ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

年俸制の導入は“やる気アップ”に有効か

2020-01-13 14:09:49 | 労務情報

 年俸制とは、賃金額を1年ごとに決める方式であり、導入している企業の多くが、成果主義と併用している。
 つまり、年俸制には、年功型賃金体系における「仕事をしなくても自動昇給する」、「事なかれ主義になりがち」といった弊害を払拭し、従業員のやる気アップへの効果を期待できる一面を持つ。

 ところが、実際に年俸制を導入した、あるいは導入を検討している企業の人事担当者に聞いてみると、その主たる理由として「人件費を抑制するため」を挙げているのは興味深い。
 すなわち、年功型賃金では賃金の下方硬直性が顕著に働きコストを押し上げるため、会社はそれを嫌って、年俸制を導入した、あるいは導入したいというのだ。「年俸制なら残業代の支払いが不要になる」(無論これは誤解であるが)と信じ込んでいる経営者も珍しくないほどだ。

 もし、こういう動機のみで年俸制を導入するなら、そのモチベーションとしての効果は半減どころか、ディモチベート要因にすらなってしまいかねない。
 「頑張った人が報われる」という制度の構築を考えるのであれば、「目標管理制度」の導入を検討するべきであって、必ずしも賃金体系を年俸制に変えることにこだわる必要は無い。
 しかしながら、目標管理制度には、導入にあたって注意すべき点もあるので、次回の記事で詳しく述べることとしたい。


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「働きがい供与」が「やりがい搾取」に陥らないために

2020-01-03 12:59:07 | 労務情報

 会社は、従業員に、いきいきと働いてほしいものだ。
 従業員がいきいきと働いている職場では、一般的に、労働生産性が高まり、ミスや事故も少なくなり、それによって会社の業績も向上し、それが従業員の給与や賞与として還元される、という好循環につながるからだ。

 そのために会社は、従業員に、仕事から活力を得て、仕事に誇りとやりがいを感じ、仕事に熱心に取り組んでもらうべく、さまざまな方策(これらを総合して本稿では「働きがいの供与」と呼ぶ)を講じていることだろう。
 それ自体は望ましい姿と言え、決して否定されるべきものではない。しかし、一歩間違えると「やりがいの搾取」にもつながりかねないことには、注意を要する。

 昨年10月に公表された『2019年版労働経済の分析(労働経済白書)』では、「働きがい」をプッシュ要因(心理学者ハーズバークによる分類では「動機づけ要因」と称される)と位置づけ、それは、プル要因(同「衛生要因」)たる「働きやすさ」が満たされてこそ効果が上がるとまとめている。

 また、同白書では、その「働きやすさ」に関して、興味深いデータが示されている。
 例えば、テレワーク制度のある会社は制度の無い会社と比較して働きやすさを感じている従業員が多い一方で、テレワークの実施者と未実施者の間では働きやすさの感じ方に有意差は見られないのだ。
 この傾向は、「能力開発機会の充実や従業員の自己啓発への支援」・「仕事と病気治療との両立支援」等に関しても同様であり、要は、「自身がその制度を利用したか否か」ではなく、「従業員が働きやすい環境を整えている会社かどうか」が重視されていると言い換えられそうだ。

 以上を整理すれば、「働きがいの供与」と「やりがいの搾取」との違いは「会社が従業員の働きやすさを考えているか否か」というところにありそうだ。
 今さら声を大にして言うまでもないのかも知れないが、従業員が働きやすい職場を作ることなど、従業員を雇用するうえで当然のことと再認識しておきたい。


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昇給していないのに社会保険料が変わる?

2019-12-23 08:59:07 | 労務情報

 社会保険料を算出するための標準報酬月額は、固定的賃金の変動に伴って標準報酬月額が2等級以上増減した場合に変動(随時改定)することになっている。一般的には「昇給したら3か月間の賃金総額の平均を見て、この条件に当てはまるなら『月額変更届』を提出する」と認識されているところだ。
 ところが、この12月(もしくは来年1月)は、“昇給”していなくても、これの対象となるケースが頻出しそうだ。

