ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

“風呂敷残業”は会社にとってありがたいものではない

2012-08-23 17:29:37 | 労務情報

 今どき風呂敷で書類を持ち歩く人もいないだろうが、仕事を自宅に持ち帰るのを、“風呂敷残業”と呼ぶ。今日的には、帰宅後にインターネット回線を使って会社のサーバーにアクセスするのも、この部類に含まれるだろう。
 従業員が熱意と責任感をもって仕事に取り組んでくれるのは会社としてはありがたいことなのかも知れないが、風呂敷残業には落とし穴も多いので注意したい。

 まず、会社でやらずに自宅へ持ち帰ってやった仕事であっても、それは“残業”に他ならない。
 すなわち、上司が命じた場合は当然のこととして、自宅で仕事をしているのを上司が知っていながら黙認していた場合も、賃金を支払わなければならない。仮に上司が直接は関知していなかったとしても、常態として風呂敷残業が行われていたり、通常の労働時間内ではとても終わらない分量の仕事を与えているような場合も同様だ。

 また、風呂敷残業では、上司の目が届かないので、労働時間を管理しにくい点も要注意だ。とりわけ、会社で残業しても終わらなかったため自宅で残業するようなケースでは、必然的に過重労働になりがちなので、健康管理面での配慮が求められよう。
 銀行システムの統合に際してマニュアルを自宅に持ち帰って覚えなければならなかった営業課長が業務中に倒れた事件(札幌地裁H06.02.28判)でも、休日労働を禁じられていたため自宅で残務処理をするしかなかったハンバーガーショップの店舗管理担当者が突発性心室細動により突然死した事件(東京地裁H22.01.18判)でも、裁判所は過重労働が存在したと断定している。

 これらに加えて、風呂敷残業には、営業機密や個人情報等が流出・漏洩するリスクも付き物だ…‥

※この続きは、『実務に即した人事トラブル防止の秘訣集』でお読みください。

  


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会社の所在地変更届、失念していませんか?

2012-08-13 11:08:46 | 労務情報

 都道府県健康保険協会(協会けんぽ)が交付する被保険者証(以下「健康保険証」)の券面から「事業所所在地」の表示が消えて、1年以上が経過している。
 従来、健康保険証には「事業所名及び事業所所在地」を記載するものとされていたが、昨年3月に健康保険法施行規則が改正され、「事業所名」も「事業所所在地」も記載を要しないこととされた。
 これを受けて、協会けんぽでは、当面は「事業所名」のみ残して、「事業所所在地」は表示しないこととした。ただし、既に交付済の健康保険証についてはこの様式変更に伴う切り替えはせず、新たに発行するものから順次切り替えを進めていっている。
 なお、他の健康保険組合の対応は、組合によってまちまちだが、協会けんぽと歩調を合わせているところが多いように見受けられる。

 ところで、この様式変更のメリットの一つとして、事業所が移転した場合でも、同一都道府県内であれば健康保険証を書き換える必要がなくなるので、保険者も被保険者も会社もその点では負担が軽くなるということが挙げられる。
 その一方で、会社の事務手続き的には、事業所が移転したら『適用事業所所在地変更届』を提出しなければならないのは従来と同じだ。むしろ、健康保険証の券面から事業所所在地の表示が消えたことにより、この届け出を失念する(さらには失念していることに気が付かない)リスクが高まったとすら言える。

 ここ1年以内に移転した会社は、手続きモレが無いかどうか、確認しておかれたい。


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有期雇用5年超で無期契約に転換 (改正「労働契約法」成立)

2012-08-03 17:55:36 | 労務情報

 本日8月3日、労働契約法の一部を改正する法律案が、参議院本会議で賛成多数により可決され、成立した。平成25年(2013年)4月から施行される予定。

 今回の改正は、次の3点を柱としている。
1.通算5年を超えて反復更新された有期契約は、労働者の申し出により、無期契約に転換させる。ただし、6か月(1年未満の有期契約については、その期間の2分の1)以上の“クーリング期間”があるときは、その前の契約は通算しない。
2.有期契約が反復更新により無期契約と実質的に異ならない状態になっている場合、または労働者が期間満了後も雇用関係が継続されるものと期待することに合理性が認められる場合には、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当でない雇止めは認めず、労働者が求めれば、従前の有期契約が更新されたものとみなす。(雇止めに関する判例法理の制定法化)
3.有期雇用従業員の労働条件が無期雇用従業員と異なる場合、その相違は職務内容や配置変更の範囲等を考慮して不合理であってはならない。

 これは、昨年末に労働政策審議会がまとめた「有期労働契約の在り方について」をそのまま法案化したような形だ。その目的は、企業が有期労働契約を濫用するのを抑制し、有期労働者の雇用を安定させることとしている。

 一方で、今般の法改正は、企業への負担を強いるものとして経営者団体や一部識者からの反対意見も表明されていた。そのため、特に中小企業に対しては、政省令レベルで一定の経過措置が盛り込まれる可能性も高い。
 とは言え、法律として成立した以上、多かれ少なかれ、自社の“有期雇用の在り方”について見直さざるを得ない事態になりそうだ。
※その具体的な課題と対策案に関しましては、弊事務所の顧問先様には、4月初旬に個別にご案内しておりますので、そちらをご確認ください。


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