ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

目標管理制度の失敗例と注意点

2020-01-23 09:59:10 | 労務情報

 目標管理制度を導入して失敗した事例は数多くある。
 それらは大きく、目標設定時の問題と成果評価時の問題に分けられる。

 まず、目標設定時には、ボトムアップ式に数字を積み上げていくと、得てして、会社が期待した数字よりも低い目標になってしまうという問題が発生しやすい。
 目標設定は全社的な収益予算や投資予算にも影響する話でもあるのだから、(プロセスとしてはボトムアップ式を採用するとしても)各人の目標を最終的に決めるのは会社であることは、経営者も従業員も認識しておかなければならない。
 しかし、そうは言うものの、一方的なトップダウン式ではなく、「上司が面談して納得させる」というスタイルを採るのが特にモチベーションの面からは望ましいとは言える。

 ところで、目標設定にあたって、「チャレンジ加点」という制度を設けている会社もある。
 これは、敢えて高い目標を設定した者は、その姿勢自体を評価するというもので、目標が低くなってしまうのを抑制する効果が期待できる。
 しかし、この制度の問題点として、目標を達成できないリスク(全社経営計画に影響することや本人に“未達成グセ”が付いてしまうこと)が高まることは承知しておかなければならないだろう。

 一方、成果評価時の問題としては、期末1回だけの評価では「できた」・「できなかった」のどちらかを判定するだけに終わってしまいがちということが挙げられる。
 月ごともしくは四半期ごと、少なくとも半期に1回は、進捗状況をチェックし、特に遅れが出ている場合には適宜適切な措置が講じられるような体制を整えておく必要がある。

 また、目先の数字ばかりでなく、複眼的かつ中長期的な観点で成果を評価することも重要だ。
 さらに、目標を達せられなかった場合はもちろんであるが、目標を達成できた場合も、その理由を明確にしておきたい。それが、次期の目標設定に、さらには従業員の能力開発にも、つながるからだ。


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年俸制の導入は“やる気アップ”に有効か

2020-01-13 14:09:49 | 労務情報

 年俸制とは、賃金額を1年ごとに決める方式であり、導入している企業の多くが、成果主義と併用している。
 つまり、年俸制には、年功型賃金体系における「仕事をしなくても自動昇給する」、「事なかれ主義になりがち」といった弊害を払拭し、従業員のやる気アップへの効果を期待できる一面を持つ。

 ところが、実際に年俸制を導入した、あるいは導入を検討している企業の人事担当者に聞いてみると、その主たる理由として「人件費を抑制するため」を挙げているのは興味深い。
 すなわち、年功型賃金では賃金の下方硬直性が顕著に働きコストを押し上げるため、会社はそれを嫌って、年俸制を導入した、あるいは導入したいというのだ。「年俸制なら残業代の支払いが不要になる」(無論これは誤解であるが)と信じ込んでいる経営者も珍しくないほどだ。

 もし、こういう動機のみで年俸制を導入するなら、そのモチベーションとしての効果は半減どころか、ディモチベート要因にすらなってしまいかねない。
 「頑張った人が報われる」という制度の構築を考えるのであれば、「目標管理制度」の導入を検討するべきであって、必ずしも賃金体系を年俸制に変えることにこだわる必要は無い。
 しかしながら、目標管理制度には、導入にあたって注意すべき点もあるので、次回の記事で詳しく述べることとしたい。


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「働きがい供与」が「やりがい搾取」に陥らないために

2020-01-03 12:59:07 | 労務情報

 会社は、従業員に、いきいきと働いてほしいものだ。
 従業員がいきいきと働いている職場では、一般的に、労働生産性が高まり、ミスや事故も少なくなり、それによって会社の業績も向上し、それが従業員の給与や賞与として還元される、という好循環につながるからだ。

 そのために会社は、従業員に、仕事から活力を得て、仕事に誇りとやりがいを感じ、仕事に熱心に取り組んでもらうべく、さまざまな方策(これらを総合して本稿では「働きがいの供与」と呼ぶ)を講じていることだろう。
 それ自体は望ましい姿と言え、決して否定されるべきものではない。しかし、一歩間違えると「やりがいの搾取」にもつながりかねないことには、注意を要する。

 昨年10月に公表された『2019年版労働経済の分析(労働経済白書)』では、「働きがい」をプッシュ要因(心理学者ハーズバークによる分類では「動機づけ要因」と称される)と位置づけ、それは、プル要因(同「衛生要因」)たる「働きやすさ」が満たされてこそ効果が上がるとまとめている。

 また、同白書では、その「働きやすさ」に関して、興味深いデータが示されている。
 例えば、テレワーク制度のある会社は制度の無い会社と比較して働きやすさを感じている従業員が多い一方で、テレワークの実施者と未実施者の間では働きやすさの感じ方に有意差は見られないのだ。
 この傾向は、「能力開発機会の充実や従業員の自己啓発への支援」・「仕事と病気治療との両立支援」等に関しても同様であり、要は、「自身がその制度を利用したか否か」ではなく、「従業員が働きやすい環境を整えている会社かどうか」が重視されていると言い換えられそうだ。

 以上を整理すれば、「働きがいの供与」と「やりがいの搾取」との違いは「会社が従業員の働きやすさを考えているか否か」というところにありそうだ。
 今さら声を大にして言うまでもないのかも知れないが、従業員が働きやすい職場を作ることなど、従業員を雇用するうえで当然のことと再認識しておきたい。


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