ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

労使協定の無い時間単位年休は認められない

2012-09-23 23:28:44 | 労務情報

 平成22年4月から改正施行された労働基準法により、1時間単位での年次有給休暇(以下「時間単位年休」という)の取得が可能となっている。
 ところで、この制度を導入するには、労使協定を締結しておかなければならないことはご存じだろうか。

 そもそも年次有給休暇は、労働者の心身の休養を図ることがその目的であるので、1日単位で取得させるのが原則だ。ただし、労働者が半日単位での取得を希望し使用者がこれに同意した場合には、年次有給休暇取得促進の観点から半日単位で付与することは差し支えない(昭63.3.14基発150号)として扱われてきた。
 この「原則1日単位、労使の合意により半日単位も可」の基本原則は、改正労基法でも変わっていない。

 時間単位年休制度は、この基本原則の“例外”として位置づけられている。労働基準法第39条第4項が、時間単位年休の導入に際して、労使協定の締結を求め、「年間5日以内」との上限も設けているのは、そういう意味があるのだ。
 これは、年次有給休暇の本来の趣旨を損ねないように、むしろ労働者の権利を守るために設けられた措置と言える。

 したがって、時間単位年休を制度として適法に導入していない会社では、仮に労使双方が個別に合意したとしても、時間単位年休は取得させられない。取得させるとしたら、労基法上の年次有給休暇とは別の有給休暇(例えば「褒賞休暇」といった類のもの)として与えるしかない。


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障害者雇用率制度は『障害者権利条約』批准後も存続の方向

2012-09-19 11:50:10 | 労務情報

 平成18年12月に国連総会で採択された『障害者権利条約』について、我が国は平成19年9月に署名したものの、未だ批准はしていない。
 政府は、早期の条約締結に向けて国内諸法制を整備するため、厚生労働省に「労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会」を設置して検討を進めてきた。この研究会は過日開催された第9回の会合をもって大方の議論を終了し、今後は労働政策審議会(障害者雇用分科会)にて審議されていくこととなった。

 研究会では、「職場における合理的配慮の提供」といった従来我が国に無かった概念も含めて多面的な議論が重ねられてきたが、委員間に特段の異論なくコンセンサスを得られた事項もある。その一つが「障害者雇用率制度の存続」だ。
 「障害者雇用率制度」とは、障害者雇用促進法で定める雇用率(民間企業は現行1.8%、平成25年4月からは2.0%)未達成の事業主(※)は、法定雇用障害者数に不足する障害者1人につき月額5万円の「障害者雇用納付金」を納付しなければならないとするもの。
 ※ただし常用雇用労働者(短時間労働者は0.5人として算入)が200人以下(平成27年4月からは100人以下)の事業主は対象外

 障害者雇用率制度は、つまるところ企業に対して一定の障害者雇用を義務付けるものだが、研究会では、現行の障害者雇用率制度が我が国の障害者雇用に寄与してきた効果を評価し、この仕組みを「障害者権利条約における積極的差別是正措置(ポジティブアクション)」と位置付け、実質的な機会均等を維持するために障害者雇用率制度は存続させるべきとしている。

 障害者権利条約が批准されると、企業に対しては、障害者雇用に関する直接・間接の差別が禁じられるのは言うまでもなく、「機会の均等」だけでなく「結果の均等」も求められることになりそうだ。
 条約の批准は当分先になりそうではあるが、雇う側の立場としてはその時になって慌てないよう、今のうちから自社における障害者雇用に関する方向性を整理しておいた方が良いだろう。


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『派遣先管理台帳』を作成していますか?

