労働基準法第20条は、従業員を解雇する場合には、労働基準監督署長の予告除外認定を受けた場合を除き、30日以上前に予告するか、30日に満たない日数に係る解雇予告手当(以下、単に「予告手当」と呼ぶ)を支払うべきことを定めている。
これは、逆に言うと、予告手当を支払えば即時解雇が可能であることをも意味している。
では、予告手当を支払わずに即時解雇したら、その解雇は無効となるのだろうか。
実際そのように主張する識者もいる。 しかし、行政通達は「即時解雇としては無効であるが‥30日経過後において解雇する旨の予告として効力を有する」(S24.5.13基収1483号)としており、裁判所も「30日が経過した時点または予告手当を支払った時点で解雇の効力が発生する」と判じている(最二判S35.3.11)。
また、予告手当の金額について、多人数を同時に解雇するようなケースにおいては、即時解雇の通知と同時に予告手当を“概算払い”しておき不足額を後日速やかに支払うこととしても、その即時解雇は有効として取り扱われる(S24.8.19基収1351号)。 もっとも、これは、どのようなケースでも当てはまるわけではないので、やはり、正しく計算した予告手当を支払うのを基本と考えるべきだろう。
ところで、冒頭に挙げた「予告除外認定」というのは、「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」または「労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合」に、管轄労働基準監督署長に申請するものだ。 この認定を受けられれば、予告手当を支払わずに即時解雇することができる。
とは言っても、認定を受ける(または否認される)のに日数を要するため、特に即時解雇を要する状況において行政の判断を待っている猶予は無いかも知れない。 そのような場合は、予告手当を支払わずに即時解雇したとしても、その後に予告除外認定を受けられれば、解雇の効力は即時解雇の意思表示をした日に発生すると解される(S63.3.14基発150号)。
一方、認定が受けられなければ、解雇予告または予告手当支払いの義務が遡って生じることになる。
なお、ここまで述べてきたのは、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる解雇である(労働契約法第16条より)ことが前提の話だ。
その当否に争いがあれば裁判所が判断することになるので、手続き的には労働基準法に反しない解雇であっても、民事訴訟を提起される可能性があることは承知しておかなければならない。
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