている年次有給休暇のほかに「慶弔休暇」や「リフレッシュ休暇」等の休暇制度を設けている会社も多い。一般的に「特別休暇」と呼ばれるこれらの休暇中の賃金は支払わなくても良いのだろうか。

 これらの休暇は、法令で義務付けられているものではないので、その対象者や付与日数など、すべて会社が定めることができる。有給とするか無給とするかも会社の任意だ。「ノーワークノーペイの原則」により賃金を支払わないこととしても、法律上はまったく問題ない。
 とは言え、そもそもどういう趣旨でこれらの休暇制度が設けられたのかを考えてみると、おそらく、これら特別休暇には、会社からの祝福・弔慰・ねぎらい等の意味が込められているはずだ。
 であるなら、賃金を控除することとしては、その“気持ち”は従業員に通じまい。従業員のロイヤリティ醸成の面から考えても、慶弔休暇等の特別休暇は有給とすべきと言える。

 ところで、会社によっては、「公民権行使休暇」や「生理休暇」といった法令で義務づけられている休暇も「特別休暇」と呼ぶことがある。これらについては、上に挙げた慶弔休暇等とは趣旨が異なるので、原則どおり無給で良いだろう。
 もっとも、これらを有給としても従業員に有利になる話なので法律上の問題は生じない。しかし、その場合は、休暇を取得した者と取得しない者との間に不公平が生じないよう、運用面での工夫を要するところだ。

 なお、どういう制度にするにしても、「休暇」に関しては就業規則への絶対的記載事項とされている(労働基準法第89条)ので、その手続きも忘れないように気を付けたい。


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「従業員の健康を守る」=「会社を守る」

2018-01-03 11:59:19 | 労務情報

 会社は、従業員が安全に働けるよう配慮すべきとする「安全配慮義務」を負う(労働契約法第5条)。
 これに関しては、かつては職場での事故や怪我を防止することに重点が置かれていたが、昨今では、過重労働等を原因とする脳・心臓系の疾病やうつ病などが労災と認定されるようになり、また、平成27年12月からは「ストレスチェック」の実施も(従業員数50人未満の事業場を除き)義務づけられて、今や会社は、従業員のメンタル面を含めた健康にも配慮すべきとする「健康配慮義務」も果たさなければならなくなってきた。

 また、ここ数年、「健康経営」(NPO法人健康経営研究会の登録商標)も話題になったように、「企業の持続的な成長のためには会社が従業員の健康に積極的に関与していくべき」という現代的な考え方も生まれてきている。
 もっとも、常識的な経営者なら、従業員が負傷したり病気に罹ったりするのを望むはずがなく、従業員には健康でいてほしいし、(いやらしい言い方にはなるが)良質な労働力を提供してほしいと願っているはずだから、これは「現代的」というより「本質的」とでも言って良いくらいだろう。

 とは言え、例えばウオークラリーを実施したり喫煙を禁じたりするのは、“啓発”ならまだしも罰則付きで“強制”するのは法的に微妙だし、一部の従業員からは反発があるかも知れない。プライベートな事項に会社が干渉することの是非は、会社ごとのカラーによって異なるので、他社で効果が上がったと聞いて安易に飛びつくことのないように気を付けたい。

 それよりも、安全配慮の基本である「危険の予測(または早期発見)」と「適切な措置」が、健康配慮の面においても重要であることを忘れてはならない。
 そのためには、少なくとも法で義務づけられている健康診断・ストレスチェックと、その結果を踏まえた治療や保健指導等を完全実施することをまず考えたい。
 身体的・精神的を問わずすべての疾病に共通する話であるが、早期発見によって重篤にならないうちに治療すれば回復も早い。
 また、早い段階で対処していたなら、万が一、会社の健康配慮義務違反を問う訴訟が提起されたとしても、会社としては最善を尽くしたと抗弁もできよう。「従業員の健康を守る」ことは、即ち「会社を守る」ことにも通じるのだ。


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