 と言うのも、今年は10月に、消費税引き上げに伴って通勤手当を改定した会社も多いと思われるが、通勤手当は一般的に“固定的賃金”であるので、時間外手当等の多寡によっては随時改定に該当する可能性があるからだ。
 何年も昇給を見送っていた(固定的賃金が変動しなかった)会社は、定時決定(毎年7月)の時には、どれだけ賃金額が変動しようと『算定基礎届』だけ提出すれば良かったわけだが、今般は『月額変更届』を提出しなければならないかも知れないので、各被保険者ごとに標準報酬月額が2等級以上増減するかどうかを計算してみて、随時改定の対象となるかを、一人一人見極めていかなければならない。
 これは労務担当者にとっては基礎的な事項であるはずだが、今般は“うっかり忘れ”も出そうなので、正しい手続きを再確認しておきたい。

 もっとも、この仕組みを知っている経営者や労務担当者は、社会保険料(本人・会社双方の負担)が増えないように、この時期の残業は極力控えさせる等の対処を予め講じていたようではあるが。


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外注化のメリットと落とし穴

2019-12-13 15:25:37 | 労務情報

 労働基準法や労働安全衛生法が改正され、最低賃金も引き上げられ、従業員が事故を起こせば使用者責任を問われ、セクハラ・パワハラへの対処も求められ、人を雇うのが煩わしくなってきた経営者もいるのではなかろうか。そんな昨今、「雇用契約から業務委託契約への切り替え」(いわゆる「外注化」)を進める(もしくは検討している)会社が目立ってきた。

 業務委託契約に切り替えると、会社にとって次のようなメリットがあるとされる。
  1.身分保障の義務(解雇制限等)を課されない
  2.社会保険料・残業代・有給休暇等の人件費が発生しない
  3.給与計算(年末調整を含む)や社会保険手続き等の事務作業が不要になる
  4.採用や教育に掛けるコスト・労力も不要
  5.本則課税の場合は、消費税の節税効果を得られる

 その一方で、次のようなデメリットも挙げられる。
  1.会社への帰属意識が希薄になる
  2.ノウハウが社内に蓄積されない(社外に流出する危険性すら有る)
  3.後継者が育成できない
 もっとも、これらは、このご時世、雇用契約のままであっても期待できなくなりつつあるので、「デメリット」というより「リスク」程度の認識でいる会社も少なくないかも知れない。

 さて、こうした動きが、「外注化(アウトソーシング)」という意味合いで検討されているなら、法的に特段の問題は無い。しかし、もし従業員各人の業務内容を変えないまま「個人事業者」に切り替えて「業務委託契約」を締結するのだとしたら、仮に本人が同意していたとしても、グレーな部分が大きいと言わざるを得ない。
 というのも、契約上は「個人事業者」とされていても、実態として“使用従属関係”に在る場合は「労働者」として扱うべきだからだ。

 具体的に「使用従属関係にない」ことは、次のような観点で判断される。
  1.業務指示に対し諾否の自由があるか
  2.他の者が代わりに業務を行うことができるか
  3.報酬が「時間」を単位として計算されていないか
  4.作業の具体的な内容について指揮監督を受けていないか
  5.設備・機器・材料等を作業者本人が負担しているか
   (ただし、高度な技術・専門性をもってこれらを使用している場合を除く)
 これらは例示だが、つまりは「“業務の委託”であって“労務の提供”ではない」という概念で一貫している。
 逆に、これらに当てはまらないなら、「偽装請負」ということになる。

 意図的であるか否かを問わず、偽装請負の状態を作らないよう、正しい知識を身につけておきたい。


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人事考課における心理傾向とその補正方法の例

2019-12-03 13:29:15 | 労務情報

 賞与支給に際して人事考課を実施した会社も多いだろう。
 ところで、人事考課にあたって考課者(一般には直属の上司)が陥りやすい心理傾向として、以下のようなものがある。

(1) 寛大化傾向
 部下をひいき目に見て、全体的に評価が甘くなる。
 [例] 「自分の部下だから優秀なはずだ」

(2) 厳格化傾向
 部下が頼りなく見え(または自身の若い頃と比較して)厳しく評価。
 [例] 「自分の若い頃はこのくらいやって当然だった」

(3) 中心化傾向
 部下を観察できていないため(または反感を恐れて)無難な評価に。
 [例] 「みんな真面目にやっている」

(4) 対比誤差
 考課者自身との対比によって評価してしまう。
 [例] 「数字が苦手な上司が数字に強い部下を高評価」

(5) ハロー効果
 特定の要素から形成される先入観によって全体を評価してしまう。
 [例] 「企画書が体裁よく作られているから内容もしっかりしているように見える」

