ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

労災保険に加えて使用者賠償責任特約を

2015-02-23 17:38:13 | 労務情報

 従業員が業務上の事故により死亡したり障害が残ったりしたら、本来は、会社が遺族補償や障害補償を行わなければならないが、労災保険制度から同じ事由について給付が受けられる場合は、会社はその補償義務を免れるものとされている(労働基準法第84条)。

 しかし、これは、労働基準法が会社に義務づけている補償を行わなくて良いという意味であって、民事上の責任まで免れるわけではない。
 その事故が、業務命令自体に問題があったために発生したものであったり、会社が安全配慮義務(労働者が安全に働けるよう配慮すべき会社の義務)を果たさなかったために発生したものであったりした場合には、会社の「不法行為」または「債務不履行」として民事訴訟が提起されることも考えられるのだ。
 もちろん「業務上の事故=会社に100%責任あり」と決まっているものではないので、会社側としては「業務命令に問題は無かった」、「安全配慮義務は果たしていた」と抗弁し、また、「被災労働者にも過失があった」と主張することもあろうが、裁判所は往々にして弱者(=労働者)に有利な判決を出しがちであることは承知しておかなければならないところだ。特に死亡事故の場合は、会社の存亡に関わるほど多額の補償を命じられる可能性もある。

 そういう事態に備えて、会社は、できれば、労災保険の上乗せとして「使用者賠償責任特約」を付けておいた方が良いだろう。これは国の制度ではなく、民間の保険会社が商品化しているものであり、もちろん保険料の負担は余分に掛かるが、いつどこでどういう事故が起こるか分からないなか、“安心料”として検討してみる価値はあるのではなかろうか。

 もっとも、上乗せ保険を掛けたからと言って安全配慮義務をないがしろにして良いものではない。会社は、労働力の喪失を未然に防ぎ、また、日常の業務を効率的に進めるためにも、事故防止に努めるべきであることは言うまでもないだろう。


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就業規則で二重就労を禁止することは可能か

2015-02-13 16:48:20 | 労務情報

 就業規則に「会社の許可なく業を営み、又は、在籍のまま他に雇われてはならない」との規定を置く会社は多い。
 しかし、これに関しては、一般論で言えば、会社は就業規則に特約を設けることができ、従業員はこれに従う義務を負うものとされるが、従業員が会社の指揮命令下に無い時間帯には何をするのも自由であるとの意見も根強く、専門家の意見も賛否が分かれている。

 では、裁判所はどう判断しているかと言うと、二重就労禁止規定を置くこと自体は肯定しつつも、それをもって懲戒処分を科すことには柔軟な運用を求めるケースが多い。
 具体的には、競合会社の取締役に就任した従業員に対する懲戒解雇を有効とした事件(名古屋地判S47.4.28)、建設会社の事務員が夜間にキャバレーで働いていたことを理由とする普通解雇を有効とした事件(東京地決S57.11.19)がある一方で、病気休職中に内職をしたのは就業規則で禁止される二重就労にはあたらないとした事件(浦和地判S40.12.16)、運送会社の運転手が年に1~2回、貨物運送の副業に就いていたことは業務に具体的な支障は生じないとしてこれを理由とする解雇を無効とした事件(東京地判H13.6.5)も挙げられる。

 総じてみれば、会社が二重就労を禁じる目的は、企業秩序を維持し、秘密の漏洩や信用の失墜を防ぎ、従業員の労務提供に支障が無いようにするためなのであって、その目的に反しない限り、二重就労したことをもって従業員に懲戒を科すことはできないと考えるべきだろう。
 むしろ、今日的な労務管理の観点からは、二重就労を一律に禁止するのでなく、会社への届け出を徹底させ、条件付きで二重就労を容認していくのが賢明な方策とも言えそうだ。

 ちなみに、労災保険法では、平成18年の法改正により、二重就労における「第1の事業場から第2の事業場へ移動する間の事故」も“通勤災害”として認められることになっている。法律が二重就労を前提として考えるようになったことは、検討材料に加えておきたい。


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三六協定を結んだからと言って残業を命じられるとは限らない

2015-02-03 06:39:08 | 労務情報

 法定労働時間(原則として1日8時間、1週40時間)を超えて従業員を働かせるには、「時間外労働に関する労使協定」(労働基準法第36条に基づくことから「三六協定」と呼ばれている)を締結しなければならない。
 ところで、この労使協定を締結してさえおけば当然に残業が命じられると思い込んでいる経営者や人事担当者も少なくないが、必ずしもそうとは限らないので、注意を要する。

 従業員に時間外労働を命じるには、まず、労働契約(適法に制定された就業規則を含む)において、時間外労働を命じることがある旨が明らかにされていなければならない。この規定が無ければ、そもそも会社は時間外労働を命じる権限を有しないし、従業員は所定の就業時間を超えて労働する義務を負わないことになる。
 もちろん、会社から“お願い”して、従業員が同意したなら、“残業していただく”ことは可能ではあるが。

 また、業務の内容によっては残業を強制できないことがある。特に、従業員に身体上もしくは育児・介護等の事情がある場合には、それらを斟酌してもなお上回る残業の必要性・緊急性が問われることになる。場合によっては、例えば「今夜の残業でなくて明朝の早出勤務で対処できないか」等の代替策も検討したいところだ。
 まして、特定の(あるいはすべての)従業員が恒常的に残業しているのだとしたら、ワーク・ライフ・バランス的にも問題があるので、業務の配分や効率を考えなおすべきだろう。

 なお、適切な残業命令に対して正当な理由なく残業を拒否した従業員には、職場規律を維持するため、何らかの懲戒を科すべきだ。
 とは言え、そうした場合でも就業規則等に則った懲戒手続きが必要であるし、「1回の残業拒否をもって懲戒解雇」のような社会通念上相当とは言いがたい処分が許されるわけではないので、その点も安直に考えてはならない。


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