ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

「カスタマーハラスメント」・「クレーマーハラスメント」

2018-09-23 23:46:27 | 労務情報


 顧客の中には不当な要求をしてくる者もおり、企業としては対応に苦慮することもあるだろう。もちろん、商談における正当な要求や、自社に非のある正当なクレーム等であれば、貴重な意見として真摯に受け止め、今後の商品やサービスの品質向上に役立てるべきだが、“迷惑行為”と言えるほどの悪質なクレーム(まれに暴力行為を含む)となれば話は別だ。
 厚生労働省から今年3月に公表された『職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会報告書』には、「カスタマーハラスメント」や「クレーマーハラスメント」といった新用語により、これらを社会的な問題としてとらえる機運を醸成していくことが必要という意見も示されており、国も問題視していることが窺える。

 ただ現状、こういった行為は厳密には「パワーハラスメント」に該当するわけではない。
 厚生労働省が平成24年3月にとりまとめた『職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言』によると、「パワーハラスメント」とは「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義されている。この定義によれば、顧客は「同じ職場で働く者」ではないため、パワハラの行為者にはならないことになる。
 その一方で、同省が昨年9月に作成した『職場におけるハラスメント対策マニュアル』には「取引先、顧客‥などもセクシュアルハラスメントの行為者になり得る」とあり、セクハラに関しては、顧客から性的な言動により嫌がらせを受けたケースも含まれるとされている。

 もっとも、用語の定義はどうあれ、労働契約法上、使用者には労働者への安全配慮義務があるため、経営者は顧客や取引先など外部の者からの著しい迷惑行為から自社の従業員を守る(心の健康も含め身体等の安全に配慮する)ことを考える必要がある。事業主が労働者の安全に配慮するための対応が求められるという点では、顧客や取引先からの迷惑行為も職場内のパワハラと類似性があると言える。

 とは言え、顧客や取引先は自社の就業規則等の適用範囲外であるうえ、また、顧客等に対して迷惑行為をやめるよう求めることは、その後の取引関係へ影響を考えれば容易ではない。また、一つ対応を誤ると、このご時勢、SNS等で自社の悪評を流布されかねない。

 企業経営者はこういったことを理解したうえで、(いささか対症療法的ではあるものの)担当者をフォローし、場合によっては、担当変更等の措置も検討するべきだろう。
 そして、それと同時に、自社の従業員が取引先に対する迷惑行為の加害者とならないよう、教育していくことも忘れてはならないだろう。


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「裁量労働制」にまつわる誤解のいくつか

2018-09-13 10:38:06 | 労務情報

 厚生労働省が不適切な調査データを用いていたことをきっかけに、「働き方改革関連法案」から「裁量労働制の適用拡大」に関する項目は削除された。これは、現行の労働基準法で一部の職種に対して認めている裁量労働制について、その適用対象職種を、
  ①課題解決型提案営業(例えば「顧客ニーズに応じた新商品の開発・販売」等)、
  ②事業運営に関する事項の実施管理とその実施状況の検証結果に基づく企画立案等を
   一体的に行う業務(例えば「全社レベルの品質管理計画の立案」等)
にも拡大しようとしていたものであった。

 そもそも、「裁量労働制」とは、文字通り、業務の遂行方法を大幅に労働者の裁量に委ねるものであるので、会社(上司)は、業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、具体的な指示をしてはならないこととなっている。
 しかし、現状を見れば、これを正しく理解できていない(あるいは、知っていながら悪用している?)会社も多い。そこで、現行の裁量労働制に関して誤解されやすい点を、いくつか具体例を挙げて解説してみたい。

① ミーティングに出席させることはできるか
 時間を決めてのミーティングに出席を命じることはできない。もっとも、そのミーティングに出席しようがしまいが、成果に影響が出たなら、それを評価の対象とするのは可能だ。

② 休日出勤を命じることができるか
 労働契約(労働協約や適法に制定された就業規則を含む)に根拠規定があれば、休日出勤を命じることができる。もちろん、その分の休日勤務手当は支払わなければならない。
 また、「休日の振替え(出勤日と休日とを入れ替える)」も、根拠規定があれば理論上は可能だ。「理論上は」というのは、振り替えられて出勤することとなった日(元の休日)の出退勤時刻を会社が指示することができないので、実務的には意味が無いかも知れないという意味。

③ みなし労働時間(労働したものとみなされる時間数)は誰が決めるのか
 現行の「専門業務型裁量労働制」では過半数労組または過半数代表者との労使協定により、「企画業務型裁量労働制」では労使委員会の決議により、すなわち労使が話し合って決めることとなっている。 必ずしも法定労働時間(週40時間)とするべきものではない。

 本来、裁量労働制が正しく運用されれば、労働者は自分のペースで自由かつ効率的に働くことができ、また、“時間”でなく“成果”によって正当に評価されることで、従事者自身の納得感も高まる。実際、それで働きやすくなったという実例も多く見聞きしているところだ。
 会社は、「残業代を支払わずに済む」などといった“よこしまな”考え方ではなく、真の“生産性”を高めるために、この制度の活用を考えるべきだろう。


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労災保険の「二次健診給付」制度について

2018-09-03 10:47:00 | 労務情報

 労働安全衛生法と労働安全衛生規則は、事業規模を問わずすべての事業主に対し、常時使用する労働者に、医師による健康診断(原則は1年に1回以上、特定業務従事者については半年に1回以上)を受けさせることを義務づけている。

 ところで、労災保険には「二次健康診断等給付」という制度があるのだが、これが意外に知られていないようなので、ここで紹介しておきたい。

 「二次健康診断等給付」は、一次健診で「血圧」・「血中脂質」・「血糖」・「腹囲またはBMI」の4項目とも「異常の所見あり」と診断された労働者を対象として、二次健康診断および特定保健指導の給付を行うというもの。現金給付ではなく現物給付であるので、実感としては「二次健診等が“無料で”受けられる」という理解で良いだろう。
 ただし、二次健康診断等給付の対象となるには、「4項目の異常所見」の他に、「脳・心臓疾患の症状を有していないこと」という条件もある。現に脳疾患・心疾患の症状が出ている場合、または、これらの治療中である場合(一次健診の結果が「要治療」であったか否かには関係ない)には、二次健診給付の対象とはならないので、要注意だ。
 なお、これは労災保険の制度であるので、労災病院や都道府県労働局長から指定された医療機関でないと実施していない。特に、専ら健康診断のみを行う「健診センター」等は、この指定を受けていない可能性もあるので、確認しておく必要があるだろう。

 それにしても、「血圧」・「血中脂質」・「血糖」・「腹囲またはBMI」のすべてについて「異常の所見あり」というのは、症状としては発現していないとしても、非常に危険な状態と言わざるを得ない。従業員の健康管理に関しては、事業主もその責任の一端を担っていると認識すべきであり、そのために国の制度が使えるなら活用を考えたいものだ。


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