(6) 論理的誤謬
 事実を見ずに考課者自ら作った論理によって評価してしまう。
 [例] 「サラ金から多額の借金をしているから仕事もずさんだ」

(7) 期末効果(近時点効果)
 直近の行動や成果をもって評価期間全体を評価。
 [例] 「最近の大失敗により以前の成功事例も台無し」

※なお、「逆算化傾向」(評価に基づく賞与支給額や昇格等を念頭においた評価をしがち)を挙げる識者もいるが、従業員の処遇を決める材料たることも人事考課の目的であることを鑑みれば、むしろ考慮されるべき事項と言えるので、ここでは除外しておく。

 以下、これらの心理傾向を補正するための方策について、例示してみたい。

 まず、(1)~(3)に関しては、「相対評価」を導入すれば容易に解決する。すなわち、部下全員を“順位付け”するという方法だ。
 ただ、相対評価には、「“甘辛”を補正しやすい」というメリットがある一方、「被考課者の能力開発(これも人事考課の目的の一つ)に活用しにくい」などのデメリットもあることは承知しておかなければならない。

 (4)~(6)に関しては、「考課表」を評価項目ごとに記入するようにすることで一定程度は改善されよう。
 (7)に関しても、「考課表」を工夫して、例えば月別に評価したものを集計するような形式にすれば、考課者の負担は重くなるものの、効果を薄めることは可能だ。

 しかし、これらの方策を講じたとしても、やはり考課者の癖は出てしまう。そもそも、「人が人を評価する」のだから、いくら補正しようとしても、自ずと限界はある。
 とは言え、少なくとも考課者自身はこういった心理傾向を自覚したうえで人事考課に取り組む必要があり、そのためにも、事前に考課者教育を実施しておきたいところだ。


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働き方改革のためにコンプライアンス違反?

2019-11-23 11:59:03 | 労務情報

 働き方改革は、「“働き方”の“改革”」なのだから、本来は、業務プロセスの見直しと効率化を目指すものだ。
 しかし、現状を見ると、「時間外労働の上限規制」等への対応のため、「労働時間を短縮すること」だけに主眼を置かれてしまっている感は否めない。さらには、「(労働時間規制の適用を受ける)非管理職の労働時間短縮」にまで目的が矮小化される傾向(「二重の矮小化」と呼ばれる)まで見られる。

 もっとも、企業経営者にしてみれば労働基準法に違反して罰則を科されたくはないだろうから、こうした傾向も理解できないではないが、もしや、自社の従業員の労働時間を短縮することばかりに頓着して、いわゆる「下請けイジメ」の状態を作っていないだろうか。
 政府(厚生労働省・中小企業庁・公正取引委員会)では、これを「働き方改革に伴う『しわ寄せ』」と称し、この11月を「しわ寄せ防止キャンペーン月間」と銘打って、大企業や親事業者へ向けての啓発に取り組んでいる。

 具体的に問題となるのは、次のようなケースで、これらは下請法や独占禁止法で定める禁止行為に該当する可能性があるとされる。

(1) 買いたたき
[具体例] 短納期発注により人件費等のコストが大幅に増加したにもかかわらず、発注者は通常の単価と同一の単価を一方的に定めた。

(2) 減額
[具体例] 予め設定されていた「特急料金」について、発注者は「予算が足りない」等の理由により、通常の代金しか支払わなかった。

(3) 不当な給付内容の変更・やり直し
[具体例] 毎週特定曜日に数台のトラックを待機させておく契約であったところ、当日になって「今日の配送は取りやめになった」と一方的にキャンセルし、その分の対価を支払わなかった。

(4) 受領拒否
[具体例] 発注後、一方的に納期を短く変更し、変更後の納期に間に合わなかったことを理由に商品の受領を拒否した。

(5) 不当な経済上の利益提供要請
[具体例] 発注者自ら行うべき発注データの自社システムへの入力業務を受注者に無償で行わせた。

 ご存じのように下請法や独占禁止法にも罰則はある。
 「働き方改革」の大義を振りかざしながら思わぬコンプライアンス違反を問われることのないよう気を引き締めたい。そもそも、働き方改革は、下請業者や取引先等と協力し合いながら進めていくテーマであることを、経営者は認識すべきだろう。


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出張先への移動中は就労として扱う義務は無いものの…

2019-11-13 20:59:01 | 労務情報

 従業員を出張させた場合、その用務先への往復時間は、(道中に為すべき業務を命じている場合を除き)基本的に労働時間ではない。
 もちろん就労として扱うのも差し支えないが、それが労働協約・就業規則・労使慣行等によりルール化されていない限りは、会社がそうしなければならない義務は無い。
 なお、出張の性格等によっては“みなし労働時間”を適用することが可能な場合も有るが、ここでは考えないこととする。