2012-09-13 13:42:24 | 労務情報

 派遣労働者を受け入れている会社(全労働者数が5人未満の場合を除く)は、『派遣先管理台帳』を作成し、保存しておかなければならない。これに違反すると、30万円以下の罰金に処せられることになっている。(労働者派遣法第61条第3号)

 この件に関しては、多くの会社が派遣先の義務を果たしていないとして、労働局から指導を受けている(ほとんどは派遣業者に対する指導に付随してであるが)のが実情だ。その要因としては、派遣先管理台帳の作成義務を知らなかったケースも少なくないが、派遣業者が派遣先管理台帳を作成して渡してくれることもあるので、それをもって派遣先の義務を果たしたものと安心しきっていたケースもあるようだ。
 しかし、派遣先管理台帳に必ず記載すべき項目のうち、「日ごとの始終業時刻および休憩時間の実績」や「派遣労働者から申出を受けた苦情の処理に関する事項」については、派遣業者は知りえない。なので、最初は派遣業者が作成してくれたとしても、就業を始めた後は派遣先で記入していかなければならないものだ。それが派遣先責任者(これも罰則付きで選任が義務付けられている)の職務の一つでもある。(労働者派遣法第41条)

 また、法令の条文中や行政機関からの通知文中に「派遣先」という用語を見つけても、派遣業者向けの話であって自社には関係ないものと勘違いして読み飛ばしてしまうこともありがちだ。言うまでも無く「派遣先」とは「派遣労働者を受け入れている会社」のことであるので、つまり、自社が該当する可能性も大いにあることに注意しておきたい。

 派遣労働者を受け入れている会社は、単なる“派遣業者のお客さん”ではなく、「法律上の義務も課せられた重たい立場に在る」という認識も持っておかなければならないのだ。


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健康保険で禁煙治療?

2012-09-03 19:52:02 | 労務情報

※今回は、小生が日ごろ感じている意見を書き下ろしてみます。
 いつもの記事とはタッチが異なりますが、たまにはこういうのもお許しください。


 禁煙治療に健康保険が使えるらしい。
 導入されたのはもう6年も前だったそうで、当時の経緯は見落としてしまっていたが、ここのところテレビCMや電車の車内広告でやたら目に留まる機会が増えてきたので、この場で異議を唱えておきたい。

 まず、健康保険法第106条は「被保険者が‥故意に給付事由を生じさせたときは‥保険給付は、行わない」と定めていることを確認してほしい。
 これは社会保険制度として当然の制限であり、このことに異論をはさむ余地は無いだろう。自ら健康を害した人まで社会全体が面倒を見る義務は(少なくとも自由主義社会では)無いのだから。(なお、「自殺」も故意ではあるが、残された遺族に埋葬料等が給付されるのは、「社会全体が面倒を見る」という社会保険制度の趣旨を踏まえれば、逆に当然の措置と言える)

 では、タバコを吸って体を壊してしまうのは“故意”ではないのか。
 タバコは健康に害があることは世の常識であり、ニコチンには強い依存性があることだって、知らなかったとは言わせない。タバコを吸うのは、それらを承知のうえであるはずなのだから、喫煙行為は“故意”以外の何物でもないだろう。
 分別の付かない子どもじゃあるまいし、もう20歳を超えた大の大人なのだから、吸うも、止めるも、個人の自己責任でやれば良い。お医者さまの力を借りなければ禁煙できない人もいるかも知れないが、だったら、健康保険を使わずに自費診療を受けるべきだ。
 世の中には「なりたくない病気」に罹ってしまった人がいっぱいいるわけで、そういう人のためにこそ、我々が納めた健康保険料を使ってほしい。

 ここ数年、健康保険料率は上昇の一途をたどっている。こんな事(敢えて「こんな事」と強調したい)に健康保険を使わせて、非喫煙者にまでそれを負担させるのは、納得のいく説明が付かないのではないか。
 なお、これに関しては「喫煙者には健康保険料の増額を」という意見も見られるが、小生は、保険料負担の多寡よりも、故意の傷病を保険給付の対象とすること自体が社会保険制度の根幹を揺るがす問題だと考えている。

 温水洋一さんも仲間由紀恵さんも好きなんだけど、また、小生の身近にも愛煙家がいる(その多くが禁煙したがっている)けれども、それでも、「健康保険で禁煙治療」は理不尽な制度であると、強く主張しておきたい。


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