いささか旧聞に属するが、厚生労働省が主宰する有識者懇談会(座長:今野浩一郎 学習院大学経済学部経営学科教授)は、今年7月に「多様な正社員」の普及・拡大のための報告をとりまとめている。
この報告で、懇談会は、「多様な正社員」として「勤務地限定正社員」・「職務限定正社員」・「勤務時間限定正社員」の3種類を挙げ、それぞれについて活用が期待できるケースを具体的に列挙した。
しかし、これらは特段新しい概念を示したものではない。
まず、「勤務地限定正社員」については、既に「ナショナル社員・エリア社員(あるいはストア社員)」といった区分を設けている会社も珍しくないわけで、その「エリア社員(あるいはストア社員)」の裾野を少し広げて考えてみれば良い話だ。
「職務限定正社員」についても、報告では「高度専門的なキャリア形成や資格が必要とされる職務」を例示しているが、そうした者を現に「嘱託社員」として無期雇用している会社も少なくないだろう。
「勤務時間限定正社員」にいたっては、働き方は正に「パートタイマー」なのであって、「ただ呼び方を変えただけ」との見方もある。
とは言え、いまだ多くの会社が「勤務地や職種や労働時間を限定するなら正社員になれない」との認識を持っている現状を考えれば、その考えを改めさせ、また、非正規雇用者を正規雇用化するに際しての受け皿としても活用できる点で、この報告を無意味と断じるつもりは無い。
そもそも、「多様な正社員」とは、平成24年3月に「多様な形態による正社員に関する研究会」が取りまとめた報告に基づくものであり、同年8月の労働契約法改正(無期雇用への転換等を含む)と相まって、「非正規雇用から正規雇用へ」の流れを創造していることは念頭に置いておく必要がある。しかも、今般、厚労省が「多様な形態による正社員」を「多様な正社員」と短く言い換えたことから、これを普及させようとの意図も見える。
来たる平成27年度のキーワードになりそうだ。
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