ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

1年変形制での休日勤務に関する注意点

2016-01-23 14:48:03 | 労務情報

 前回に引き続き、休日勤務関連の話題です。

 1年単位の変形労働時間制は、予め一定期間(1年以内)について“労働日”及び“労働日ごとの労働時間”を労使協定に定めることで導入できる。
 ところで、これに関しては、「労働日や労働時間を業務の都合によって任意に変更する制度はこれに該当しない」という趣旨の行政通達(H6.1.4基発第1号)が出されている。これをもって「1年単位の変形労働時間制の下では休日労働させたり休日を別の日に振り替えたりすることはできない」と曲解している人も多いのだが、この通達は「“任意に変更するもの”は該当しない」と言っているに過ぎず、1年変形制であっても、就業規則等に根拠規定を置いておけば休日労働や休日振替を命じることは可能である。

 しかし、かと言って、無制限に休日労働させて良いわけではない。
 1年単位の変形労働時間制においては、連続労働日数が6日以内となること(ただし労使協定で定める特定期間においては1週間に1日の休日が確保できる範囲内にあること)が求められており、このことは、休日労働や休日振替をさせる場合においても例外ではない。したがって、所定の週休日すべてを(週休2日であればその2日とも)労働させてしまうと、この条項に抵触する可能性が高いので、注意を要する。
 無論、法定休日に労働させるには「時間外労働・休日労働に関する労使協定(三六協定)」を締結し、割増賃金を支払わなければならないのは言うまでもない。

 なお、業務の繁閑等を理由とした休日振替えが日常的に行われるような場合は、そもそも1年単位の変形労働時間制を採用できないので、その点はくれぐれも誤解の無きよう。


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「代休の付与」と「休日の振り替え」

2016-01-13 16:48:12 | 労務情報

 今年(平成28年)は、祝日が増えたというのが話題の一つになっている。
 しかし、休日が増えたと言っても、同じ業務量をこなさなければならないなら、休日勤務をさせる必要が生じることもある。

 休日勤務をさせれば、当然その分の時間外賃金を支払うことになる。しかも、法定労働時間(週40時間)を超える分については25%の割増、法定休日(少なくとも週1回与えなければならない休日)に勤務させた場合には35%の割増で計算しなければならない。

 “代休”を取らせればこの時間外賃金は支払わなくて済むようにも思えるが、実のところ、それで労働基準監督署から是正勧告を受ける会社が、意外に多いのだ。
 というのも、代休が付与されたとしても、時間外割増(25%)の部分休日割増(35%)の部分については支払わなければならないからだ。
 また、その代休が賃金締切日を跨いで付与された場合には、休日勤務手当の全額(125%または135%、法定時間内であったとしても100%)について、賃金の全額払い(労働基準法第24条)に違反することになってしまう。

 そこで提案したいのが、「休日の振り替え」だ。就業規則や雇用契約書に「業務の都合により休日を振り替えることがある」という定めが有るなら、それを利用するのだ。
 休日勤務が必要になった時は、別の日(本来勤務するべき日)を「振替休日」として予め指定しておく。この振替休日は、同じ賃金計算期間内であれば、その休日勤務より前の日でも後の日でもどちらでも良い。ただし、「予め指定」ということには注意を要する。

 この「休日の振り替え」を利用すれば、休日勤務によって総労働時間が増えることが無いので、過重労働を避けられる点でも期待できる。
 このことは、時間外賃金が発生しないというコスト面でのメリットよりも重要かも知れない。労働者の健康にも関わることでもあるので、行政から指導されるまでもなく、ぜひ活用を検討してほしい。


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労働者代表は正しく選出されていますか?

2016-01-03 18:28:02 | 労務情報

 この時期、「時間外労働・休日労働に関する労使協定」(労働基準法第36条に基づくので「三六協定」とも呼ばれる)や、「1年間の変形労働時間制に関する労使協定」を締結する会社も多いが、これら労使協定の相手方たる労働者代表は適正に選出されているだろうか。

 似たようなものに就業規則の制定にあたり意見を聴く相手としての労働者代表があるが、就業規則は基本的には使用者が制定するものである一方、労使協定は「労使間の合意」であるので、労働者代表の選び方によっては労使協定が無効になる可能性すらあるので、要注意だ。
 中でも、過半数労組の無い会社での代表者選出方法が問題となるケースがしばしば見受けられる。しかも、こういった問題は「残業代の不払い」などトラブルに伴って表出してくることがしばしばであるので、労使関係が円満な会社であっても、平時から慎重を期しておく必要がある。

 さて、労働者代表を選ぶに際して最もいけないのが、経営者や人事担当者が特定の従業員を指名するものだ。これでは、誰が見ても、“労働者の代表”でないことは明らかだろう。
 では、会社が特定の従業員を「候補」として推薦して過半数労働者の信任を得れば良いかと言うと、それも、行政通達(H11.1.29基発45号)の言う「使用者の意向によって選出された者」に該当するので、要件を欠く。
 やはり、労働者代表は、従業員間で民主的に(従業員が一堂に会しての挙手や投票でなくても、「回覧方式による投票」や「社内ネットを用いた投票」でも可)選ばれるべきなのだ。

 もっとも、労働者が自ら代表を選出するのは、「法令で定められているから」という理由だけでなく、従業員にも企業経営への参加意識を持ってもらうことにも意味がある。これは、労働組合に対して会社が期待することと同じだ。
 さらに言えば、代表者を選出する過程を経て、従業員間はもとより労使間の風通しをも良くするので、「トラブルの未然防止」という副産物まで期待できるかも知れない。


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