ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

労働条件の不利益変更は「合意」を第一に考えるべき

2019-09-23 00:59:13 | 労務情報

 会社の経営状況を鑑みて、あるいは、特定の者の働きぶりを見て、「従業員の賃金を下げたい」と考えることがあるかも知れない。 しかし、労働条件を労働者にとって不利益に変更するのは、容易ではない。

 労働条件は、労働契約によって定まる。 この「労働契約」には、個々の従業員と締結した「雇用契約」(狭義の労働契約)のほか、適法に制定された「就業規則」や労働組合と交わした「労働協約」も含まれる。 したがって、労働条件を変更するということは、雇用契約・就業規則・労働協約のいずれか(1つもしくは複数)の内容を変更することを意味する。(得意の三段論法)

 さて、これらのうち、雇用契約と労働協約については、内容を変更するには労使双方の合意が必要なため一定の歯止めが効くが、就業規則は、会社が一方的に制定するものであるため、恣意的に内容を変えてしまうことも可能だ。
 そこで、労働契約法は、就業規則を変更することによる不利益変更を原則として禁じた(第9条)うえで、「変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が(中略)就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき」に限り、就業規則の変更による不利益変更を例外的に認めている(第10条)。 条文中の「就業規則の変更に係る事情」は、①労働者の受ける不利益の程度、②労働条件の変更の必要性、③変更後の就業規則の内容の相当性、④労働組合等との交渉の状況、⑤その他、とされていて、これらが安易な不利益変更を阻むハードルとなっている。

 もっとも、両当事者が合意していれば契約内容を変更できるのだから、会社は、不利益変更に当たっては、まずは、当該従業員(または労働組合)を説得することを第一に考えるべきだろう。
 ただ、説得の過程で詐欺や強迫があってはならず、あくまで本人の自由な意思に基づく同意を得られるよう努めるべきなのは言うまでもない。「十分な熟慮期間も与えずに退職か本件賃金減額かの二者択一を迫った」として年俸額の期中減額に関する合意を無効とした裁判例(東京地判H30.2.28)も参考にしたい。

 雇われている側にしてみれば、安易に労働条件を下げられては、たまったものではない。 経営陣はこのことを親身になって理解し、やむを得ず不利益変更に踏み切る場合は、真摯な姿勢で当事者に向き合うべきだろう。


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昼休み中に仕事をさせた場合の賃金支払い義務は?

2019-09-13 19:29:12 | 労務情報

 従業員から、昼休み時間中に休憩を取らずに業務をしていたと申告があった場合、会社は時間外手当を支払う義務はあるのだろうか。
 何を悩んでいるかというと、この時間外手当を支払うこととすると、労働基準法第34条には「労働時間が6時間を超える場合に45分以上、8時間を超える場合に1時間以上の休憩時間を与えなければならない」と定めているところ、その休憩時間を取らせなかったことになってしまうからだ。

 結論を言うと、それでも、支払う義務は「有る」のだ。 しかも、それによって法定労働時間(原則として1日8時間、1週40時間)を超えた場合や法定休日労働であった場合は、割増賃金を支払わなければならない。

 確かに労働基準法違反の状態ではあるが、そのことをもって、その休憩時間(一般的には昼休み)を所定どおりに与えられなかった場合の賃金支払い義務を否定する理由にはなりえない。 三六協定を締結せずに時間外労働(いわゆる違法残業)をさせた時にも割増賃金の支払いを免れないのと同じ理屈だ。

 さて、昼休み中の労働がたまたま臨時突発的なものであったなら(それでも労基法違反ではあるが)働いた分の賃金を支払うことでトラブルには発展しにくいが、同様の事態が今後も起こりうるなら、所定労働時間の設定自体に問題が有るのではないか。 早急に業務体制を見直す必要があるだろう。

 会社としては、こういう問題が起きないように、まずは昼休み中の業務を禁じておくべきだ。
 そして、もし所定時間内に業務が完了しないのなら、できるだけ“残業”で処理させるようにするか、やむを得ない場合は別の時間帯に休憩を取らせるようにして、少なくとも法定の休憩時間は確保できるような体制にしておきたい。


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労働組合に事務所を供与しなければならないか

2019-09-03 17:59:01 | 労務情報

 企業内労組であるか合同労組(企業の枠を超えて地域単位で労働者を組織する労働組合;「一般労組」・「地域ユニオン」等とも呼称される)であるかを問わず、労働組合が事務所の供与を要求してくることがある。
 こうした場合、会社はその要求に応じなければならないのだろうか。

 まず、事務所供与に関する論の前提として、労働組合法第7条は「労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること」を「不当労働行為」として禁じている(同法同条第3号)ことを理解しておきたい。ただし、「最小限の広さの事務所の供与を除く」(同ただし書き)とされている。つまり、事務所供与は、原則として禁じられている「労働組合への経理上の援助」の“例外”という位置づけになる。
 したがって、事務所スペースを(有償であれ無償であれ)貸与するか否かは、会社側の都合で決めればよい。「労使の合意による」という表現を用いた判例(最一判S62.5.8)もあるが、現実には、土地・建物の所有者であり施設管理者である会社の意思によることになる。
 まれに事務所の供与は当然の権利であるかのように主張する労働組合も見受けられるが、それは会社の義務でないことを、正しく理解しておきたい。もちろん、交渉事なのだから、「諸事情を勘案したうえで事務所を供与する」という選択肢もあっても問題ない。

 さて、以上はこれまで労働組合に事務所を供与していなかった場合の話であって、現に組合事務所を供与している場合にそれを取りやめるのはそんな簡単ではない。現行労働協約の有効期間中はもとより、労働協約更新の時期であっても、従来行ってきた慣行を撤回するには、合理的な理由と相当な配慮が必要(東京地判H17.8.29)とされているからだ。
 ちなみに、某大都市の職員が組織する労働組合に対し市の施設利用不許可処分に基づいて従来から供与していた事務所を明け渡すよう命じた判決(最二判H29.2.1)は、「行政庁側の庁舎使用の必要性」や「組合への便宜供与の全面禁止を定めた条例の存在(条例の違憲性について最高裁は判断せず)」等を主な理由としているので、民間企業がこれを会社に有利な材料として用いるには無理がありそうだ。

 もし何らかの事情があって会社が労働組合への事務所供与を取りやめるつもりなら、具体的な必要性を説明して、組合の理解を得られるよう努めるべきだろう。そして、それが、組合活動を妨害する意図をもって行われてはならないことは、言うまでもない。


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