ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

労働保険の年度更新にあたって陥りやすいミス(特に建設業)

2020-08-23 23:59:40 | 労務情報

 労働保険(労災保険および雇用保険)の年度更新は、今年に限り、8月31日となっている。まだ申告していない会社は、急ぎ手配されたい。

 ところで、例年、この年度更新申告書が正しく作成されていない例が少なからず見受けられる。特に建設業において顕著だ。
 そもそも建設業は、二元事業と呼ばれ「労災保険」と「雇用保険」とを分離して申告書を提出することに加え、保険料の計算方法も複雑なため、間違えやすい。
 そこで、行政から指摘されがちなミスを、以下にいくつか挙げてみることとする。

 まず、建設業の労災保険には「現場労災」と「事務所労災」とがあるが、そのうちの「事務所労災」がそっくり申告されていないケースが目立つようだ。
 事務職員のいる会社ばかりでなく、現場労働者でも事務所で仕事をすることがある場合には、現場以外での事故は現場労災でカバーできないので、「事務所労災」が必要となるのだ。

 また、労災保険料算出の基礎となる「賃金」については、元請工事請負額から推計することが可能だが、この請負額に「請負金額500万円(または1500万円)未満の工事」が合算されていないことがある。
 もしかしたら建設業許可が不要とされる「軽微な工事」と混同しているのではないかとも疑われるが、労災保険では「すべての元請工事」が対象となるので、注意しておきたいところだ。

 そして始末が悪いのが、これら不正申告(意図的なものかケアレスミスかを問わず)の多くが、現実に労災事故が発生した時に発覚するという点だ。
 事故が起きて時間的にも精神的にも切羽詰っている時に余計な仕事を背負い込んでは堪らない。平時にこそしっかりチェックして、正しく申告しておきたい。


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セクハラ対応の成功例

2020-08-13 12:08:34 | 労務情報

 数年前の夏の話だ。
 某大手メーカーの人事部に、事務職の女性社員から、セクシャルハラスメントを訴える投書が届いた。

 その事件が起きたのは、8月のある夜、暑気払いの席。
 この暑気払いは、東京営業所が毎年恒例で催している行事で、原則として出欠は任意だが、経費はすべて会社が負担し、その席には取引先も招待されていた。投書した女性社員も参加を強制されたわけではなかったものの、中途入社してまだ数ヵ月という立場上、断りきれずに出席したという。
 宴会は盛り上がり、成功裡に終了したかに思えたが、数日後、件の投書が寄せられたのであった。内容は、「取引先にお酌をするよう強制されたのが不愉快であった」というものだった…‥

※この続きは、『実務に即した人事トラブル防止の秘訣集』でお読みください。

  

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団体交渉を開催したのに「団体交渉拒否」と断じられたケースも

2020-08-03 23:29:01 | 労務情報

 会社が労働組合から求められた団体交渉に応じない「団体交渉拒否」は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。また、誠実さに欠ける「不誠実交渉」も団体交渉拒否の一形態とされる(東京地判H1.9.22他)。

 これに関して、数年前に中央労働委員会が大阪の学校法人に対して発した命令は、興味深い。

 事件の概要は、大学の新年度授業コマ数について労働組合から前年12月に団体交渉の申し入れがあったのに対して、4月に団体交渉が開催され、学校法人側は「授業コマ数減少の撤回はできない」として組合の要求を拒否したというもの。
 こう書くと、団体交渉が開催されて、労働組合の要求に対する使用者側の意見を述べただけのように読めるかも知れない。

 しかし、中労委は、4月(次の年度)に入ってから団交の席を設けたことについて「早期に団体交渉を開催し組合と話し合おうとする姿勢を欠いていた」とし、また、交渉の内容に関しても、キャンパスの状況やカリキュラムに関する運用の方針などについて適切な資料に基づいて具体的に十分説明していなかったことから「誠意をもって組合に説明しようとする姿勢を欠いていた」と、厳しく断じたのだ。
 つまり、結果として団体交渉が開催されたとしても、その開催時期や交渉内容等によっては「不誠実交渉」とされ、不当労働行為に該当してしまう可能性があることを示した例と言える。

 ちなみに、この事件において、特定の組合員の授業コマ数を組合との協議を経ずに減らしたことについて、中労委は「このことをもって必ずしも組合を無視し弱体化を企図していたとは認められない」として、「労働組合への支配介入」(労働組合法第7条第3号)に当たるとしていた大阪府労委の命令を一部変更している。
 もっとも、それは「不当労働行為に該当しない」とされたに過ぎず、「労働条件の内容が妥当である」と判断されたわけではないので、その点は誤解の無いようにしておきたい。


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