ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

従業員の給料から着服金を控除できるか

2024-01-23 16:59:49 | 労務情報

 従業員が会社の金品を着服した場合(本人もそれを認めている場合)、会社は、その着服された額を本人に支払うべき給料から控除することは可能なのだろうか。

 まず押さえておかなければならないのは、たとえ不当利得であったとしても、従業員の給料から会社が勝手に控除するのは許されないということだ。
 これは、労働基準法第24条に定める「賃金の全額払い」に違反する…‥
※この続きは、『実務に即した人事トラブル防止の秘訣集』でお読みください。

  

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手当廃止に関する誤解と正しい手順

2024-01-13 13:44:21 | 労務情報

 同一労働同一賃金の問題もあり、正社員だけに支給している手当を見直す会社が多くなっている。
 しかし、それまで従業員に支給してきた手当を将来に向かって支給しないこととするのは、労働条件の不利益変更になるので注意を要する。

 ところで、一部には「不利益変更=違法(望ましくない)」との先入観を持つ向きもある。
 そのためか手当廃止を含め労働条件の変更にアレルギー反応を示す人が労使いずれの側にも一定数いるが、その認識は払拭していただきたい。
 例えば「世帯主手当」のような男女差別を助長するおそれがあるものや「タイプライター手当」のような現代においてはその役割を終えたものを廃止するのも不利益変更に違いないが、これらの手当廃止には合理的な理由があって、正しい手順を踏んで変更しさえすれば全く問題ないのだから。

 また、「A手当を廃止する代わりにB手当を増額すれば不利益変更でない」と考える経営者もいるが、そうとは限らない。
 A手当が臨時的または恩恵的なものであり、かつ、B手当が固定的なものである場合は、労働者にとって有利な変更になるが、そうでない場合は「A手当の廃止」という点で紛うことなく不利益変更である。 そして、「B手当の増額」は、その“代償措置”という位置づけになり、労働条件変更の合理性を強調する材料の一つに過ぎない。

 さて、労働条件を変更する際の正しい手順としては、まずは個別に同意を取る(労働契約法第8条)ことを考えるべきだ。
 全従業員から個別同意を取るのが現実的でない会社や合意しない従業員がいた場合等は、就業規則の変更により労働条件を変更する(同法第10条)わけだが、労働契約法は就業規則による労働条件の変更を原則として禁じている(同法第9条)ことは憶えておきたい。
 なお、変更後の就業規則が有効となるには、次の2要件を満たさなければならない。
  (1) 労働者に周知されている
  (2) 就業規則の変更が、以下①~⑤に照らして合理的なものである
   ① 労働者の受ける不利益の程度
   ② 労働条件の変更の必要性
   ③ 変更後の就業規則の内容の相当性
   ④ 労働組合等との交渉の状況
   ⑤ その他の就業規則の変更に係る事情

 いずれにしても、個別の契約(雇用契約書)であれ、集団の契約(就業規則)であれ、“労働契約”なのだから、両者が合意すれば変更は可能だ。 従業員に対して誠実に説明して理解を求めれば、何ら後ろめたいことは無い。
 逆に、「実質的に変わらないのだから会社が一方的に条件を変えて構わない」とばかりに手順を蔑ろにするとトラブルに発展しやすいのだ。


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労働条件の明示方法

2024-01-03 18:39:30 | 労務情報

 会社が従業員を雇い入れる際には、労働時間や賃金などの労働条件を明示しなければならない(労働基準法第15条第1項)。
 これには必ず明示すべき「絶対的明示事項」と定めがある場合に明示すべき「相対的明示事項」とがあり、後者は口頭での明示でもよい(労働基準法施行規則第5条第3項・第4項)。 もっとも、相対的明示事項はそもそも「定めがある場合」のものなのでそれを定めた規程を交付すれば済むだろう。
 一方、絶対的明示事項も就業規則等を交付するので差し支えない(平11.1.29基発45号)が、斉一的な規程では示しきれない項目もあるので注意を要する。

【絶対的明示事項】
  1 労働契約の期間
  1-2 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準
  1-3 (令和6年4月以降)通算契約期間又は更新回数の上限の有無と内容
  2 就業の場所・従事する業務の内容
  2-2 (令和6年4月以降)就業場所・業務の変更の範囲
  3 労働時間や休日・休暇、交替制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項
  4 賃金の決定・計算・支払いの方法、賃金の締切、支払の時期に関する事項
  5 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

 ところで、労働条件の明示方法は、原則として“書面”で行うこととされているが、必ずしも「労働条件通知書」や「雇い入れ通知書」といった紙を手渡さなければならないわけではなく、契約書(「労働契約書」や「雇用契約書」)の形式であっても問題ない。
 また、“紙”ではなく、当該労働者が希望している場合は、ファクシミリ・電子メール・SNS等で送信することも可能だ(同施行規則第5条第4項ただし書き)。 ただし、当該労働者がそれを出力して書面を作成することができるものに限り、第三者が閲覧できるブログやX(旧ツイッター)等への投稿は不可とされる。 加えて、トラブル防止と管理しやすさの観点から、メール本文に労働条件を記入するよりも労働条件通知書を作成してそれをメールに添付して送信するのが望ましいとされている(平30.12.28基発1228第15号)。

 ちなみに、仮に労働条件の明示が無かった場合でも、労働契約は、労働者と使用者の両者が合意することによって成立する(労働契約法第6条)。
 したがって、口約束であっても、労働者には労働する義務が、使用者には賃金を支払う義務が、それぞれ発生することは理解しておかなければならない。 もちろん労働基準法違反の状態であることは言うまでもないが。


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