 さて、理屈ではそういうことになるが、これを厳格に適用すると、現実の勤怠管理では問題が生じてしまう。
 というのは、自宅から用務先への移動時間を“不就労”として扱うならば、所定始業時刻までに用務先に到着していなければ“遅刻”扱いとすることになるからだ。
 会社が勤務地の変更を命じておきながらその扱いでは、従業員は納得できないだろう。

 そこで、就業規則には次のように書いておくのも一案だ。

 「出張にあっては最初の勤務地に到着した時から最後の勤務地を出発した時までを就労時間として扱う。ただし、所定始終業時刻において現に移動途上に在る場合には、遅刻または早退の扱いをしないものとする。」

 つまり、「出張先との往復時間は原則として不就労扱いとするが、遅刻や早退の扱いに際しては配慮する」ということだ。
 これが現実的な解釈に最も近く、実務上も使いやすいのではないだろうか。


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パラレルワークは雇用主にとってメリットがあるか

2019-11-03 17:59:09 | 労務情報

 「パラレルワーク」(※)とは、本業の他に仕事を持つことをいう。古くから、副収入を得るために「副業」に就くことは珍しくなかったが、近年は、主副を区別せず、また、雇用か非雇用(フリーランス)かも問わない、「複業」と呼ばれることも(さらには「幅業」・「伏業」といった“造語”が用いられることも)増えてきた。
 ※)P・F・ドラッカーが著書『プロフェッショナルの条件』の中で提唱した「パラレル・キャリア(第二の仕事)」と似た概念ではあるが、ドラッカーは、本業が退屈になったり、本業で挫折したりした人の選択肢の一つとして挙げているので、少し意味合いが異なる。

 さて、パラレルワークは、本人にとっては、「副収入を得られる」ことのほか、「自分の好きな事を仕事にできる」、「経験やスキルが高まる」、「人脈を広げられる」、「一つの会社に頼りきらなくてよい」といったメリットがある。

 一方で、パラレルワークを認める(または推進する)ことで、雇用主には、次のようなメリットがあると言われる。
  (1) 従業員が自らスキルを高めてくれる(自己啓発と同じ効果)
  (2) 離職率が低下する(転職とは異なるので)
  (3) 企業イメージの向上に寄与する
  (4) ワークシェアリング等の受け皿になる(いささか後ろ向きな話ではあるが)

 では、パラレルワークは、雇用主にとってデメリットが無いかと言うとそうでもない。懸念されるのは主に次の5つだろう。
  (1) 自社の業務に専念できなくなる
  (2) 過重労働になりがちになる
  (3) 営業秘密や個人情報等が漏洩するリスクがある
  (4) 企業ロイヤリティが低下する
  (5) 時間外労働の割増賃金支払い等の事務処理が煩雑になる
 しかし、5つめはともかく、それ以外は、必ずしもそうなるとは限らないし、また、趣味やサークル活動に勤しんでいても同じリスクはありそうだ。
 そう考えると、パラレルワークを禁止する理由は無いとすら言えそうだ。
 もちろん、自社の業務に支障が出ないよう、本人に“釘を刺しておく”必要はあろう。そのためにも、会社への届け出は徹底させたいところだ。

 今年8月8日に、厚生労働省が昨年7月に立ち上げた有識者会議「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する研究会」は報告書をとりまとめ、今後解決しなければならない課題を洗い出した。
 行政が「柔軟な働き方」の一つとして(「テレワーク」や「多様な正社員」とともに)「副業・兼業」を推進していこうとする姿勢を示した以上、民間企業も、これを踏まえた対応を検討していかなければならないだろう。


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すべての業種に影響するトラックドライバーの働き方改革

2019-10-23 10:29:13 | 労務情報

 現在、国土交通省・厚生労働省等が中心となって、トラック運送事業に従事するドライバーの「働き方改革」が進められている。これは、トラックドライバー不足が深刻化していることを背景に、長時間労働の是正等およびコンプライアンスの確保を目的としたものだ。
 この動きは、一見、トラック運送事業という特定の事業分野だけの問題だと思われがちだが、さにあらず、他の業種にも影響する。
 というのも、昨年12月に改正された貨物自動車運送事業法は、“荷主”に対しても、必要な配慮を求める責務規定を設けたからだ。
 ちなみに、この改正法は、トラック運送事業者に関連する部分は今年11月1日から施行されるが、荷主に関連する部分は7月1日からすでに施行されている。

