ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

国民健康保険料軽減措置と離職理由

2022-08-23 14:21:40 | 労務情報

 倒産や解雇等によって失業した者に課される国民健康保険料(自治体によっては「国民健康保険税」)を軽減する措置が講じられている。
 これは、非自発的離職者が在職中と同程度の保険料負担で国民健康保険に加入できることを目的として平成22年度から始まった措置であり、具体的には、失業給付上「特定受給資格者」または「特定理由離職者」とされている者について、前年の給与所得をその30%の額とみなして保険料を算出するというものだ。

 この措置自体の是非論はともかくとして(実際、賛否両論ある)、これを知った退職者から「離職理由を“会社都合”に修正してほしい」という要求を受けた会社もあると聞き及ぶ…‥


※この続きは、『実務に即した人事トラブル防止の秘訣集』でお読みください。

  

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個人事業主の労災特別加入制度について

2022-08-13 11:59:08 | 労務情報

 自社の従業員を個人事業主として独立させる動きが高まっている。 モチベーションアップ策の一つとして「独立支援制度」を設ける会社や、また、高年齢者の就業機会確保措置の一環として検討している会社もある。
 わが国には古くから「のれん分け」と呼ばれる慣習が根付いてきたが、それは、言ってみれば“競合”を作り出すようなものであった。 その点、近年の独立支援制度等は、性格が異なり、それまでは従業員に命じていた職務を、請負契約により履行させるスタイルに変えるものであって、“競合”ではなく“下請け”を作るようなものと言える。

 ところで、こうした独立支援制度等は、労使双方にメリットもデメリットももたらすが、中でも、個人事業主になる者にとっては「労災保険の対象から外れること」が大きなデメリットとして挙げられよう。 そして、会社が独立を勧めても当該従業員がそれを理由に難色を示すこともある。

 そこで、国が管掌する「労災保険の第2種特別加入」を紹介しておきたい。
 現在は次の9業務が対象となっており、いずれかに該当すれば、都道府県労働局長から承認を受けた「特別加入団体」を経由して加入することができる。 ちなみに、事故が起きたときの給付手続きにおいては、その特別加入団体を“(形式上の)雇い主”として請求することになる。
  (1) 個人タクシー業者、個人貨物運送業者(自転車等を使用するものも含む)
  (2) 建設業の一人親方
  (3) 漁船による自営漁業者
  (4) 林業の一人親方等
  (5) 医薬品等の配置販売業者
  (6) 再生資源取扱業者
  (7) 船員法第1条に規定する船員
  (8) 柔道整復師法第2条に規定する柔道整復師
  (9) 創業支援等措置に基づく高年齢者

 この制度は俗に「一人親方の労災保険」と称されるが、9業種の中には「一人親方」のイメージから外れるものもあるので、先入観で判断しないよう、気を付けたい。

 もっとも、特別加入は強制ではないし、保険料の負担も生じる話なので、加入するもしないも任意ではある。
 しかし、個人事業主として何らかの保険を掛けるつもりなら、まず政府が管掌する保険を掛けたうえで、不足分を民間保険でカバーするのが賢明と言えるだろう。

 一方、業務の外注化を進めたい会社側としては、このような“独立のデメリット”を軽減する諸制度について、該当者に対し丁寧に説明して、理解を求めるように努めたいところだ。


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会社が意識すれば過労死リスクを下げられる

2022-08-03 18:29:05 | 労務情報

 「過労死」とは、「業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡」または「業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡」と定義されている(過労死等防止対策推進法第2条より)。
 いずれの定義にも含まれる「業務における」という字句が示すとおり、過労死は労災事故(業務災害)の一つとして取り扱われる。 そのことは改めて認識しておきたい。

 そして、令和3年9月から、前者(脳・心臓疾患)に関して、その認定基準が改定されている。 具体的には、従来は「時間外労働が発症前1か月間に100時間超または2~6か月間平均で月80時間超」の場合に業務と発症との関係が強いと評価できることとなっていたところを、「一定の負荷要因」の状況も考慮して判断することとしたものだ。
 この「一定の負荷要因」とは、次のものをいう。
  ① 勤務時間の不規則性(拘束時間が長い勤務、休日のない連続勤務、勤務間インターバルが短い勤務、不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務)
  ② 事業場外における移動を伴う業務(出張の多い業務、その他事業場外における移動を伴う業務)
  ③ 心理的負荷を伴う業務
  ④ 身体的負荷を伴う業務
  ⑤ 作業環境(温度環境、騒音)

 これらの業務を行わせている会社でもし従業員が脳・心臓疾患により死亡したら、時間外労働の時間数が月100時間(または月平均80時間)未満であったとしても、この水準に近い時間外労働を行わせていた場合には、過労死認定される可能性があるということになる。
 なお、「この水準に近い」というのが何時間なのかは明らかにされていないが、「“週55時間以上”働く長時間労働者は脳卒中や虚血性心疾患のリスクが高まる」とするWHO・ILOの見解は、一つの指標となりうるだろう。

 逆に言うと、これらの負荷要因をできるだけ避けるよう、会社は努めるべきと言える。
 自社で過労死が発生すると、「遺族から労災保険で補償されない損害を遺族から請求される」「マンパワーを失うことにより生産性が低下する」「企業のイメージダウンにつながる」等々、企業活動へのダメージは計り知れない。
 もっとも、これらは労災事故すべてに共通するダメージではあるが、過労死に限っては、会社が意識すればリスクを下げられる点において、他の労災事故とは性格が異なると言える。
 会社にとって何一つ得にならない過労死を防ぐ努力を惜しむべきではないだろう。


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