ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

11月は厚労省の「過重労働解消キャンペーン」と「過労死等防止啓発月間」

2015-10-23 23:09:14 | 労務情報

 厚生労働省は、11月1日から30日まで、「過重労働解消キャンペーン」を実施する。
 これは、今年6月に閣議決定された「日本再興戦略改訂2015」には昨年に引き続き「働き過ぎ防止の取組強化」が盛り込まれ、また、昨年11月に施行された「過労死等防止対策推進法」に基づいて今年7月に「過労死等の防止のための対策に関する大綱」が閣議決定されるなど、長時間労働対策の強化が喫緊の課題となっていることを受けての取組みだ。

 具体的には、まず、キャンペーンの実施に先立ち、労使の主体的な取組みを促すため、使用者団体や労働組合に対し協力要請を行う。昨年は、厚生労働大臣から日本経団連や日本商工会議所等に対して、政府が「著しい過重労働や賃金不払残業などを行う企業の撲滅に向けた監督指導」と「休暇の取得促進をはじめとした“働き方の見直し”に向けた企業への働きかけ」に取り組んでいくことへの理解と傘下企業への周知啓発を求める『要請書』を届けているので、今年も同様の取組みを行う(もしくは未公表ながら既に行ったか)ものと思われる。

 さらに、キャンペーン期間中には、いわゆる「ブラック企業」への重点的な監督指導が実施される。この重点監督の対象となるのは、労働基準監督署やハローワークに寄せられた相談等を端緒に「若者の使い捨て」が疑われる企業や過労死による労災請求が行われた事業場とのことで、重大または悪質な法違反がある場合は送検・公表し、是正されるまではハローワークにおける職業紹介の対象としないことともしている。

 また、キャンペーン期間最初の土曜日(11月7日)には、「過重労働解消相談ダイヤル」が設置される。これは、労働者からの電話相談(無料)に都道府県労働局の担当官が応じるもので、一昨年9月に実施された同様の電話相談には、1日だけで1000件を超える相談が寄せられ、それ自体が話題となった。

 なお、11月は「過労死等防止啓発月間」でもあり、「過重労働解消のためのセミナー」および「過労死等防止対策推進シンポジウム」が全国各地で開催される。興味のある経営者・労務担当者は受講しておくと参考になるだろう。


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相対評価と絶対評価、どちらが望ましいか

2015-10-13 15:49:13 | 労務情報

 10月に入り、上半期の人事考課に取り掛かっている会社もあるだろう。
 ところで、人事考課の方法は、大きく分けて、「相対評価」(他の従業員との優劣比較による評価)と「絶対評価」(会社が予め設定した基準に対する“達成度”による評価)との2つがあるが、そのどちらを用いるのが望ましいのだろうか。

 まず、査定結果を賞与支給額決定のためだけに用いる場合は、「相対評価」がお勧めだ。
 と言うのも、支払える賞与原資が限られている中で、「その総額を、企業活動への貢献度に応じて配分する」のが、理に適っているからだ。また、「絶対評価のための基準」を設定するよりも、「模範(もしくは基準)となるべき従業員」と比較するのが、時間も労力も掛からないし、従業員間にライバル意識を持たせる意味でも効果がある。加えて、部門ごと(考課者ごと)の“甘辛”を調整しやすいことも、相対評価の特徴として挙げられよう。
 しかし、「相対評価」では、デジタルに数値化できない評価ポイントでの比較がしにくく、また、従業員間で“足の引っ張り合い”を誘発する懸念も捨てきれない。そう考えれば、ある程度の「絶対評価」的な尺度も必要であり、「完全相対評価」に徹するのは難しいと言える。

 一方で、その査定結果を昇格や昇進の判断材料として用いる場合は、「絶対評価」が適している。例えば、その会社における「課長」たるべき人材像があって、それに達しているか否かにより昇格や昇進の可否を決定する、というのは、まさに「絶対評価」の考え方だ。
 これは、逆に言えば「評価基準を満たせば課長に昇進できる」ことをも意味するわけで、被考課者(評価される者)の動機づけの点で効果があるし、さらには、その「評価基準」を管理職研修の題材としても活用できる点でもメリットがある。
 ただ、現実の昇格・昇進査定においては、「課長ポストが満席なので候補者のうち1人は昇進させられない」とか、「入社3年生の中で誰か1人を抜擢したい」など、相対評価的な要素を加味しなければならないケースもしばしば生じうる。なので、「完全絶対評価」というのも、これまた現実的では無さそうだ。

 いずれにしても、人事考課に限らず人事管理の仕事はすべて、対象が“人”であるだけに、理屈だけでは解決できない部分が大きい。また、“経営環境”や“経営者のポリシー”や、いわゆる“社風”といったようなものも考慮すべきであることを承知したうえで、「相対評価と絶対評価のどちらにどの程度のウエイトを置くか」を会社ごとに考えるべきだろう。


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最賃アップに伴い残業代も見直しましたか?

2015-10-03 19:46:55 | 労務情報

 この10月から改定された(道府県によっては10月中に順次改定する)地域別最低賃金は、すべての都道府県で従前よりも16円以上の大幅アップとなり、過去最高の798円(1時間あたり全国平均)となった。これにより、問題視されていた“生活保護水準との乖離”は、昨年に引き続き全都道府県で解消された形だ。

 ところで、この最低賃金は、これから雇い入れる従業員ばかりでなく、現に雇用している従業員にも、もちろん適用される。したがって、現在支給している賃金を再確認し、必要があれば改定しておかなければならない。
 こんなことは人事労務担当者にとっては常識に属する話だろうが、まれに、「基準内賃金については見直したものの、時間外手当までは気が回らなかった」という“うっかりミス”を見掛けることがあるので、油断は禁物だ。
 この“うっかりミス”は、60時間を超える残業について別単価を設定しているとか、「定額残業代」(予め一定時間の残業があるものとして一定額の残業代を賃金の中に組み込んでおくもの;「固定残業代」とも呼ばれる)を支払っているといった、手計算(もしくは給与ソフトへの手入力)が必要となるケースで発生しやすいようだ。
 また、同様に、法定休日(原則として週1回)に勤務した場合の「35%増し」や深夜(原則として午後10時から午前5時の間)に勤務した場合の「25%(時間外勤務や休日勤務との組み合わせで50%、60%、75%になることも)増し」の単価も、最低賃金アップに伴い、見直しておく必要がある。これらについても失念の無いようにしておきたい。

 それにしても、こうもあっさり「900円の壁」を越えた(東京都で「907円」、神奈川県で「905円」)のは、個人的には正直、驚きを禁じ得ない。


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