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ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

即時解雇と解雇予告手当

2025-03-23 07:59:49 | 労務情報

 労働基準法第20条は、従業員を解雇する場合には、労働基準監督署長の予告除外認定を受けた場合を除き、30日以上前に予告するか、30日に満たない日数に係る解雇予告手当(以下、単に「予告手当」と呼ぶ)を支払うべきことを定めている。
 これは、逆に言うと、予告手当を支払えば即時解雇が可能であることをも意味している。

 では、予告手当を支払わずに即時解雇したら、その解雇は無効となるのだろうか。
 実際そのように主張する識者もいる。 しかし、行政通達は「即時解雇としては無効であるが‥30日経過後において解雇する旨の予告として効力を有する」(S24.5.13基収1483号)としており、裁判所も「30日が経過した時点または予告手当を支払った時点で解雇の効力が発生する」と判じている(最二判S35.3.11)。

 また、予告手当の金額について、多人数を同時に解雇するようなケースにおいては、即時解雇の通知と同時に予告手当を“概算払い”しておき不足額を後日速やかに支払うこととしても、その即時解雇は有効として取り扱われる(S24.8.19基収1351号)。 もっとも、これは、どのようなケースでも当てはまるわけではないので、やはり、正しく計算した予告手当を支払うのを基本と考えるべきだろう。

 ところで、冒頭に挙げた「予告除外認定」というのは、「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」または「労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合」に、管轄労働基準監督署長に申請するものだ。 この認定を受けられれば、予告手当を支払わずに即時解雇することができる。
 とは言っても、認定を受ける(または否認される)のに日数を要するため、特に即時解雇を要する状況において行政の判断を待っている猶予は無いかも知れない。 そのような場合は、予告手当を支払わずに即時解雇したとしても、その後に予告除外認定を受けられれば、解雇の効力は即時解雇の意思表示をした日に発生すると解される(S63.3.14基発150号)。
 一方、認定が受けられなければ、解雇予告または予告手当支払いの義務が遡って生じることになる。

 なお、ここまで述べてきたのは、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる解雇である(労働契約法第16条より)ことが前提の話だ。
 その当否に争いがあれば裁判所が判断することになるので、手続き的には労働基準法に反しない解雇であっても、民事訴訟を提起される可能性があることは承知しておかなければならない。


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「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」の見直し

2025-03-13 09:59:54 | 労務情報

 介護休業は、要介護状態(2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態)にある対象家族の介護等のために取得することができる(育児介護休業法第11条・育児介護休業法施行規則第2条ほか)。
 この「常時介護を必要とする状態」というのは、「(介護認定を受けている場合は)要介護2以上であること」または「厚生労働省が定める『常時介護を必要とする状態に関する判断基準』のうち、2が2つ以上または3が1つ以上該当し、かつ、その状態が継続すると認められること」とされている。
【参考】厚生労働省「よくあるお問い合わせ(事業主の方へ)」

 一方で、今年(令和7年)4月から、会社は、介護に直面した旨を申し出た労働者に対して、介護休業その他の介護両立支援制度等に関して個別に周知し、それらの利用について意向を確認しなければならなくなる(育児介護休業法改正第21条第2項)。
 つまり、これまでは、該当労働者が「介護休業を取得したい」などと具体的に申し出て来れば拒めないものの、申し出が無ければ会社には特段の義務が生じなかったところ、今後は、そうはいかなくなる。該当労働者に説明するためにも、会社(経営者や労務担当者)は、これらの制度について正しく理解しておかなければならないのだ。

 ところで、令和6年の育児介護休業法改正にあたっては、衆参両院から、「介護休業等の対象となる要介護状態についての現行の判断基準は、主に高齢者介護を念頭に作成されており、子に障害のある場合や医療的ケアを必要とする場合には解釈が難しいケースも考え得ることから、早急に見直しの検討を開始し、見直すこと。」との附帯決議がなされた。
 たしかに、判断基準には「外出すると戻れない」「薬の内服に介助が必要」といった項目があり、これらは子どもには適さない設問と言える。

 これを受けて厚生労働省は、令和6年12月に「介護休業制度等における『常時介護を必要とする状態に関する判断基準』の見直しに関する研究会」を立ち上げ、当該基準について見直しのための検討を行うこととした。

 そもそも、「介護」と聞くと、つい高齢者を介護するケースをイメージしがちだが、介護休業等の対象家族には、父母・祖父母・配偶者の父母ばかりでなく、配偶者や子・孫も含まれている。
 先入観での判断は禁物だ。


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子の看護休暇・介護休暇の見直し(令和7年4月施行)

2025-03-03 19:43:57 | 労務情報

 育児介護休業法の改正に伴い、この4月から「子の看護休暇(子の看護等休暇)」および「介護休暇」の取らせ方が変わる。

 「子の看護休暇」は、養育する子(実子に限らない)の病気やけが、予防接種・健康診断等のために、年間5日(複数の子を有する者は年間10日)の休暇(無給としても差し支えない)を取れるもので、現行法では小学校就学前の子が対象となっている。
 これについて、次の3点が変更される。
  (1) 対象となる子について、小学校3年生修了までに拡大
  (2) 感染症に伴う学級閉鎖等、入園式・卒園式等の場合でも取得可能となる
    (この休暇の名称も「子の看護等休暇」に変わる)
  (3) 労使協定により「継続雇用6か月未満の者」を除外できる旨の規定を廃止
    (労使協定により「週所定労働日数2日以下の者」を除外できる旨の規定は存続)

 一方、「介護休暇」は、要介護状態(2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態)にある対象家族の介護等のために、年間5日(複数の対象家族を有する者は年間10日)の休暇(無給としても差し支えない)を取れるもので、建て付けとしては「子の看護休暇(子の看護等休暇)」と似ている。
 介護休暇についても、上に挙げた(3)と同様、労使協定で「継続雇用6か月未満の者」を除外することができなくなる(労使協定により「週所定労働日数2日以下の者」を除外できる旨の規定は存続)。

 また、介護に直面した旨を申し出た労働者に対して、介護休業や介護両立支援制度等に関して個別に周知し、それらの利用について意向を確認しなければならないこととなる。
 ちなみに、「育児期の柔軟な働き方を実現するための措置」を講じ、これを該当労働者に個別に周知し利用について意向を聴取することが、令和7年10月からすべての事業主に義務付けられるので、これらも4月の時点で整備しておくことを考えてもよいだろう。

 なお、今般の法改正で変わることは他にも多数あるが、中でも、男性労働者の育児休業等取得状況の公表義務(現行では従業員1000人を超える企業が対象)が従業員300人を超える企業に拡大されたことは、影響が受ける会社が多いだろう。
 もっとも、有価証券報告書を発行する会社には、既に(令和5年3月期決算より)「女性管理職比率」・「男女間賃金格差」と併せて「男性育児休業取得率」を開示することが義務づけられているので、上場企業にとっては今さら慌てる話でないのかも知れない。


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