 国土交通省では「荷主の理解・協力による長年の商慣習の見直し」を重要なテーマと位置づけている。
 具体的には、国土交通大臣は、「違反原因行為」(トラック運送事業者の法令違反の原因となるおそれのある行為)(※)をしている疑いのある荷主に対して、荷主を所管する省庁等と連携して、「トラック運送事業者のコンプライアンス確保には荷主の配慮が重要である」ことについて理解を求める「働きかけ」を行うこととしている。また、違反原因行為をしていることを疑うに足りる相当な理由がある場合等には、「協力要請」や「勧告・社名公表」を行うこととし、さらには、これら荷主の行為について独占禁止法違反の疑いがある場合には、公正取引委員会に通知することともしている。

※「違反原因行為」とは、荷主による次のような行為をいう(例示)。
  (1) 荷待ち時間の恒常的な発生
  (2) 非合理な到着時刻の設定
  (3) 重量違反等となるような依頼

 従来から「荷主勧告制度」というものは存在したが、それは、トラック運送事業者が現に違反行為を起こした後に発動されるものだった。
 新たな制度では、違反行為が生じる“おそれ”のある段階で荷主に対して改善への「働きかけ」が行えるようになり、荷主としても、「協力要請」や「勧告・社名公表」(一種の罰則)へ至る前の段階で改善策を講じることができるようになったのが、特徴的と言える。

 ここでいう「荷主」には、建設業者や流通関係業者はもとより、宅配便や貨物軽自動車運送事業を利用する者すべてが含まれるので、普通に事業を営んでいるなら、これに該当しない方が少ないだろう。
 「トラックドライバー」と聞いて、自社と無関係だと思い込んで思わぬコンプライアンス違反を問われないように気を付けたい。


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都内でインフルエンザの流行始まる。企業の対応は?

2019-10-13 20:59:03 | 労務情報

 ラグビー観戦のためか、おそらく南半球から持ち込まれたと思われるインフルエンザが、今、東京都内で流行しているらしい。

東京都 > 都内でインフルエンザの流行開始
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2019/09/26/21.html

 ※一部に「大流行」とか「早くも流行期に」などと書いているサイトも見受けられるが、現時点で「“大”流行」とは言えず、この流行が今後も続くのか(11月ごろいったん収束するのか)不透明な状態であるので、いたずらに人心を不安に陥れるだけの大袈裟な表現は(特に「専門家」を称する人たちは)避けるべきではなかろうか。

 ところで、インフルエンザの流行に関して、企業経営者としてはどのような対策を講じるべきだろうか。
 それには、厚生労働省が取りまとめた『事業者・職場における新型インフルエンザ対策ガイドライン』が参考になりそうだ。

厚生労働省 > 事業者・職場における新型インフルエンザ対策ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/pdf/09-11.pdf

 これは、「新型インフルエンザ及び鳥インフルエンザに関する関係省庁対策会議」が平成21年2月17日にまとめた『新型インフルエンザ対策ガイドライン』の一部であるが、新型インフルエンザばかりでなく、(通常の)季節性インフルエンザや、もっと言えば感染症全般について、企業が打つべき策の示唆に富んでいる。
 簡単な例を挙げると、「職場を常に清掃し清潔を保つこと」や「従業員や家族の感染状況を報告させること」といった対策は、すぐにでも取り組めそうだし、取り組むべきだろう。また、「緊急時の連絡体制を整備しておくこと」等も、重要かつ様々な場面で活用できるものだ。

 さらにこのガイドラインでは、パンデミック(爆発的流行)期に到ると従業員の最大4割が10日間程度欠勤する事態が想定されるため、人員不足を見越した行動計画を立てておくことも事業者に求め、「スプリットチーム制(複数班による交替勤務)」や「経営トップの交替勤務」等、いくつかの具体策を提案している。
 いざ緊急時に、事業活動が(縮小するのはやむを得ないとしても)完全に麻痺してしまうことだけは避けたいので、自社に適した対策案を平時のうちから検討しておきたい。

 とかく日本人は危機意識が低いと言われるが、インフルエンザへの対応のみならず「緊急時の対処」について、また、代替要員を確保するための「人材の育成」という点においても、自社の体制を整備しておくべきだろう。


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